埼臨技会誌 Vol.71 補冊 2024_電子ブック用
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◎渡辺 駿介1)、山田 彩花1)、福田 菜夕利1)、持田 和紀1)、阿部 健一郎1)、野瀬 和彦1)微生物◎室井 萌奈美1)、細谷 龍希1)、中山 愛美1)、志野 真錦1)、酒井 利育1)、小野口 晃1)連絡先:048-571-1511(内線1877)【はじめに】Corynebacterium kroppenstedtii(以下C. kroppenstedtii)は通性嫌気性のグラム陽性桿菌であり,肉芽腫性乳腺炎の病態に関与していると報告されている.血液寒天培地やチョコレート寒天培地での発育は可能であるが,発育が遅いため2日以上,時には1週間ほどの培養を必要とする.今回,C. kroppenstedtiiによる乳腺膿瘍の症例を経験したので報告する.【症例】20代女性.X日に右乳房の腫脹と疼痛を主訴に当院へ紹介受診となった.視触診とエコー像から右乳腺膿瘍が疑われ,穿刺吸引により採取した膿汁が細菌検査室に提出された.当日より,Levofloxacin内服による治療が開始された.【微生物学的検査】膿汁のグラム染色では多数の好中球が観察されたが,細菌は認めなかった.5%CO2環境下で48時間培養を行った血液寒天培地とチョコレート寒天培地には菌の発育を認めず,96時間嫌気培養を行ったブルセラHK寒天培地にグラム陽性桿菌の発育を認めた.偏性嫌気性菌を推定し,RAPID ID 32 A アピ(ビオメリュー・ジャ【はじめに】NVS(Nutritionally Variant Streptococci)は栄養要求性レンサ球菌のことを示し,通常のViridans Streptococcusとは異なる菌群である.現在ヒトから分離されるNVSにはAbiotrophia adiacens,Granulicatella elegansがあり,感染性心内膜炎の起炎菌として重要な細菌である.今回我々はGranulicatella adiacensによる感染性心内膜炎の症例を経験したので報告する.【症例】73歳男性.意識障害により倒れていたところを発見され救急搬送された.頭部CTで多発塞栓症が疑われ,心原性を否定できない事から発熱はなかったが血液培養2セットが提出された.第3病日に血液培養よりG. adiacensが検出され,当患者には人工弁もあることから感染性心内膜炎と診断された.第4病日よりCTRXとGMで治療が開始され,標準治療期間であるβ-ラクタム薬6週間+GM2週間の治療を完遂し,全身状態が改善傾向となったためリハビリテーションを継続する目的で転院となった.パン)での同定を行ったが菌種同定に至らず,偏性嫌気性グラム陽性桿菌と菌名報告した.X+7日に2回目の膿汁検体が提出され,前回と同様にグラム陽性桿菌が検出された.外注先に同定を依頼したところ,質量分析によりC. kroppenstedtiiと同定されたため,起炎菌である旨をコメント付記して結果報告した.X+35日に3回目の検体が提出され,培養期間を延長したところ,5%CO2培養を72時間行った血液寒天培地とチョコレート寒天培地にグラム陽性桿菌の発育を認めた.【まとめ】当初,偏性嫌気性菌と誤同定されていたが,2回目の検体からも同様の菌が発育し,起炎菌と推定したことから質量分析による菌種同定に至った.乳腺膿瘍の培養検査では本菌を念頭に置き,培養期間を延長することや,質量分析等による菌種の確定が重要であると感じた.結果報告に際しては皮膚からのコンタミネーションと捉えられないよう,起炎菌であることを強調して報告すべきであると考える.【微生物学的検査所見】血液培養にて2セット4本陽性となり,染色所見はグラム陽性のレンサ球菌様であった.早朝にボトルの培養液をヒツジ血液寒天培地に分離培養した.夕方,発育が認められなかったためチョコレート寒天培地を炭酸ガス条件,BHK寒天培地を嫌気条件下で分離培養した.翌日,ヒツジ血液寒天培地で発育が認められず,チョコレート寒天培地とBHK寒天培地で発育が認められたため,嫌気性菌ではなくNVSを疑った.同定検査にはrapid ID 32 STREPを用い, Granulicatella adiacensと同定された.またS.aureusの周囲に衛星現象によるコロニーの発育が認められた.【考察】NVSは発育条件が厳しく,鑑別は質量分析でも完璧ではないとの報告もある.本菌は感染性心内膜炎の他にまれに眼内炎を引き起こすこともあるため,染色像から本菌を疑いながら培養を進め,嫌気性菌との誤同定に注意しながらできるだけ早期に同定していく必要がある.◎渡辺 駿介1)、山田 彩花1)、福田 菜夕利1)、持田 和紀1)、阿部 健一郎1)、野瀬 和彦1)深谷赤十字病院1)深谷赤十字病院1)◎室井 萌奈美1)、細谷 龍希1)、中山 愛美1)、志野 真錦1)、酒井 利育1)、小野口 晃1)自治医科大学附属さいたま医療センター1)自治医科大学附属さいたま医療センター1)defectivaとGranulicatella 連絡先:048(648)5362113Corynebacterium kroppenstedtiiにによよるる乳乳腺腺膿膿瘍瘍のの1症症例例Granulicatella adiacensにによよるる感感染染性性心心内内膜膜炎炎のの11症症例例Corynebacterium kroppenstedtiiによる乳腺膿瘍の1症例Granulicatella adiacensによる感染性心内膜炎の1症例微-11(13:05~13:15)微-12(13:15~13:25)微生物EntryNo. 13微生物EntryNo. 33

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