生涯教育レポート 4

日時:平成17年7月7日(木)19:00〜21:00
場所:大宮ソニックシテイ905号
参加人数:40名
タイトル:−生殖器系の細菌検査法−
     中村文子(順天堂大学医学部附属 順天堂医院)

婦人科領域の感染症には、内性器感染症と外性器感染症に分かれ、性行為感染症は、そのどちらの感染症にも含まれていた。膣分泌物の検査は、性行為感染症、膣炎、細菌性膣症、産道感染症の検査を目的として、性行為感染症から検出される主な菌は、淋菌・トリコモナス・クラミジア・ヘルペスウイルスなど、産道感染症は、B群溶血連鎖球菌・大腸菌など、膣炎はカンジダ・黄色ブドウ球菌・A群溶血連鎖球菌・大腸菌などであるが、細菌性膣症の多くは嫌気性菌が複数検出されるということであった。
今回、細菌性膣症と膣炎について主に取り上げられた。婦人科領域の感染症の約3割が、膣症と膣炎によるものであった。膣炎とは、臨床的所見で膣壁の発赤、白血球増多などの炎症所見が顕著な場合で感染症として検出される菌も特定されると言われた。それに対して、細菌性膣症は、ストレス・老化などによりエストロゲンの失調が起こることで、膣内の常在菌叢(主にLactobacillus)が減少し、膣内が易感染状態になっているそうである。すなわち、感染が起き易い状態であり感染症ではないということであった。また、検出される菌も複数あり特定が難しいと言われている。しかし、学会等で細菌性膣症への関心が多くなった背景は、特に妊婦における早産・早期破水の危険性が高まり胎児への影響が危惧されるためであるということであった。治療法に関しては、抗生剤(メトロニダゾ−ル、クロラムフェニコ−ル、ミノマイシンなど)の投与をせず、近年では膣洗浄や乳酸菌(Lactobacillus crispatusなど)を含有した膣坐剤により、膣内を正常菌叢にもどす方法(プロバイオティクス)も行なわれるようになってきたということであった。
細菌性膣症の検査法には、Amselの方法、Speigelの方法、Nugentの方法がある。Amselの方法は、膣内のpH、帯下の性状、アミン臭などにより主に臨床医が判定していると言われた。Speigelの方法、Nugentの方法は、グラム染色により1視野毎のLactobacillusの量が判定の指標とされ、年齢によりLactobacillusの量が少ない小児と閉経後の高齢者の場合や、鏡検で酵母様真菌・淋菌・トリコモナスなど膣炎を起こす菌が検出された時は、判定する上で注意が必要であると言われた。また、菌種を推定する場合は、グラム染色の十分なトレ−ニングを実施することが重要であるということであった。
膣分泌物の顕微鏡検査所見、培養検査、薬剤感受性検査の実施は、検査と臨床医との意思統一を図り、各施設に応じた選択が必要と思われた。

レポ−タ− 向坂元秀

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