生涯教育レポート 10

微生物検査および公衆衛生検査研究班合同研修会
感染症に関する最近の話題と菌株供覧
日時 6月3日(土)
時間 13:00〜15:00
場所 埼玉県衛生研究所 講堂
講師 山口正則 倉園貴至 嶋田直美 山本徳栄 古畑健司
参加人数:37

山口氏は、感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律の一部の改正案について講義された。感染症法上の感染症類型の改正案では、現行の一類感染症の重症急性呼吸器症候群(SARS)が二類感染症に、現行の二類感染症のコレラ・細菌性赤痢・腸チフス・パラチフスが、改正案では三類感染症に移行するとのことであった。また、改正案では、新たに追加された疾病は、結核が二類感染症に四類感染症は従来の30疾病に11疾病が追加され合計41疾病となっていた。生物テロ防止するため病原体の管理体制の強化と処罰が厳しくなった。法律案(平成18年3月10日提出)の詳細は、ホームページhttp://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/164.htmlよりダウンロードが可能だそうです。
 倉園氏は、二類・三類腸管系細菌感染症について講義された。2005年度埼玉県の検出状況は、コレラ(1)赤痢菌(22)チフス菌(3)腸管出血性大腸菌(115)であった。
2005年度赤痢菌の海外での推定感染地は、従来どうり東南アジア、南アジアが主であった。
腸管出血性大腸菌の血清型O18:HUTは、VT毒素産生遺伝子が脱落しやすいそうである。
牛肉の生レバーによる腸管出血性大腸菌感染事例について、食肉卸・販売店・問屋との問題点が取り上げられた。また、親から子供への生レバーを食べさせることは謹んで欲しいとのことであった。詳細は、衛生研究所のホームページに掲載しているそうです。ペット感染事例では、幼児のサルモネラ菌感染事例の調査結果、自宅で飼っていた犬との接触によるものであった。国内産鶏肉と外国産鶏肉由来のサルモネラ菌の血清型・薬剤耐性パターンについても報告された。
 嶋田氏は、四類・五類感染症のレジオネラ症とバンコマイシン耐性腸球菌について講義された。バンコマイシン耐性腸球菌の届出基準と検査方法について説明された。埼玉県では現在2例が検出されていた。埼玉県におけるレジオネラ症が、年々増加傾向にあるが原因は不明であった。診断方法が尿中抗原であるため、疫学的な背景を調査する上で、分離菌株か臨床検体を提出して欲しいとのことであった。
 山本氏は、寄生虫症とリケッチア感染症について講義された。埼玉県における動物由来感染症の実態調査を衛生研究所と動物指導センターとの共同研究で行なったところ、県北で捕獲された雌犬1頭からエキノコックスの虫卵が検出された。エキノコックスは北海道に生息する寄生虫であるが、原因は北海道から本州に移動する人・ペットによるものではないかと感染研の調査資料より説明された。衛生研究所では、飼い主・動物取扱業者に対して、北海道からの犬の持ち込みに注意を呼びかけ、県内の野鼠の捕獲調査も行なっているそうである。ツツガムシ病の発生患者数が、埼玉県近隣県では多く検出されているが、埼玉県では検出数が少ないため、ツツガムシ幼虫の活動時期の4・5・11・12月において医療機関に注意を促していくそうである。
 古畑氏は、菌株供覧と講義がされた。菌株供覧は、Salmonella sp. S.Typhi、S.Paratyphi A、Shigella sonneiS.boydiiS.flexneri、出血性大腸菌O157、Yersinia enterocoliticaVibrio parahaemolyticusV.choleraeV.fluvialisAeromonas hydrophilaA.sobriaA.caviaePlesiomonas shigelloidesについて行なった。各種培地に発育したコロニーの観察する時の注意点や同定検査のコツなどが詳細に説明された。特にYersinia菌は、発育が遅いためコロニーの見落しに注意して下さいとのことであった。
 

レポーター 向坂 元秀

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