今回の研修会は『誰でもわかる院内感染のポイント 細菌~ウイルスまで』をテーマに霜島氏が講演した。
院内感染とは病院内に感染源が存在し、患者、患者の家族や面会者、医療従事者などが暴露されて感染することで、その感染源は患者、医療従事者、医療機器、院内の環境など様々である。多くの微生物やウイルスが院内感染を引き起こす可能性を持っており、特に高齢者や免疫力の低下している人では、病原性の弱い微生物などでも院内感染を起こすことがある。
院内感染を引き起こしやすい微生物には結核菌、クロストリジオイデス・ディフィシル、セラチアなどや、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(
MRSA
)や多剤耐性緑膿菌(
MDRP
)などの薬剤耐性菌がある。ウイルスではインフルエンザウイルス、ノロウイルス、麻疹ウイルスなどが院内感染の原因になることが多い。これらの病原体の感染経路は接触感染、飛沫感染、空気感染の3つである。接触感染は感染者に直接触れることで感染する直接接触感染と、医療従事者の手や使用した医療器具、タオルなどの物体を介して病原体が間接的に触れることで広がっていく間接接触感染がある。飛沫感染は咳やくしゃみ、近距離での会話などにより病原体を含む飛沫が、結膜や鼻粘膜などに付着することで感染する様式である。空気感染は病原体を含む飛沫の水分が蒸発し、5μ
m
以下の飛沫核になったものが空気の流れによって広範囲に拡散し、その飛沫核を吸入することで感染する様式である。
院内感染を予防するために、標準予防策は非常に効果的であるが、基本的な手指衛生などが正しく実施できているかどうか改めて確認してもらいたい。防護具の使用にあたっては、正しい装着方法を習得するために、施設内での定期的なトレーニングが大事であるとのアドバイスがあった。また、標準予防策以上の予防策を必要とする病原体に感染している場合には、感染経路別予防策を実施する必要があり、病原体ごとに院内感染を予防するための知識を身につけておかなければならない。院内感染に関わる知識は一部の職種に限らず、病院内で従事する全てのスタッフに必要であることを改めて知る研修会であった。参加された皆様には、研修会で得た知識を施設の仲間たちに広めていただきたい。
開催日程:2024年5月27日
開催会場:Web環境(Zoom)
講 師:霜島正浩(株式会社スギヤマゲン)
講 演 名:誰でもわかる院内感染のポイント 細菌~ウイルスまで