生涯教育レポート 5
      
        



     日 時 : 2023年1117   1900分〜2030

     会 場 : ソニックシティソニックシティビル 601会議室     点数:専門教科−20点


     主 題 : 嫌気性菌検査の考え方〜レベル1の同定を前提に〜




     講 師 :豊田 耕一(極東製薬工業株式会社)
         
               


    参加人数 : 48名


     出席した研究班班員 :小棚雅寛、酒井利育、今井芙美、岸井こずゑ
             佐々木真一、伊波嵩之、渡辺駿介、大塚聖也


    

    《研修内容の概要・感想など》

 今回は「嫌気性菌検査の考え方 〜レベル1の同定を前提に〜」をテーマに研修会を開催した。嫌気性菌感染症に関してから嫌気性菌検査のポイントについて解説された。
 嫌気性菌感染症にはClostridium spp.が放出する毒素が関与する破傷風、ガス壊疽、ボツリヌス症、Clostridioides difficile感染症のほか、常在菌叢を構成する複数の偏性嫌気性菌と通性嫌気性菌が関与する化膿性感染症や細菌性膣症、抵抗力が低下しているヒトの菌血症・敗血症などがあることが解説された。
 欧米では、一般細菌と異なる嫌気性菌専門検査室が設けられ検査が実施されているため、他国よりも嫌気性菌検出率は良好であると報告があった。嫌気性菌検査の成績はその国の臨床微生物検査のレベルを示すことが解説され、嫌気性菌検査をおろそかにしてはいけないと実感した。嫌気性菌検査は費用と労力を要するため、分離菌の病原的意義の判断が可能な検体であるカテゴリーAが検査対象となる。検体採取に際しての注意点は、常在菌叢の混入を避けるため注射器、カテーテルによる採取が原則であり、スワブによる採取は極力避け、できる限り空気に曝さないことが重要である。嫌気性菌用培地への酸素の侵入は嫌気性菌の発育を阻害するため、培地は還元状態にしておき、開封後は直ちに使用すること等の注意点が解説された。嫌気性菌感染症は複数菌感染であることが多く、嫌気培養では偏性嫌気性菌だけでなく通性嫌気性菌も分離されるため、選択分離培地を使用することで嫌気性菌の検出率向上につながることが解説された。
 偏性嫌気性菌の同定レベルは、レベル1a、レベル1b、レベル2、レベル3に分類される。レベル1aは同定キットを使用せずグラム染色所見と培地集落、性状確認試験より菌名推定を行う。レベル1bは、レベル1aに加え確認培地を利用し推定同定を行う。レベル2は同定キットを使用し菌名同定を行う。レベル3は遺伝子解析にて菌名を決定する。レベル1aでは簡易性状確認試験であるカタラーゼ試験、逆CAMP試験、集落の蛍光試験を、レベル1bではHK半流動確認培地を用いた推定同定について解説がされた。
 検査対象となる検体は、検体採取時の操作や嫌気性菌用分離培地の選択などに留意しなければ、起炎菌である嫌気性菌を分離できないことがあり、改めて菌種同定前段階の工程が重要であることを実感した。嫌気性菌検査の基礎や日常業務に実践できる知識を学ぶことができた研修会であった。

文責酒井 利育

 



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