生涯教育レポート 4
      
        



     日 時 : 2023年922   1930分〜2030

     会 場 : 大宮ソニックシティ905号室         点数:専門教科−20点


     主 題 :エキスパートが教えるグラム染色の魅力




     講 師 :佐々木 雅一(東邦大学医療センター大森病院)
          大塚 聖也(埼玉医科大学総合医療センター

      


    参加人数 : 43名


     出席した研究班班員 :小棚雅寛、酒井利育、岸井こずゑ、今井芙美、
             佐々木真一、伊波嵩之、渡辺駿介、大塚聖也


    

    《研修内容の概要・感想など》

今回は「エキスパートが教えるグラム染色の魅力」をテーマに研修会を開催した。症例をもとにグラム染色について考えていく内容であり、各セクションの症例内容は以下の通りであった。
 セクション1は、抗菌薬投与中患者の喀痰から検出されたMRSAの症例であった。MRSAは呼吸器検体から分離されることがしばしばある。本菌が起炎菌か保菌かは慎重に判断する必要があると解説があった。
 セクション2は、喀痰から検出されたStreptococcus anginosus groupの症例であった。本菌は咽頭や腸管内の常在菌として知られているが、近年では嚢胞性線維症の病原体として認識されている。グラム染色所見にてグラム陽性球菌が優位で貪食像があり、化膿性疾患を強く疑う場合は常在菌として見逃さないように注意が必要であると解説があった。
 セクション3は、肺炎患者の喀痰からCorynebacterium属菌の貪食像が多数認められる症例であった。本菌は薬剤の耐性傾向が強いため、抗菌薬投与により残存した可能性が考えられる。患者の経過を確認し、適切な治療のために医師との相談や結果報告時のコメントに工夫が必要であると解説があった。
 セクション4は、ノカルジアの症例において観察すべき標本の位置について解説があった。ノカルジアは白血球に取り囲まれた扁平上皮細胞の集塊に存在する可能性が高い。そのため、弱拡大で細胞の集塊を観察するのがポイントであると解説があった。
 セクション5は、ANCA関連血管炎患者でCT画像にて肺に空洞病変を認めるクリプトコッカスの症例であった。本菌は免疫不全と空洞形成に関連がある。免疫不全の種類や空洞性病変の原因菌を把握しておくことが重要であると解説があった。
 セクション6は、「見えない敵」と題し、レジオネラの症例が紹介された。本菌はグラム染色で染まりにくい。検体の肉眼的所見がポイントで痰がオレンジ色を呈する場合、本菌の存在を推定する。標本中に起炎菌が見えない場合はその原因を追究するとともに、グラム染色では確認が困難な菌の想定が必要であると解説があった。
 セクション7は、「もっと見えない敵」と題し、Mycoplasma hominisの症例が紹介された。本菌は主に骨盤内膿瘍の原因菌となるが、グラム染色で染まらず、培養も時間がかかるため結果の報告が遅れてしまう。迅速に報告する方法としてアクリジンオレンジ染色が紹介された。
 今回はWebでの研修会が始まって以降、初の現地開催であった。各セクションでスマートフォンを用いて回答できるクイズが出題され、参加型形式で進められた。参加者の反応を直接見ることができ、改めて現地開催の良さを強く感じることができた。また、クイズを通して、グラム染色は情報1つで見え方が変わってくることを考えさせられた。検査の目的、菌の特徴、患者情報を理解し、グラム染色と合わせて微生物検査を組み立てることが理想である。グラム染色の奥深さや日常業務で実践できる知識を学ぶことができた研修会であった。

提出日:20231010

文責:大塚 聖也

 



                生涯教育レポート 履歴 TOPへ           微生物 TOPへ