埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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一 般〇橘 宙香1)、伊藤 真希1)、宮澤 夏帆1)、岡田 茂治1)、小関 紀之2)〇橘宙香1)、伊藤真希1)、宮澤夏帆1)、岡田茂治1)、小関紀之2)埼玉県立大学 健康開発学科検査技術科学専攻1)、獨協医科大学埼玉医療センター2)◎田崎 翼1)、山田 晃聖1)、高橋 栞1)、樋口 怜子1)、小関 紀之1)、藤代 政浩1)、中島 あつ子1)、春木 宏介1)◎田崎 翼1)、山田 晃聖1)、高橋 栞1)、樋口 怜子1)、小関 紀之1)、藤代 政浩1)、中島 あつ子1)、春木 宏介1) 獨協医科大学埼玉医療センター1) 獨協医科大学埼玉医療センター1)85埼玉県立大学 健康開発学科検査技術科学専攻1)、獨協医科大学埼玉医療センター2)【はじめに】尿沈渣で発見される尿中異型細胞、すなわち腎尿路系癌は全がんの中での罹患者数(膀胱癌:男性17,498人、女性5,885人、腎尿路癌:男性20,678人、女性9,780人)は男性で5位、女性では8位に多いがんである(2019年全国がん登録罹患データ)。臨床では尿沈渣検査での発見機会が多い。我々は日常検査として広く実施されている尿沈渣検査において尿中異型細胞を判定するアシストツールとしてのAI(deep learning)判定モデルの開発を試みた。 【対象及び方法】AI(deep learning)開発プログラム:ニューラル・ネットワーク・コンソール(NNC:sony株式会社)。学習・検証データ:S染色を実施した尿沈渣画像にaugmentation(データ拡張)として左右反転、上下反転を行った。解析データは良性細胞190画像、悪性疑い細胞376画像、悪性細胞514画像を使用した。AIモデル:Resnet110に一部コマンドを追加修正し、自動探索機能を利用し、最適なAI構築を試みた、解析装置:CPUはIntel core i7-10750H CPU 2.59 GHz、実装RAMは64MB、GPUはNVIDIA GEFORCE RTX2070superを使用した。 【はじめに】キサンチン結晶は化学療法中に腫瘍崩壊症候群を予防するために使用されるキサンチンオキシダーゼ阻害薬を投与することで尿酸の前駆物質であるキサンチンが蓄積され,尿中に出現することが報告されている.今回,われわれは,化学療法開始後に,尿沈渣中にキサンチン結晶を認めた症例を経験したので報告する. 【症例】70歳代男性,2023年3月に腫瘤形成性大腸憩室炎疑いで当院消化器内科へ紹介となった.前院の内視鏡による生検の結果,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の診断となり外科的手術介入目的に入院となった.入院後に開腹結腸切除術が施行され,その後,血液内科転科となり化学療法(EPOCH療法)が開始された. 【既往歴】脂質異常症,高尿酸結晶,甲状腺機能低下症,逆流性食道炎 【化学療法開始時検査】血液検査:WBC 23.1×109/L,RBC 2.65×1012/L,HGB 7.8g/dL,Ht24.2 %,PLT 219×109/L,AST 73 U/L,ALT 21U/L,LDH 2768 U/L,Cre 0.76mg/dL,UA 3.1mg/dL 尿定性:潜血(±),蛋白(-),糖(-),pH 6.0,比重1.016,ケト尿中異型細胞のAI(deep learning)判定モデル作製の試み【結果】Recall(再現率:感度相当):良性細胞1.000、良悪不明細胞0.8266、悪性細胞0.8785、Precision(適合率:陽性的中度相当):良性細胞0.9444、良悪不明細胞0.8378、悪性細胞0.8867、Accuracy(正答率)は0.8796であった。 【考察および結語】良性細胞をRecallとして1.000の高精度で判定できるAI(deep learning)判定モデルを作製することができた。尿中異型細胞の鑑別は、時に細胞の変性などの影響があり良性細胞との鑑別に苦慮することがあるが、尿沈渣検査でスクリーニングを行い、尿細胞診による精査を追加依頼することが必要となる。尿中異型細胞のスクリーニング判定にAI判定モデルがアシストツールとして寄与できるものと考える。今後、追加症例の検討や他細胞との判別を含め判別精度の向上を目指したい。 連絡先048-973-4797 ン(-),亜硝酸塩(-),白血球(-),尿沈渣:赤血球1-4/HPF,白血球1-4/HPF,扁平上皮<1/HPF,尿細管上皮<1/HPF,尿酸結晶1+,キサンチン結晶1+ 【症例経過】入院前から高尿酸結晶に対して,アプリノール100mg/dayが服用されており,入院後も継続されていた.化学療法開始前から徐々に血清尿酸値の上昇を認めたため,化学療法開始2日前からアプリノール100mg/dayの服薬が中止され,フェブキソスタット60mg/dayに変更となった.フェブキソスタット服用後,血清尿酸値は徐々に低下し化学療法開始時の尿沈渣中に褐色の板状結晶を認め,キサンチン結晶と主治医に報告した.数日後,フェブキソスタットは20mg/dayに減量され,尿沈渣中にキサンチン結晶は認めなかった. 【まとめ】本症例は,キサンチンオキシダーゼ阻害薬の使用により,尿酸値が低値化し,キサンチンが蓄積して尿中に析出したと考えられる.キサンチンの蓄積は結石形成のリスクとなり閉塞性腎障害の原因ともなるため,臨床への報告意義は高いと考える. 連絡先048-965-1111(内線3208) 化学療法開始後、尿沈渣中にキサンチン結晶を認めた一症例 一般一般般-4(9:30~10:30)般-5(9:30~10:30)尿中異型細胞のAI(deep learning)判定モデル作製の試み化学療法開始後、尿沈渣中にキサンチン結晶を認めた一症例

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