生涯教育レポート 23           
感染症に関する最近の話題と菌株供覧について  

(公衆衛生研究班と合同研修)
    日 時:平成2067日(土) 13:0015:30
    テーマ:感染症に関する最近の話題と菌株供覧
    場 所:埼玉県衛生研究所  参加人数:39
    講 師:倉園貴至 嶋田直美 山本徳栄 古畑健司

概要・感想など:倉園氏は、腸管系三類感染症について講義された。昨年、埼玉県の知的障害者施設より赤痢菌による集団発生があった。施設はAからE寮があり、4月にA寮の入所者から検出され、直ちに立入り調査に入り、5月上旬に患者及び接触者全員が検査の結果は陰性となったが、5月下旬にC、B、A寮の順に入所者から発生した。感染防止対策の徹底を行ったが、除菌までの期間が延長していた。投薬指導にしても患者さんが理解して薬を飲んでくれないなどの協力が得られず対処に苦慮されていた。知的障害者施設での完全除菌にはかなり困難であることが分かった。腸管出血性大腸菌は、2001年の和製キムチが原因による感染事例以降、平均80例前後の届出状況であったが、昨年度の届出状況は150例と増加していた。主な血清型は、O157であった。原因の関連調査菌のための遺伝子解析(PFGE)には、各施設からの菌株を送って頂きたいとのことであった。また、喫食歴の断片的な情報も集まれば大きな情報(原因究明)となるとのことであった。今年の4月に海外渡航歴のない下痢症患者からコレラ菌が長野、東京、千葉、埼玉から検出され関連保険所での原因究明と防疫措置に着手した。感染者は、主に胃切除された方、胃潰瘍で制酸剤を服用されている方、生ものが好きな高齢者に発症していたそうです。
 嶋田氏は、呼吸器感染症について講義された。レジオネラ症患者の発生数と検出菌株の推移について説明されたが、年々検出菌株数が減ってきていた。主に尿中抗原検査による診断のため菌株が集まらないため、菌株の遺伝子解析により原因の関連調査ができないそうです。各施設で喀痰培養検査によるレジオネラ菌検査が出来ない場合、衛生研究所に喀痰を提出してくださいとのことです。A群溶血レンサ球菌T血清型別の推移について説明された。主に血清型の上位4菌(T1、4、12、28)による感染を繰り返しているとのことであった。結核菌の接触者検診のQFT検査手技と結果の判定について説明された。
 山本氏は、平成19年度埼玉県内の犬、猫、アライグマの糞便から寄生虫類、リケッチア類等の調査、野鼠からエキノコックス、Orientia tsutsugamushiの感染状況、鳩の糞便からChlamydophila psittaciの検出状況について講義された。犬は鞭虫、猫は主に回虫が検出された。イヌ糸状虫(ミクロフィラリア)は、犬4匹に1匹の割合で検出され、猫やアライグマからは検出されなかった。トキソプラズマの抗体検査を猫、アライグマに行った結果、猫71検体中7検体(9.9%)、アライグマは296検体中23検体(7.8%)が陽性であったが、いずれも糞便中からはオーシストは検出されなかったそうです。アライグマの捕獲数が、平成18年度 450頭、19年度では906頭に増加していた。また、野鼠のエキノコックス調査のため、埼玉県内の雑草地など14か所に捕獲罠を仕掛け何度も足を運んだそうです。202頭を捕獲した結果、エキノコックスは検出されなかった。埼玉県のH市内で3年連続ツツガムシ病が発生したため、河川敷に生息している野鼠を捕獲し15検体を採血した結果、3検体にOrientia tsutsugamushiに対する高い抗体価が見られたそうです。サルモネラ菌に関する糞便調査の結果、犬、猫、アライグマ、野鼠、鳥類の合計578検体中、犬は1.7%、アライグマは2.3%検出され、猫、野鼠、鳥類からは検出されなかったそうです。鳩のオウム病に関する調査の結果、遺伝子検査により糞便66検体中からは検出されなかったそうです。
 菌株供覧は、実習室へ移動し古畑氏と山本氏により講義された。菌株供覧は、食中毒の原因菌であるSalmonella sp. S.Typhi、S.Paratyphi A、Shigella sonneiS.boydiiS.flexneri、出血性大腸菌O157、Yersinia enterocoliticaVibrio parahaemolyticusV.choleraeV.fluvialisAeromonas hydrophilaA.sobria、について行なった。各種培地に発育したコロニーを観察する時の注意点や同定検査のコツなどが古畑氏により詳細に説明され、山本氏による顕微鏡検査による原虫検査も詳細に説明された。

                       
                                  平成
2067日 文責:向坂 元秀

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