埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
95/116

た.一部紡錘形細胞の混在も認めた.【免疫組織化学的所見】腫瘍細胞はcalretinin,WT1,D2-40,CD10,CK7,AE1/AE3が陽性,CEA,PAX8,CK20,ER陰性を示す腹膜中皮腫に相当する染色像を得た.【結果】免疫組織化学的手法では,新たに抗体を用いて追加検討を行い,腫瘍細胞はHEG-1が陽性,BAP1が陰性を示し腹膜中皮腫に矛盾しない染色態度を確認した.腫瘤捺印細胞診では異型細胞が少数しか観察されなかったため,Histo LBC method変法を用いて組織診で見られた上皮性腫瘍成分と紡錘形細胞成分の確認を行った.核形不整,核小体明瞭化を呈す淡明な細胞あるいは裸核状の細胞が索状または腺腔様配列細 胞◎嶽 秀行1)、今村 尚貴1)、岡島 ひとみ1)、中村 香里1)、神戸 僚太1)、三瓶 祐也1)、鈴木 忠男1)、生沼 利倫2)◎嶽 秀行1)、今村 尚貴1)、岡島 ひとみ1)、中村 香里1)、神戸 僚太1)、三瓶 祐也1)、鈴木 忠男1)、生沼 利倫2)川口市立医療センター 検査科1)、川口市立医療センター 病理診断科2)川口市立医療センター 検査科2)、川口市立医療センター 病理診断科2)◎松本 絵里香1)、山﨑 泰樹1)、勝平 理子1)、小野 寛文1)、松本 祐弥1)、並木 幸子1)、岡村 卓哉1)、伴 慎一1)◎松本 絵里香1)、山﨑 泰樹1)、勝平 理子1)、小野 寛文1)、松本 祐弥1)、並木 幸子1)、岡村 卓哉1)、伴 慎一1)獨協医科大学埼玉医療センター1)獨協医科大学埼玉医療センター1)NETを疑った.しかし,血管間質を伴う細胞集塊も認め,SPNとの鑑別を要した.93明細胞型腹膜中皮腫(上皮型)と考えられた1例当院で経験した Solid-pseudopapillary neoplasm の細胞学的所見の検討 を示す上皮性腫瘍成分と紡錘形核を有する紡錘系細胞を認めた.【まとめ】明細胞型の上皮型腹膜中皮腫を経験し,再検討および追加検討を行った。組織像とHisto LBC method変法で得られた細胞像を対比して報告する.【考察】SPNを示唆する細胞所見は主に①血管間質を軸にした偽乳頭状配列②微細顆粒状の核クロマチン③核溝など核の切れ込みがあげられる.今回,SPNを疑った4症例のうちの1例は核の大小不同性や核形不整を認め,患者が高齢であったためAdenocarcinomaとの鑑別を要した.また,NETを疑った症例は,裸核状に出現する異型細胞を重視したため確定には至らなかった.AdenocarcinomaやNETはときにSPNと鑑別を要するが,上記3項目を満たしていれば両者の鑑別は可能であると考える.さらに,NETは単調で類円形核を有する腫瘍細胞が疎な結合を示す.核クロマチンは,いわゆるごま塩状を呈し,これらは鑑別に重要な所見と考える. 成書の多くには若年女性に好発すると記されているが,自験例では必ずしも一致しない.細胞像を詳細に観察し総合的な判断をすることが重要と考える.048-965-1111連絡先:048(287)2525【はじめに】上皮型中皮腫では特殊な組織構築,細胞形態を示すことが知られている.今回我々は明細胞型の腹膜中皮腫と考えられた症例を経験したので,再検討により得られた組織像および細胞像を提示して報告する.【症例】60歳代女性.高血圧で前医に通院中,CRP高値を認め精査のために当院を紹介.画像検査により最大径70mm大の大網あるいは腸間膜腫瘍を認めた.手術検体として術中腸間膜腫瘤,大網腫瘍,上行結腸紐腫瘤が提出された.【細胞所見(術中腸間膜腫瘤 捺印)】細胞質は淡明あるいは不明瞭で裸核状,核形不整,クロマチン軽度増量,核小体が目立つ異型細胞が散在性あるいは結合性の低下した集塊で少数散見され,上皮性悪性腫瘍を疑った.【組織所見】大網腫瘍で大部分が硝子化,線維化を示すなかに類洞状の毛細血管を伴って索状あるいは腺管を模倣するような構造を形成する上皮性腫瘍を認め,腸間膜腫瘤も類似の所見が見られた.一方,上行結腸紐腫瘤では硝子化,線維化に乏しく上皮性成分が主体を示す腫瘍を認めた.細胞は淡明で,細胞質内にジアスターゼ消化性のPAS陽性物質が見られ【はじめに】Solid-pseudopapillary neoplasm(以下SPN)は若年女性の膵臓に好発するとされるまれな腫瘍であり,2019年のWHO分類では低悪性度腫瘍として定義されている.今回,我々は2018年から2022年の5年間に当院で経験したSPN 5症例の細胞学的所見について再検討した.【対象】2018年から2022年に病理組織診断でSPNと診断された7例のうち,細胞診検査(以下細胞診)で異型細胞を認めた5例を対象とした. 【結果】5例のうち4例はClassⅢ:SPNを疑う,1例はClassⅢ:神経内分泌腫瘍(以下NET)の可能性を考える,と報告した.また,男性は1例(70代),女性は4例(30代から70代)であった.SPNを疑った4例は,血管間質の周囲に類円形核を有する異型細胞が結合性の緩い細胞集団で出現していた.個々の細胞のサイズは比較的整っており,核クロマチンは微細顆粒状を呈し,一部には核溝を認めた.以上の所見よりSPNを第一に疑った.また,NETを疑った1例は,顆粒状の核クロマチンを呈し,類円形核を有する裸核状の異型細胞が出現していたことから細-2(9:30~10:10)細-3(9:30~10:10)細胞EntryNo. 15細胞EntryNo. 54当院で経験したSolid-pseudopapillary neoplasmの明細胞型腹膜中皮腫(上皮型)と考えられた1例細胞学的所見の検討

元のページ  ../index.html#95

このブックを見る