埼臨技会誌 Vol.71 補冊 2024_電子ブック用
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◎内藤 郁弥1)、稲垣 理絵1)、神成 千晴1)、高村 さをり1)、千葉 明日香1)、前田 友子1)、石井 直美1)、渋谷 賢一1)微生物◎枝澤 燎1)、伊波 嵩之1)、新井 瑛里加1)、木性 夏弥1)、佐久間 信之1)、阿保 一茂1)、岡本 直子1) 血液培養検査における血培パネルの菌種同定・耐性遺伝子結果は,従来法と高い一致率を示した. 従来法では感受性結果報告までに時間を要していたが, 約1時間で報告が可能となるため,適切な抗菌薬の選択に寄与していると考える.ただし,血液培養ボトル内の死菌検出による偽陽性や,別ボトルから異なる菌が発育するなど,結果に相違が生じることも念頭に置く必要がある.今後も,血培パネルを活用し,抗菌薬の適正使用に貢献したい.連絡先 : 048-965-2221(内線:2255)【はじめに】 血液培養検査は菌血症・敗血症の診断治療において極めて重要な検査であり,迅速かつ正確な同定・薬剤感受性結果が求められる.しかし,結果報告までには数日要する.当院では2022年1月より,全自動遺伝子解析装置Film Array🄬🄬(ビオメリュージャパン)の血液培養パネル(BCID,BCID2 以下血培パネル)が本格稼働したことにより,約1時間で33菌種,薬剤耐性遺伝子10種が検出可能となった.今回, 当院における血培パネルの検出状況を報告する.【対象・方法】 2022年1月から2024年6月の期間に当検査科に提出された血液培養検体のうち陽性となり,医師からの依頼で血培パネルを実施した142件を対象とした. 血培パネルでの結果と,従来法である分離培養後に菌種の同定・薬剤感受性検査を行った結果との相違を比較検討した.【結果】 血培パネルで陽性となったものは142件中130件で,その内訳はEscherichia coli 30例,Staphylococcus aureus 20例, 【はじめに】劇症型溶血性連鎖球菌感染症 (STSS) は突発的に発症し急速に進行する敗血症性ショック病態でありβ溶血性連鎖球菌 (β溶連菌) によって惹起される. 致死率は約30%と極めて高く, 明確な発症機序も解明されていない. 近年, 本邦におけるSTSSの報告件数が増加しており問題視されている. 今回, 当院におけるSTSSの発生動向とGroup A Streptococcus (GAS) のT型別, M型別, spe遺伝子について調査したので報告する. 【対象】2019.1.1~2024.6.30までに当院にてSTSSと診断された患者より分離されたβ溶連菌30株を対象とした. 【方法】STSSの報告件数, 分離菌種を年毎に集計した. また保健所に菌株を提出し, 返送された結果を基にGAS 17株のT型別, M型別, spe遺伝子について集計した. 【結果】当院におけるSTSSの年別報告件数は, 年毎に2019年, 2020年, 2021年, 2022年, 2023年, 2024年 (6月時点) が4件, 3件, 3件, 5件, 8件, 7件 であった. 菌種の割合はA群, B群, G群が63.3 %, 16.7 %, 20.0 %であった. T型別はT1, T12, 型別不能が52.9 %, 11.8 %, 35.3 %であった. M型別はStreptococcus agalactiae, Klebsiella pneumoniae が各8例であった.薬剤耐性遺伝子はmecAが13例と最も多く,次いでESBL CTX-Mが7例であった.培養では複数検出8例含む153菌種が検出され, 134例(87.6%)がPCRと一致した.不一致であった19例(12.4%)のうち,16例は血培パネルに含まれていない菌種で, 3例は血液培養ボトル由来の死菌によるCandida tropicalisの検出例であった.また,同一患者で,別ボトルから他の菌がさらに発育した例もあった.【考察】M1, M12, M81, M49, M22が52.9 %, 17.6 %, 11.8 %, 11.8 %, 5.9 %であった. spe遺伝子の保有率はspeA, speB, speC, speFが52.9 %, 100 %, 0 %, 100 %であった. 【考察】STSS報告件数は2023年に顕著に増加した. また2024年6月時点で既に7件報告されており, 今後も更なる増加が危惧される. Covid-19の感染対策により2020年~2022年は全国的にSTSS報告件数も減少したが感染対策緩和に伴い2023年には増加に転じたと考えられる. 本調査ではGASによるSTSSの報告が最多であった. 埼玉県の調査によるとGASによるSTSSの報告数が2023年から増加している. 血清型M1, M3はSTSSとの関連が報告されておりM1が最も多く分離された. 発赤毒素SpeA, SpeC, SpeFはスーパー抗原として知られておりSpeA, SpeCはSTSSとの関連が示唆されている. speFは今回保有率100 %であり, STSSと何らかの関連性が考えられる.しかし, STSSに限らないが, GASのspeF保有率は様々な報告がある. 各因子とSTSSの関連性は解明されておらず, 今後も積極的な動向調査と情報収集が必要となる.   連絡先:048(852)1111◎内藤 郁弥1)、稲垣 理絵1)、神成 千晴1)、高村 さをり1)、千葉 明日香1)、前田 友子1)、石井 直美1)、渋谷 賢一1)越谷市立病院1)越谷市立病院1)◎枝澤 燎1)、伊波 嵩之1)、新井 瑛里加1)、木性 夏弥1)、佐久間 信之1)、阿保 一茂1)、岡本 直子1)さいたま赤十字病院1)さいたま赤十字病院1)当当院院ににおおけけるる劇劇症症型型溶溶血血性性連連鎖鎖球球菌菌感感染染症症のの発発生生動動向向とと血血清清型型, 遺遺伝伝子子解解析析結結果果のの調調査査108当当院院ににおおけけるるFilmArray®血血液液培培養養パパネネルルのの検検出出状状況況当院におけるFilmArray®血液培養パネルの検出状況当院における劇症型溶血性連鎖球菌感染症の発生動向と血清型,遺伝子解析結果の調査微-1(9:30~9:40)微-2(9:40~9:50)微生物EntryNo. 34微生物EntryNo. 35

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