埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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生 理【はじめに】Multiple Sleep Latency Test (MSLT;反復睡眠潜時検査)は,日中の眠気を客観的に評価する検査であり,ナルコレプシーが疑われる患者の診断に用いられる.ナルコレプシーは,日中の過剰な眠気とREM睡眠の易発現性を示す中枢性過眠症である.今回報告するのは,MSLTを施行したところ,短い睡眠潜時は確認されたが,REM睡眠から始まる睡眠がみられなかったためナルコレプシーを否定された1例である.【症例】小学生男児.2-3年前から授業中に眠ってしまい,起こしてもなかなか起きないこと,呼びかけに反応せずフリーズしてしまうことが指摘されていた.昨年,耳鼻科で両側下鼻甲介切除術を実施したことにより,閉塞性無呼吸は改善されたが,その後も日中の眠気は改善されず,当院神経科を受診された.【PSG検査】MSLT前日の晩から当日朝にかけて施行.脳波(10-20法),筋電図(三角筋,オトガイ),眼球電図,胸腹バンド,SpO2モニターを装着.【MSLT】2時間おきに計5回施行(9時,11時,13時,【目的】女性の睡眠は月経周期に伴う体温リズムの変化と密接に関係しており、高温期となる黄体期は性ホルモンであるプロゲステロンの影響で、特に睡眠と覚醒のメリハリが失われやすく、日中の眠気が強くなる一方、夜間眠れないと訴える女性が存在する。黄体期の睡眠問題改善に貢献できれば女性の円滑な社会活動の支援につながる。そこで本研究では、身体運動による熱放散(放熱)の促進に着目し、健常成人女性の卵胞期および黄体期における身体運動とりわけレジスタンストレーニングが就寝前および夜間就床中の熱放散、睡眠脳波成分に与える生理学的特性を検討した。本研究は埼玉県立大学倫理委員会の承認を得て行った。【方法】説明と書面による同意の得られた健常成人女性12名を対象に1) 卵胞期非運動条件、2) 卵胞期運動条件、3) 黄体期非運動条件、4) 黄体期運動条件の計4日間実験を実施した。運動条件では日中に70%1RMで40分間のレジスタンストレーニングを行った。いずれの条件も被験者自宅で皮膚温、鼓膜温、夜間睡眠脳波を一晩同時計測した。15時,17時).脳波(10-20法),筋電図(三角筋,オトガイ),眼球電図を装着.【結果】PSGの結果,総睡眠時間が518 min(8.6 h > 6 h)であり,十分な睡眠がとれていることが確認された.MSLTの結果は,5回中4回で入眠があり,平均睡眠潜時は7 min ( < 8 min)と短縮していたが,sleep onset REM period (SOREMP)はみられなかったため,ナルコレプシーは否定的となった. 睡眠潜時の短縮があったことから,特発性過眠症やADHDによる過眠症状が診断に残る結果となった.【結語】MSLTは睡眠潜時と,どのようなsleep stageを辿っているのかが重要である.臨床的に価値のある結果を得るためにも,小児患者のMSLTでは,電極を外されないようにする工夫やメンタル的なフォロー,発達段階や本人の希望に応じた柔軟な対応(付き添いの有無や部屋の明るさの調整など)が必要であると考える.遠位皮膚温と近位皮膚温の温度差から入眠かつ熱放散の指標distal-proximal temperature gradient (DPG)を算出した。AASM判定マニュアルを用いて夜間睡眠脳波の段階判定および周波数解析を行った。【結果】卵胞期、黄体期ともに、両運動条件で就床前および夜間就床中のDPGが上昇し、一晩のδ-powerが増加したが、卵胞期と黄体期の間で有意差はなかった。夜間就床中を4分割しδ-powerの分布を検討した結果、卵胞期運動条件ではδ-powerの出現が夜間徐々に減少していくのに対し、黄体期運動条件では睡眠中後半においてもδ-powerが有意に増加していた。【結論】レジスタンストレーニングは、体温が高く放熱が抑制されやすい黄体期でも放熱を促進し、夜間睡眠時の徐波成分を増加させる可能性がある。 連絡先-2491008c@spu.ac.jp, 048-971-0500(内線4170)連絡先:048(601)2200 (内線2554)◎枝澤 淳樹1)、稲垣 裕子1)、多並 慎弥1)、益子 明子1)、神嶋 敏子1)、小山 真弘1)◎枝澤 淳樹1)、稲垣 裕子1)、多並 慎弥1)、益子 明子1)、神嶋 敏子1)、小山 真弘1)地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立小児医療センター1)地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立小児医療センター1)◎伏見 もも1)、飯島 竜星1)、木山 水月2)、久保川 媛加2)、菅原 このみ2)、高倉 麻里子2)、有竹 清夏1)◎伏見 もも1)、飯島 竜星1)、木山 水月2)、久保川 媛加2)、菅原 このみ2)、高倉 麻里子2)、有竹 清夏1)埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科1)、埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科検査技術科学専攻2)埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科1)、埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科検査技術科学専攻2)78小児病院でのMSLTの対応と睡眠潜時短縮がみられた1例の報告女性の身体運動と夜間睡眠脳波測定中の徐波活動生-15(12:50~13:40)生-16(12:50~13:40)小児病院でのMSLTの対応と睡眠潜時短縮がみられた1例の報告女性の身体運動と夜間睡眠脳波測定中の徐波活動生理EntryNo. 31生理EntryNo. 52

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