埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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病 理細 胞■◎工藤 綾乃1)、大場 美里1)、島田 春奈1)、浅野 祐美子1)、野村 匠1)、高橋 智史1)、柿沼 幹男1)、伊丹 直人1)◎工藤 綾乃1)、大場 美里1)、島田 春奈1)、浅野 祐美子1)、野村 匠1)、高橋 智史1)、柿沼 幹男1)、伊丹 直人1)地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立がんセンター1)地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立がんセンター1)◎岡島 ひとみ1)、今村 尚貴1)、嶽 秀行1)、神戸 僚太1)、中村 香里1)、三瓶 祐也1)、松永 英人1)、生沼 利倫1)◎岡島 ひとみ1)、今村 尚貴1)、嶽 秀行1)、神戸 僚太1)、中村 香里1)、三瓶 祐也1)、松永 英人1)、生沼 利倫1) 川口市立医療センター1) 川口市立医療センター1)92連絡先:048ff287■2525(内線:2034)■遺伝子検査用病理組織検体取り扱いに対する取り組み細胞診断に苦慮した腎転移性肺扁平上皮癌の一例 【背景】現在,多種多様な遺伝子検査が実施されており,その需要が高まっている.当検査室では,未染標本の作製を行うことで遺伝子検査業務の一部を担っているが,その依頼件数は年々増加している.検査に必要な未染標本は,日本病理学会が発表している「ゲノム診療用病理組織検体取り扱い規程」に則り作製されることが求められている.使用する固定液は10%中性緩衝ホルマリン溶液が推奨されている.検体の固定不良を回避するために,こまめに切り出しを行うことが望まれており,術後3日以内であれば核酸等の良好な保持が期待できるといわれている.取り扱い規程に対応するために当検査室が行っている取り組みを報告する.【方法】当検査室では,①従来使用していた20%中性緩衝ホルマリン溶液から段階的に切り替え,現在ではすべての生検・手術検体に対して10%中性緩衝ホルマリン溶液での固定を行っている.また,②固定不良を回避するために,切り出しを手術日の翌営業日に行い,カセットに詰めた状態で切り出し翌日まで固定している.③検体の大きさによ【はじめに】腎針生検検体採取時の針洗浄液にて,細胞診断に苦慮した転移性肺扁平上皮癌の1例を経験したので,後方的観察の検討も含めて報告する.■【症例】■■歳代■男性■X■2年に糖尿病の悪化により当院受診■入院時検査で無気肺を確認し■検査の結果、肺扁平上皮癌の診断にて肺葉切術が施行された■X年■術後フォローの■■にて■■■大の腎臓腫瘍と■両肺に■■■以下の多発円形結節が認められた■腎腫瘍に対し■■ガイド下針生検が施行された■■【検体】提示標本は■採取された組織検体を浮遊させた生理食塩液中にて穿刺針を洗浄し■■■■■■■■■■■■■■■■■■を用いて作製した■■■標本■■【細胞所見】壊死様物質と変性細胞を背景に■核肥大■■■■高■核大小不同■核形不整■クロマチン粗顆粒状■核の緊満感を有する異型細胞が重積性集塊で出現していた■腎盂原発の尿路上皮癌を第一に考えたが■鑑別として肺扁平上皮癌の転移が挙げられた■また■淡明な細胞質を有する細胞集塊も見られ■腎原発の明細胞癌も疑われた■■っては切り出しまでの間,真空固定装置を使用することもある.④長期休暇時にも出勤し,切り出し,包埋を行い,過固定を防いでいる.⑤遺伝子検査の種類により,必要な腫瘍細胞の含有率が異なるため,1組織片に対して1つのブロックを作製し,含有率が下がらないように努めている.【結果】遺伝子検査に提出する未染標本について,核酸の品質の不良によって検査が実施できないことはなかった.また,複数の組織片を1つのブロックにまとめていた頃と比較して,検査の成功率が上がった.【結語】取り組みにより,ばらつきの少なく質の高い未染標本を作製することができた.病理検査室が関わる標本作製のステップには「固定」「切り出し」「包埋」「薄切」があるが,摘出から固定までについてなど,質の高さを保持するために工夫できる点は他にもあると思われる.今後さらに遺伝子検査の需要が高まると考えられるので,病理検査室として取り組めることを探していきたい.連絡先:048-722-1111(内線4205)【組織所見】検体内に多発する■■■■■■■■■を認める■■■■■■■■■■は胞巣形成を示し■胞巣辺縁は柵状配列を示す■免疫組織化学染色では■■■が腫瘍細胞の半数に陽性を示し■■■■■■・■■■■■■■■■■■■■陰性、■■■■■は少数に陽性を示した■以上の結果より■肺扁平上皮癌の転移と診断された■■【考察】細胞診検体より肺扁平上皮癌の転移を疑うことができたが■確診する事は出来なかった■尿路上皮癌と扁平上皮癌の細胞学的特徴について■再度典型例を用いて比較検討を行った■また■明細胞癌を疑わせた細胞に関して■細胞学的特徴と類似する形態が見られるその他疾患について再検討を行った■■【まとめ】細胞診断に苦慮した腎転移性肺扁平上皮癌の一例を経験した■肺癌の腎臓への転移は少なくないが■腎転移を伴う際は進行度が高く生存中に発見されることは少ない■多岐にわたる治療法が確立された現在では■迅速な診断と治療により病状改善可能であった症例が報告されており■その有用性が期待されている■■病-3(10:10~10:40)細-1(9:30~10:10)病理EntryNo. 61細胞遺伝子検査用病理組織検体取り扱いに対する取り組み細胞診断に苦慮した腎転移性肺扁平上皮癌の一例

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