開催日程:2024年11月27日

開催会場:ソニックシティビル604会議室

講   師:荒木宏冶(株式会社バイオデザイン)

講 演 名:ハンズオンセミナー 「触って学ぶ 尿中薬物キット」

 今回の研修会は『触って学ぶ尿中薬物検査キット』をテーマに、株式会社バイオデザインの荒木宏治氏を講師に現地にて開催した。
 尿中薬物検査とは、社会規範から逸脱した目的や方法で使用し、医薬品や違法薬物を【尿】から検出し、原因や死因を究明するために行っている。現在、警察・海上保安庁・麻薬取締部・自衛隊警察隊などの捜査機関や、救命センター・病院・クリニック・健診センターなどの医療機関で使用されている。近年では、パブロンゴールド(略:キンパブ)やブロン液などの風邪薬を過剰に服用するオーバードーズが若者の間で深刻化しており、その大半は1020代で中でも女性が多い。ストレスや悩み事など気分が落ち込んだ際に10錠以上の風邪薬を一度に服用することが近年では流行りになっていると話されていた。服用薬物乱用の対象となるのは、覚醒剤に次いで睡眠薬・抗不安薬、風邪薬の順になっている。
 また、救命センターに意識障害で運ばれ、薬物検査を実施した場合、急性薬物中毒加算1(機器分析)5000点、急性薬物中毒加算2(その他) 350点で入院時どちらかを算定可能であるが、簡易検査キットは算定不可とされ、薬物中毒を疑って検査をした結果、薬物中毒でなかった場合は算定できないと話されていた。
 薬物検査実施時の同意については、1)医師が治療目的を有していること 2)医療行為の方法が現代医学の見地からみて妥当である 3)患者本人の同意があること、しかし意識障害、同意能力がない場合は家族の同意があればよしとし、家族の同意もとれない場合でも緊急性が高ければ医療行為は可能であるとしている。
 最新の話では、令和1212日より「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締の一部を改正する法律」の一部が施行される。これは、大麻等の不正な施行についても麻薬および向精神薬取締法の「大麻」として禁止規定および罰則(施用罪)が適用される。この法案は、現在の大麻取締法には、施用罪は規定されていない。所持、譲渡、譲受、輸入のみだが、今後は、施用(使用)したら罰則が適用されることになる。
 今回、現地で開催した理由は、参加者全員に検査キットIVeX-screenを用いて、実際に検査を体験して頂いた。違法薬物(覚醒剤・大麻・コカイン・モルヒネ)と向精神薬(ベンゾジアゼピン系・バルビツール酸系、三環系抗うつ薬)の検査を偽陽性に調整した溶液を用いて実施した。抗原固相の競合法を原理とし、テスト領域にラインが出現しない場合を【陽性】と判定することが分かった。われわれが、感染症の検査で使用するイムノクロマト法の判定とは、相違するので注意が必要である。
 今回の研修会では、参加者全員が検査キットを用いて実習することができ、貴重な経験となった。荒木氏からは、現在ニュースで取り上げられている違法薬物の話題から検査機関での検査実施時の注意点、法律の観点から幅広く話して頂き、大変、興味深い内容の研修会であった。今後も公衆衛生検査ならではの観点から研修会を開催していきたい。
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研修会報告