生涯教育レポート 6
      
        



     日 時 : 2023年217   1830分〜1930

     会 場 : web開催         点数:専門教科−20点


     主 題 :こんな時どう対処する? 〜班員が出会った菌とその対処法〜




     講 師 :今井 芙美(地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立がんセンター)
          渡辺 駿介(深谷赤十字病院

      


    参加人数 : 52名


     出席した研究班班員 :小棚雅寛、酒井利育、岸井こずゑ、今井芙美、
             佐々木真一、伊波嵩之、渡辺駿介、大塚聖也


    

    《研修内容の概要・感想など》

 

 今回は「こんな時どう対処する? 〜班員が出会った菌とその対処法〜」をテーマに研修会を開催した。
 今井氏からは、血液培養から検出されたNeisseria polysacchareaについて解説があった。本症例は質量分析装置でNeisseria meningitidis(髄膜炎菌)と同定されたが、患者背景から髄膜炎菌感染の可能性は低いと考えられた。さらに生化学的性状も確認したが、髄膜炎菌と一致しなかったため遺伝子解析を実施した結果、N. polysacchareaと同定された。このように、質量分析装置で髄膜炎菌と同定された場合、患者背景の確認や別の同定方法の併用が必要である。また、質量分析装置では鑑別が困難な菌種がこの他にも存在するため、それらを把握しておくことは誤同定を防ぐために重要とのことであった。
 渡辺氏からは3症例について解説があった。1症例目はClostridium tetaniの症例であった。C. tetaniは偏性嫌気性菌であるため好気環境に暴露されると死滅してしまう。検体採取後の速やかな培地への塗布が必要とのことであった。また同定のポイントにはグラム染色像やコロニー性状が挙げられた。2症例目はSchizophyllum communeによるアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の症例であった。S. communeは形態学的検査では同定が難しく、誤同定や同定不能真菌として報告されることがある。今回は医師より「ABPM疑い」と情報提供があったため、S. communeを念頭に置き検査を行った。染色像とコロニー性状から本菌を推定し、遺伝子解析へと検査を進めることでS. communeの同定に至った症例であった。3症例目はStreptococcus viridans groupによる感染性心内膜炎(IE)の症例であった。グラム染色像とコロニー性状より本菌を推定し、IEの可能性が示唆された。電子カルテに「感染巣不明の敗血症」と記載があったため、IEの可能性や歯科治療歴の確認を医師へ提案した。医師へ直接報告することで早期診断や抗菌薬の変更に繋げることができた症例であった。
 今回の研修会は実際に班員が経験した症例をもとに、どのように検査を進めたかについて解説があった。誤った結果報告は患者や臨床の負担になる可能性があるため、鑑別が困難な菌や稀な菌に遭遇したときは正確に同定できるよう対応することが重要である。

文責大塚聖也

 



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