前立腺癌は日本人男性で最も罹患率の高い悪性腫瘍であり、高齢化とともに増加し、現在少なくとも毎年9万人が新たに診断されると推定されている。前立腺癌の多くは比較的緩やかに進行し、手術や内分泌療法などの確立された治療法が存在するため、早期に発見し適切な治療をすれば良好な予後が期待できる。前立腺癌のスクリーニング検査に用いられるPSA(prostate specific antigen:前立腺特異抗原)は前立腺のみで産生され臓器特異性は高い一方で、前立腺癌に特異的な物質ではなく、前立腺肥大症や前立腺炎等の良性疾患でも上昇することがある。特にグレーゾーン(PSA■4~10ng/mL)における前立腺癌の診断率は約2~3割と低く、癌でない人が針生検を受ける過剰検査や、針生検による合併症のリスクが問題となっている。前立腺癌の検出精度の向上や、不必要な生検を回避するために、これまでにPSA密度、フリーPSA/トータルPSA(F/T(%)PSA)等の指標が導入されてきた。さらに近年ではPSA前駆体や新規バイオマーカー等の導入による前立腺癌検出率が報告されつつあり、今後の展開が期待されている。腫瘍マーカーとして使用されている物質の多くは糖タンパク質であり、その糖鎖構造は正常組織由来と癌組織由来で異なることが知られている。前立腺癌患者の血清中では、N型糖鎖の末端シアル酸残基がα(2,6)結合したPSA(S2,6PSA)よりもα(2,3)結合したPSA(S2,3PSA)の割合が増加し、S2,6PSAとS2,3PSAの総和に占めるS2,3PSAの割合(S2,3PSA%)が前立腺癌と前立腺肥大症の識別に有用で、癌の病理組織学的悪性度とも相関することが明らかになった。弊社が2022年9月に発売した体外診断用医薬品「ミュータスワコー■S2,3PSA・i50」は、末端シアル酸残基がα(2,3)結合でガラクトースに結合した糖鎖を特異的に認識するイヌエンジュレクチン(MAL)を用いて、MAL親和性フリーPSA(S2,3PSA)とMAL非親和性フリーPSA(S2,6PSA)の総和に占めるS2,3PSA%を測定する試薬である。検体中のフリーPSA、蛍光標識抗ヒトフリーPSAマウスモノクローナル抗体およびアニオン結合抗ヒトPSAマウスモノクローナル抗体から形成したサンドイッチ免疫複合体をレクチン親和電気泳動によりS2,6PSAとS2,3PSAを分画し、レーザー誘起蛍光法で標識した蛍光色素を検出する。S2,3PSA%は、S2,6PSA分画とS2,3PSA分画がそれぞれ0.05 ng/mL以上であれば算出できる。本試薬の一連の反応はマイクロチップの流路内の液相で行い、全自動蛍光免疫測定装置「ミュータスワコー■i50」により測定時間9分、検体量8μLでの測定を実現した。れる。本講演では最近の前立腺癌の診断と「S2,3PSA%」および本試薬の基礎性能についてご紹介する。資料請求先:臨床検査薬カスタマーサポートセンター03(3270)9134S2,3PSA%は、前立腺癌診療ガイドライン2023年版にPSA検査でカットオフ値を超えた場合の補助診断マーカーとして付記され、2024年2月より保険収載されている。S2,3PSA%は、従来使用されているPSAやF/T(%)PSAと比較し診断特異度が良好と報告されており、今後臨床での活用が期待さ医療機器届出番号■27B3X00024000017全自動蛍光免疫測定装置ミュータスワコー■i50製造販売元■富士フイルム和光純薬株式会社承認番号■30400EZX00061000ミュータスワコー■S2,3PSA・i50製造販売元■富士フイルム和光純薬株式会社○加藤 貴大(富士フイルム和光純薬株式会社) 新新規規保保険険収収載載さされれたた日日本本発発のの前前立立腺腺癌癌診診断断補補助助ママーーカカーー■■SS22,,33PPSSAA%% ○加藤■貴大(富士フイルム和光純薬株式会社) 120CM演題-5新規保険収載された日本発の前立腺癌診断補助マーカー S2,3PSA%免疫血清CM-5(第8会場 905号室 11:05~11:20)
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