生涯教育レポート 9

                 

 実施日時 : 平成22年6月5日  13時00分  〜 16時00分
     会 場   :
 埼玉県衛生研究所       点数: 専門教科 −20
     主 題   :  感染症に関する最近の話題と菌株供覧 
     講 師   :  倉園貴至、嶋田直美、大島まり子、山本徳栄、( 埼玉県衛生研究所 )

             古畑 健司 ((株)ビー・エム・エル総合研究所)
     共 催    埼玉県衛生研究所
     参加人数 :  45名 

《研修内容の概要・感想など》

今回は、感染症に関する最近の話題を4題と菌株供覧の実習を行った。
最初の話題では、倉園氏は、2009年の腸管系三類感染症の検出状況、昨年発生した事例について講演された。検出状況では、コレラが2例、赤痢が4例、チフスは1例と例年に比べ、検出数は少なかったが、腸管出血性大腸菌は、121例と依然多く検出されている現状を報告された。事例報告は、ステーキや焼き肉チェーン店でのdiffuse outbreakの2事例について、詳細な解析結果を説明され、従来とは異なる複数の汚染源による発生事例もあったことを紹介された。
嶋田氏は、呼吸器系感染症の結核について講演された。結核のゥ統計によると、日本は依然、先進国の中では「中蔓延国」であり、埼玉県は登録患者数では上位に位置することなどから、結核対策の重要性を説明された。検査法の面では、衛生研究所で実施している結核菌の遺伝子型別法である、RFLPVNTRについて、それぞれの長所や短所について詳細に解説していただいた。医療機関から収集された結核菌株が、どのように遺伝子型別され、感染源調査などに活用されるかがわかる内容であった。
3番目は、今回から新たに演題に加わった性感染症についての演題で、古くから主要な性感染症である「梅毒」について大島氏が講演された。梅毒が登場してくるのは、コロンブスの時代にさかのぼることや、大航海時代を経て世界に広まったことなどの歴史的背景についても言及された。近年の全数把握になってからの発生状況では、梅毒はいまだHIVをしのぐ性感染症であり、先天梅毒も問題視されている現状が報告された。これに対し、届け出がその後の対策につながっていく事を強調された。
山本氏は、寄生虫感染症とリケッチア症に関しての講演で、サイクロスポーラとつつが虫について解説された。サイクロスポーラは、海外では集団発生する感染症で、食品からの感染事例が多いこと。日本では21症例が報告されていて、ほとんどに海外渡航歴があり、輸入感染症として注意を呼びかけられた。つつが虫病は、輸入感染症としても重要であることや、現在でも国内、県内でも発生がみられることを、衛生研究所での野鼠からの調査結果を交えながら、説明してくださった。
菌株供覧は、実習室で古畑氏を中心に実習指導が行われた。古畑氏は、分離菌株について、観察時の注意点や同定検査のコツ、培地について等、詳細に説明された。さらに衛研職員も交え、コレラ、赤痢、腸管出血性大腸菌、百日咳菌、レジオネラなどの感染症法上重要な細菌の説明、山本氏からは、寄生虫、原虫類について、顕微鏡を用いての観察実習が行われた。
昨年に引き続き、参加者が多く盛況であった。このような実物に触れることができる貴重な機会を提供する企画の重要性を実感した。
                                           平成2265  文責: 砂押 克彦


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