生涯教育レポート 2

 日 時: 平成21年6月6日(土) 13:00〜15:30
    テーマ: 感染症に関する最近の話題と菌株供覧
    講 師: 内田 和江、山本 徳栄、嶋田 直美、倉園 貴至(埼玉県衛生研究所)
          古畑 健司((株)ビー・エム・エル総合研究所)
      
場 所: 埼玉県衛生研究所     参加人数 51名

研修内容の概要・感想など
 今回は、共催の埼玉県衛生研究所の配慮により、プログラムを変更し、急遽「新型インフルエンザ」についての講演を追加した。
 講師の内田氏は、現在、その対応に忙しいなかで、時間を割いて講演をしてくださった。
新型インフルエンザウイルスについて、ウイルスの基礎から説明され、また検査法については、実際にどのような流れで実施しているかについて、特に遺伝子検査のリアルタイムRT-PCR法について、詳しい解説があった。さらに、検体の提出方法についても説明された。実際に検査に携わっている方から、直接話を聞くことができた貴重な時間であった。
 山本氏は、1999年から2007年にわたるイヌ・ネコの腸管寄生虫調査の結果を講演した。イヌ、ネコともに4割近くが寄生虫を保有していること、さらにはエキノコックスなどのヒトに直接感染する人獣共通種が検出されたことも報告された。我々の非常に身近な存在であるペットが媒介する寄生虫症に対し、注意することが重要であると説明された。続いてリケッチア感染症である発疹熱については、国内発症例は少ないが、近年海外帰国者からの発症など輸入例があり、他のリケッチア症との鑑別が困難なことから、相当数が見落とされている可能性を示唆された。これに対し、埼玉県衛生研究所では、検査態勢を整えていることを報告された。
 嶋田氏は、呼吸器系感染症のなかで近年、成人の発症が増加している百日咳菌について講演された。 従来、こどもの病気とされていたが、ここ数年増加傾向にあり、2008年には6700例を超え、20歳以上に成人の割合が増加している現状の説明があった。検査では、培養にボルデ−ジャングやボルデテラCFDN培地など、特殊培地が必要で時間がかかることが難点であったが、新しい遺伝子検査法のLAMP法により、直接検体からの検査法が可能になり、迅速に診断できることが報告された。
 倉園氏は、腸管系三類感染症について、2008年の発生状況と薬剤耐性菌の検出状況および病原体の搬送について講演された。コレラ、赤痢が20例近く、チフス、パラチフスA菌の検出も数例あり、海外での感染だけでなく、国内発生事例もあるが、原因が解明されないことが多いこと。耐性菌の検出状況では、腸管出血性大腸菌でヒト由来株の28.8%が耐性を示し、赤痢菌やサルモネラでは、治療に影響をおよぼすようなフルオロキノロン耐性菌やESBLなどがわずかづつではあるが検出されはじめ、今後監視が必要であることが強調された。病原体の搬送では、一種から四種病原体の説明があり、特に搬送機会の多い四種病原体などについて、菌株をどのような搬送容器を使えばよいか、実物を見せながらの説明があった。
 
 菌株供覧は、今年も実習室へ移動し、古畑氏と山本氏により実習指導が行われた。古畑氏は、各培地に発育したコロニーを示しながら、観察時の注意点や同定検査のコツなどを詳細に説明された。山本氏は、寄生虫、原虫類について、顕微鏡を用いて、懇切丁寧にその詳細を説明されていた。このような供覧は、実物に触れることができる、貴重な機会であり、今後とも大いに活用してほしい。

 今回は、「新型インフルエンザ」等、まさにホットな話題を提供でき、広報の時間が少なかったにも関わらず、関係者の努力により、昨年を上回る参加者数で、盛況であった。
 
                                文責: 砂押 克彦 

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