埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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一 般髄液一般検査におけるFilmArray髄膜炎・脳炎パネルの検査状況と症例検討◎菊池 航介1)、宮内 優太1)、大山 絵里香1)、村田 知香代1)、辻 智恵子1)、山根 潤也1)、猪浦 一人1)◎菊池 航介1)、宮内 優太1)、大山 絵里香1)、村田 知香代1)、辻 智恵子1)、山根 潤也1)、猪浦 一人1)埼玉県済生会加須病院1)埼玉県済生会加須病院1)◎武田 乃ノ佳1)、渡邉 裕樹1)、奈良 豊1)、松尾 千賀子1)、大野 優子1)、室谷 孝志1)、竹下 享典1)◎武田 乃ノ佳1)、渡邉 裕樹1)、奈良 豊1)、松尾 千賀子1)、大野 優子1)、室谷 孝志1)、竹下 享典1)埼玉医科大学 総合医療センター1)埼玉医科大学 総合医療センター1)87【はじめに】全自動尿中有形成分分析装置UF-5000 (シスメックス株式会社)は,フローサイトメトリー法を原理とした装置である.この装置は細胞の核酸量や内部構造を加味した大きさ情報などの解析ができるため,研究項目ではあるが尿中異型細胞「Atyp.C」の検出が可能となった.今回「Atyp.C」のカットオフ値の変更による測定結果と尿細胞診の結果を比較し,「Atyp.C」の有用性を検討したので報告する.【対象・方法】2022年6月3日から2022年7月6日までの尿検体2758件を対象に, カットオフ値を0.1μLずつ変更し,目視鏡検の有無と細胞診結果を比較検討した.【結果】当院が採用している目視鏡検条件「Atyp.C」のカットオフ値0.5/μL以上では目視率は30.8%であった.「Atyp.C」のカットオフ値0.4/μLと0.3/μLでは31%,0.2/μLでは31.4%,0.1/μLでは35.8%と目視率が5%増加する結果となった.次にカットオフ値0.5/μL以上で検出された「Atyp.C」は2758件中,145件であった.同様に0.4/μLは150件,0.3/μLは150件, 0.2/μLは160件, 0.1/μLは283件であった.【はじめに】髄液から迅速に細菌やウイルス,真菌を検出可能なFilmArray髄膜炎・脳炎パネル(以下FilmArray)は,髄膜炎における病原体の検出や抗菌薬の選択・投与において重要である.今回我々は,FilmArrayの検査状況を把握し,遺伝子関連検査における一般検査の重要性について考察したので報告する.【対象・方法】2022年12月1日から2023年4月30日までにFilmArrayの検査依頼があった患者を対象とした.FilmArrayで病原体を検出した症例において髄液細胞数や髄液化学検査,抗菌薬・抗ウイルス薬の投与について集計し検討した.【結果】対象期間中に髄液検査の依頼は374件あり,そのうち37件でFilmArrayの検査依頼があった.FilmArrayの検査依頼があった患者のうち6件で病原体の検出があった.ウイルスが4件,細菌が2件であった.病原体を迅速に検出でき即日に抗菌薬投与が可能となった2症例について詳細を報告する.症例1:0歳,女児.髄液細胞数318/µL(単核球:56%,更にカットオフ値0.5/μLでは,細胞診結果陽性(classⅢ)以上は10件であり,0.1/μL以上では,17件という結果であった.【考察】当院では目視鏡検条件として「Atyp.C」のカットオフ値を0.5/μL以上としているが,カットオフ値0.1/μL以上にした場合,増加する目視鏡検件数は1日におよそ10件未満であることが確認できた.また細胞診陽性件数も7件増加する結果であるため,カットオフ値の変更は有意義であると考えた.【結語】異型細胞の検出には「Atyp.C」のカットオフ値を引き下げ,感度を上げる事は有用であると思われる.しかし「Atyp.C」は偽陽性が多いのも事実である.その要因として強い炎症や細胞質内封入体細胞等が挙げられる.後者は異型細胞出現時の背景に見られる事があるため,鏡検する意義は高いと考える.以上より「Atyp.C」を活用し慎重に鏡検する事が重要であると思われる.多形核球44%),髄液糖3mg/dL未満,血清糖101mg/dLと著名な糖の低下を認め細菌性髄膜炎が疑われた.FilmArrayで肺炎球菌が検出され即日中にバンコマイシンによる迅速な治療が開始となった.症例2:70歳代,女性.髄液細胞数139/µL(単核球:99%,多形核球:1%),髄液蛋白177mg/dL,髄液糖61mg/dL,血清糖173mg/dLであった.FilmArrayで水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)を検出し,当日中にアシクロビル投与量が脳炎・髄膜炎用量に変更となった.【考察・結語】髄膜炎において髄液細胞数や髄液化学検査結果に加え培養検査など数日かかる検査より治療薬の選択が行われている.FilmArrayにより迅速に病原体を検出することで,即日中に治療薬の選択や投与の可否が可能となった.しかし,検出可能な病原体が限られており,潜在的なウイルスの存在も考慮しなければならない.髄液における遺伝子関連検査は,髄液一般検査での細胞数や化学検査結果を総合的に考察し結果を解釈することが重要である.                連絡先049(228)3498連絡先0480-70-0888 内線2066般-8(12:50~13:30)般-9(12:50~13:30)一般EntryNo. 38一般EntryNo. 47全自動尿中有形成分分析装置UF-5000における全自動尿中有形成分分析装置UF-5000における「Atyp.c」の有用性の検討「Atyp.c」の有用性の検討検査状況と症例検討髄液一般検査におけるFilmArray髄膜炎・脳炎パネルの

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