埼臨技会誌 Vol.71 補冊 2024_電子ブック用
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◎岡倉 彩音1)、圓田 則子1)、二神 友絵1)、加藤 愛1)、埜村 直美1)チーム医療輸 血◎竹澤 桃果1)、千葉 真1)、小室 梓1)、菊地 拓海1)、塚原 晃1)◎竹澤 桃果1)、千葉 真1)、小室 梓1)、菊地 拓海1)、塚原 晃1)戸田中央メディカルケアグループ 戸田中央総合病院1)戸田中央メディカルケアグループ 戸田中央総合病院1)◎岡倉 彩音1)、圓田 則子1)、二神 友絵1)、加藤 愛1)、埜村 直美1)戸田中央メディカルケアグループ 戸田中央産院1)戸田中央メディカルケアグループ 戸田中央産院1)84異異常常値値報報告告かかららみみええててききたたD-dimer測測定定ととDVT検検査査のの重重要要性性当当院院がが経経験験ししたた母母児児間間輸輸血血症症候候群群のの1例例【はじめに】異常値の意義とは「直ちに治療を開始すれば救命しうるが,その診断は臨床的な診察だけでは困難であり,検査によって可能である」とされている.当院では医療安全委員会および検査適正委員会と協議の上で異常値を設定し,フローチャートに沿って医師へ直接連絡を行っている. 当院での異常値報告件数が多いD-dimerとは,静脈血栓塞栓症(以下VTE)診断の指標として用いられており,VTEは下腿の深部静脈や腹腔内の静脈に血栓が生成された深部静脈血栓症(以下DVT)と,肺動脈が血栓で閉塞することで発症する肺血栓塞栓症(以下PTE)の総称である.PTEの原因の90%以上がDVTであるといわれている.今回,当院でのDVT診断カットオフ値であるD-dimer 4.0μg/dL以上をD-dimer高値とし,そのDVT発見頻度について調査した.【対象・方法】2023年1月~2023年6月の6ヶ月間に,血液検査項目で異常値報告を実施した1,986件の報告項目を集計した.また, 同期間中にD-dimerを測定し,高値を示した患者 865人の疾患及びDVT検査として用いられることが多い下肢静脈エコーの実施状況とDVTの有無を調査した.【はじめに】母児間輸血症候群(以下FMT)は,分娩前または分娩中に胎児血が経胎盤的に母体循環へ流入する事で発症し,重症胎児貧血を来たす疾患である.今回我々はFMTと診断された1例を経験したので報告する.【症例】妊娠37週5日,胎児機能不全による緊急帝王切開にて2355gで出生.出生時蒼白,自発呼吸なし,心音聴取不可.人工呼吸,心臓マッサージを開始し出生後約2分で心音を確認したが,呼吸改善がなく出生後約5分で気管内挿管.その後集中治療の為,高次医療機関へ緊急搬送となった.【検査所見・経過】臍帯動脈血ガスpH7.092,Hb2.4g/dL,Ht7%,Glu50mg/dL,T-bil <2mg/dL.出生児静脈血ガスpH7.024,Hb2.9g/dL,Ht9%,Glu31mg/dL,T-biL <2mg/dL.Hb(日齢0日基準値19.0±2.1),Ht(日齢0日基準値57.9±4.4)より重度の貧血.児は低体温療法を施行し貧血治療に対しては部分交換輸血を実施.当院ではFMTを強く疑い,母体血にてAFPとHbFを測定した.AFP7741ng/mL(妊婦基準値300~800ng/mL),HbF4.9%(正常値1.2%以下)より,母体血中への胎児血液成分の移行が証明できFMTと診断された.【結果】異常値報告件数:D-dimer 462件, CK/CK-MB/トロポニン-T 280件,Na/K/Cl 260件, BUN/CRE 190件, PT/APTT 123件,FBS 76件,その他 595件.D-dimer高値者の疾患:骨折235件,悪性腫瘍156件, 炎症性疾患83件,心不全73件,COVID-19 30件,その他288件.D-dimer高値者の下肢静脈エコー実施状況:実施255人(DVT陽性64人,DVT陰性191人),未検査610人.【まとめ】D-dimer高値の7%,下肢静脈エコー実施者の25%でDVT陽性だった.D-dimerは血栓性疾患だけでなく,悪性腫瘍,炎症性疾患,外傷,その他妊娠や加齢などでも上昇し,疾患特異性は決して高くない.しかし血栓に対しての感度は非常に高く,D-dimerが高値を示した際,患者背景を考慮した上で,DVT疑い時には積極的に下肢静脈エコー等を行うことが重要である.PTEを発症すると重篤な急性症状,侵襲性の高い治療,後遺症の残存などのリスクが高くなるため,医師へのD-dimer異常値報告の徹底と下肢静脈エコーの安定的な実施体制構築が重要である.連絡先:0570-01-1114(内線2530)【考察】新生児重症貧血の要因は溶血,出血,失血があげられ,その鑑別が必要となる.本症例は救命処置優先の為,血ガス以外の検査は当院では実施しなかった.患児母の血液型はB型,不規則抗体陰性,患児父の血液型はB型の為,胎児・新生児溶血性疾患を発生するリスクは低く,また血ガス結果もT-bil 2mg/dL以下であり,溶血性疾患は否定的であった.さらに児の出血や血腫,消化管出血,凝固異常を疑う身体所見はなかった.母体血液中に,胎児成分を示すHbFと胎児期血漿蛋白のAFPが高値であったことから,胎盤バリアが破綻し胎児血が母体へ移行した可能性が示唆され,胎児期もしくは分娩過程における失血が考えられた.新生児重症貧血は救命を要する疾患であり,今回初動の重要性を再認識した.本症例において,母体検査を早急に着手する事で児の貧血原因がわかり,治療方針の決定に繋がったと思われた.検査科直通 048-444-7425異常値報告からみえてきたD-dimer測定とDVT検査の重要性当院が経験した母児間輸血症候群の1例チーム医療輸血EntryNo. 18チ-4(10:20~10:30)輸-1(10:30~10:40)EntryNo. 59

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