埼臨技会誌 Vol.71 補冊 2024_電子ブック用
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生 理病 理◎堺 梨帆1)、峯岸 将臣1)、森口 莉帆1)、大関 秋穂1)、古川 奈津樹1)、田中 祐未1)、中井 景子1)、服部 直行1)◎小林 要1)、丸山 悠美1)、柴田 真里1)、山本 美穂1)、河口 善博1)、佐伯 尚人1)、遠藤 聡子1)、阪本 麻菜美1)【はじめに】巨細胞性心筋炎は,しばしば急速に進行し,心不全や不整脈,突然死を引き起こす可能性のある稀な心筋炎である.急性期に免疫抑制剤を投与することで病気の進行と心臓移植の必要性を回避できることが多い.そのため,早期に診断し,他の心筋炎と鑑別することが重要で,心筋生検は最も信頼性の高い診断方法である.今回,ホルマリン固定後の検体から迅速な標本作製を行い早期診断がされた巨細胞性心筋炎の1例を経験したので報告する.【症例】70歳代 女性,左手のしびれ,肩の疼痛,38.5℃の発熱にて前医受診.3日後ST上昇型心筋梗塞の疑いで当院へ転院搬送,来院時の心臓超音波にてEF36%と基部以外の左室収縮能が低下.たこつぼ心筋症疑いにて入院加療を行った.6日後EF18%,心筋炎を否定できず心筋生検を施行.2日後,容態が悪化,循環器内科医から緊急の連絡が入り循環器内科医と病理医にコンセンサスを取り心筋生検に対して迅速な標本作製を行い病理診断の報告がされた.【検体】心筋生検3個:2㎜大,10%中性緩衝ホルマリンにて30時間以上固定.①O.C.T.コンパウンドに約1時間浸漬【はじめに】大動脈弁狭窄症(以下AS)は,加齢変性による石灰化の進行が要因になることが最も多く長期間無症状であることが多いが,有症候性高度ASは予後不良であるため早期発見が重要となる疾患である.当院における経胸壁心臓超音波検査(以下超音波検査)でASを重症度評価する指標は大動脈弁口通過血流速度(以下AVVmax),大動脈弁弁口面積(以下AVA)などあるが,画像の描出状況によっては評価困難な事例もある.今回,大動脈弁の開放を視覚的にスコア化するVisual AS Scoreが,当院におけるASの重症度評価の新たな指標の一つになりうるか検討をおこなったので報告する.【対象・方法】当院の超音波検査でASと診断された患者50人(二尖弁を除く)に対して,傍胸骨左縁短軸断面で大動脈弁の開放を視覚的にスコア化(0=制限なし、1=制限あり、2=高度に制限)した三尖の合計値(Visual AS Score)が,当院におけるASの重症度評価の指標であるAVVmax,大動脈弁最大圧較差(以下pPG),大動脈弁平均圧較差(以下mPG),AVA(連続の式より算出)と相関関係があるか検討し凍結ブロックから作製した組織標本.②用手法でのFFPEから作製した組織標本.③日常の自動包埋装置プログラムで処理したFFPEから作製した組織標本.【結果】標本作製時間:①2時間以内,②6時間後,③24時間後.①②③全ての標本で心筋への炎症細胞浸潤が顕著にみられ,多核巨細胞が散見された. 巨細胞性心筋炎の可能性を考えると診断された.また,病理診断に影響するアーチファクトは認めなかった.【考察】良好な病理標本の作製には,固定から包埋までの確実な操作が重要と考える.今回,検体処理条件を変えた標本はいずれも病理診断が可能であった.ホルマリン固定後の検体は通常FFPEを行うが,コンパウンドを馴染ませることにより,凍結ブロックでの標本作製が可能と考えた. 【結語】病理検体は,限られた条件下での標本作製や診断を求められることがある.臨床医と病理医と臨床検査技師とが,診断の可能性や検体損失のリスクを相互理解した上で標本作製を行うことが重要である.した.【結果】Visual AS ScoreとAVA(連続式)においてr=-0.61(p<0.0001)と負の相関関係が得られた. Visual AS Score 4点以上で高度ASのとき感度100%(特異度41.3%)を示し、中等度AS以下でVisual AS Scoreが3点以下の時も感度100%(特異度55.2%)を示した。【考察】結果より,Visual AS Scoreが4点以上の時高度ASとなり,中等度AS以下の時Visual AS Scoreは3点以下となることがわかった. Visual AS ScoreとAVVmax,pPG, mPGでは相関関係が得られなかったが,ASには一回拍出量が低下しているために流速や圧較差が増大しない病態(低流量低圧較差AS)があり,その場合Visual AS Scoreにおいても相関関係が得られないと考えられる.また,Visual AS Scoreをスコア化する際,画像が描出不良のときや超音波経験の浅い技師のときに判断に苦慮する症例も多くみられた.当院においてVisual AS ScoreはASの重症度評価の指標の一つになりうるが,他の指標と併せて総合的に評価する必要があると考える.     連絡先048(474)7211内線452連絡先:048-773-1111(内線1332)◎小林 要1)、丸山 悠美1)、柴田 真里1)、山本 美穂1)、河口 善博1)、佐伯 尚人1)、遠藤 聡子1)、阪本 麻菜美1)医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院1)医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院1)◎堺 梨帆1)、峯岸 将臣1)、森口 莉帆1)、大関 秋穂1)、古川 奈津樹1)、田中 祐未1)、中井 景子1)、服部 直行1)戸田中央メディカルケアグループ 新座志木中央総合病院1)戸田中央メディカルケアグループ 新座志木中央総合病院1)当当院院ににおおいいててVisual AS Scoreはは大大動動脈脈弁弁狭狭窄窄症症のの重重症症度度評評価価のの指指標標のの一一つつににななりりううるるかか迅迅速速なな標標本本作作製製がが有有用用ででああっったた巨巨細細胞胞性性心心筋筋炎炎のの1例例77迅速な標本作製が有用であった巨細胞性心筋炎の1例当院においてVisual AS Scoreは大動脈弁狭窄症の重症度評価の指標の一つになりうるか病-5(13:40~13:50)生-11(9:30~9:40)病理EntryNo. 52生理EntryNo. 37

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