埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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血 液【はじめに】形質細胞白血病(PCL)はWHO分類で多発性骨髄腫亜型として分類され,多発性骨髄腫(MM)に比べて進行が早く,予後不良な疾患である.MMの経過中に移行する二次性PCL(sPCL)では,IgH遺伝子の一次転座,高2倍体変異が重要とされ,そこに細胞の増殖や生存に関わる様々な遺伝子の二次的な変異などが蓄積されてPCLへ移行すると考えられている.今回我々は,IgH遺伝子の一次転座が確認されたMMからPCLに進展した症例を経験したので報告する.【対象】81歳女性,他院にて貧血精査のため入院加療中に,尿中Bence Jones蛋白κ型M蛋白血症を認め,骨髄検査目的で当院紹介となった.【結果】入院時検査所見では,白血球数3,000/μL(桿状核球6%,分葉核球47%,好酸球1%,リンパ球46%),ヘモグロビン濃度9.9g/dL,血小板数12.7万/μLであった.同日実施した骨髄検査では,有核細胞数6.35万/μL,巨核球数2/μL未満,M/E比2.50,形質細胞86.6%認め,それらには小型~大型,N/C比大,幼若,2核などの形態異常がみら【はじめに】貧血は栄養不良や健康問題の指標であり,WHOは2019年に6カ月から5歳の子どもの40%,妊婦の37%,15歳から49歳の女性の30%に影響を及ぼしたと報告し,2025年までに生殖年齢女性の貧血有病率を半減させるための行動を加速するよう各国に呼びかけた.そこでわれわれは,さいたま市が行っている女性のヘルスチェックのデータを基に,貧血の変化について集計したので報告する.【対象および方法】女性のヘルスチェック対象年齢は18歳から39歳である.WHOが報告した2019年の1月5日から12月28日と,直近の2022年1月5日から12月29日の受診者の年齢,問診,測定値を集計対象とした.また,非貧血者のうち血清鉄(Fe)60μg/dL未満のものを貧血予備軍“隠れ貧血”として集計した.【結果】2019年の総受診者数は5,464人,貧血有病者数は914人,有病率は16.7%であった.最も有病率が高い年齢は37歳で21.2%であった.有病者の既往歴で最も多い疾患は月経異常で,その次に多いのは子宮筋腫であった.また,連絡先:04-2995-1511(3206)◎伏見 真也1)、中山 智史1)、山本 由貴子1)、福島 明音1)、菊池 武彦1)、緒方 衝1)、松熊 晋1)◎伏見 真也1)、中山 智史1)、山本 由貴子1)、福島 明音1)、菊池 武彦1)、緒方 衝1)、松熊 晋1)防衛医科大学校病院1)防衛医科大学校病院1)◎堀内 渚1)、佐藤 奈都美1)、安藤 奨1)、大倉 道子1)、長谷川 隆1)、神山 清志1)◎堀内 渚1)、佐藤 奈都美1)、安藤 奨1)、大倉 道子1)、長谷川 隆1)、神山 清志1)浦和医師会 メディカルセンター1)浦和医師会 メディカルセンター1)れた.FCM解析では,CD38,CD138,CD20陽性,CD19陰性であった.また,細胞表面免疫グロブリン軽鎖(κ,λ)に偏りは認めなかった.FISH解析では,IGH-CCND1融合遺伝子およびD13S319陽性であった.以上より,MMの診断となった.病日2日目にて末梢血中に形質細胞27%(729/μL)認め,ボルテゾミブ投与開始となった.病日10日目では,末梢血中の形質細胞44%(2,068/μL)となり,その後も高値を推移し,PCLへの進展が考えられた.【考察】sPCLはMM患者の2~4%で併発し,予後不良な疾患である.今回経験した症例では,入院時に実施した骨髄検査のFISH解析でIgH遺伝子の一次転座が認められた.その後,末梢血中の形質細胞が経時的な増加を認め,sPCLの診断となった.sPCLはIgHの一次転座に付随して起こる二次的変異などによって進展すると考えられていることから,上記のような転座を認めた際は,sPCLとなる可能性を念頭に末梢血中の形質細胞の比率および絶対数の経時的な変化を注視していくことが重要と考える.既往歴で貧血なしと答えたが,貧血だったものは648人で,貧血者全体の70.9%であった.2022年の総受診者数は5,177人,貧血有病者数は955人,有病率は18.4%であった.最も有病率が高い年齢は,38歳で24.0%であった.有病者の既往歴で最も多い疾患は月経異常で,その次に多いのは子宮筋腫であった.また,既往歴で貧血なしと答えたが,貧血だったものは736人で,貧血者全体の77.0%であった.隠れ貧血は,2019年が633人で総受診者の14.0%,2022年が545人で総受診者の13.0%であった.【まとめ】貧血有病率が増加し,隠れ貧血が減少していることから,隠れ貧血から貧血へ移行したと考えられる.貧血有病率の増加は年齢に比例して増加する傾向がみられた.また,既往歴から,貧血であるにもかかわらず,自覚していないものが貧血者全体の半数以上いることがわかった.WHOが目指す,2025年までに生殖年齢女性の貧血有病率を半減させるには,1歩踏み込んだ改善が必要だと考える.今後も2025年に向けて,動向を注視していきたい.連絡先:048-824-162981多発性骨髄腫から形質細胞白血病へ進展した1症例当施設における女性のヘルスチェックの貧血について血-3(9:30~10:40)血-4(9:30~10:40)多発性骨髄腫から形質細胞白血病へ進展した1症例当施設における女性のヘルスチェックの貧血について血液EntryNo. 19血液EntryNo. 55

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