埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
71/116

微生物・その他尿からStreptococcus pneumoniaeが分離された一症例◎米倉 拓哉1)、桑原 みや子1)、松本 千織1)、深澤 麻衣子1)、志村 瑠華1)◎米倉 拓哉1)、桑原 みや子1)、松本 千織1)、深澤 麻衣子1)、志村 瑠華1)川口市立医療センター1)川口市立医療センター1)◎小針 奈穂美1)、田中 歩実1)、今井 一男1)、前田 卓哉1)◎小針 奈穂美1)、田中 歩実1)、今井 一男1)、前田 卓哉1)埼玉医科大学病院1)埼玉医科大学病院1)69【はじめに】Streptococcus pneumoniae(以下S. pneumoniae)はヒトの口腔内や上気道の常在菌として定着しており,市中肺炎では最も分離頻度が高い菌である.小児や成人・高齢者など年齢を問わず,肺炎・敗血症・髄膜炎などを起こす例が多く,通常,喀痰・血液・髄液などから分離される.今回,尿からS. pneumoniaeが分離された一症例を経験したため報告する.【症例】5歳女児.急性細菌性巣状腎炎(AFBN)の既往があり,1年ほどCCLによる持続的少量抗菌薬予防投与(CAP)をしていた.基礎疾患に膀胱尿管逆流症あり.右腰背部痛と発熱を主訴に来院した.【経過】尿定性検査では亜硝酸塩陰性,白血球反応(1+)であった.尿の直接塗抹検査ではグラム陽性球菌を認め,双球菌が確認されたためEnterococcus属と推定した.培養検査ではコロノテスト4CMCC・羊血液寒天培地・ドリガルスキー改良培地に接種し,35℃好気環境下で培養した.18~24時間培養後,尿中細菌数は106CFU/ml以上であった.羊血液寒天培地にてα溶血性で中心部が陥没したコロニー【はじめに】アジア条虫(Taenia asiatica)は、主に豚の肝臓に寄生する嚢虫の経口摂取で感染する。形態およびその臨床像は無鉤条虫(Taenia saginata)に酷似しており、形態学的鑑別および臨床経過からの推定は困難である。今回、排泄された虫体のDNA解析より同定検査を行ったので報告する。【症例】患者:77歳, 男性。食歴: 5~6年前から牛ユッケ、2年前から豚生レバー (いずれも、埼玉県内のスーパーで購入) を頻回に喫食した。渡航歴:最近の数年間はなし。現病歴:糞便中に白色の物体を確認。近隣の医療機関を受診し、糞便から放射状線条と鉤を有する条虫卵が検出されことから、治療を目的に当院へ紹介された。検査所見:提出された糞便中に肉厚の片節を認めた。また、集卵法(MGL法)では、上記と同様の条虫卵を多数確認できた。【方法】10%ホルマリンにて固定された体節を用いた。体節は小さく裁断した後、QIAamp DNA Mini Kit (QIAGEN)を用いて DNAを抽出した。Lysateの作成にはProteinase Kを用いた酵素処理(64.0度)を実施した。核酸増幅にはT. の発育を認め,ドリガルスキー改良培地にコロニーの発育は認められなかったためS. pneumoniaeを推定し,RAISUS S4のRSCP2を用いてS. pneumoniaeと同定,同パネルにて薬剤感受性試験も実施した.同時にオプトヒン感受性試験も実施し,阻止円14mmとなり,オプトヒン感受性であった.S. pneumoniae以外の同時検出菌は分離されなかった.超音波検査ではAFBNを疑う所見はなく,排尿時膀胱造影検査では膀胱尿管逆流は認められなかったが,培養検査の結果よりS. pneumoniaeによる尿路感染症と診断された.抗菌薬はCCLが投与され,その後,CAP再開の方針となった.【考察】尿からS. pneumoniaeが分離されることは稀である.コロニーの特徴より菌の推定・同定は容易であるが,分離された場合は汚染菌との鑑別が重要である.微生物検査において尿中細菌数や同時検出菌の有無が汚染菌との鑑別に重要であり,本症例ではそれらに加えて基礎疾患などの患者情報からS. pneumoniaeが起炎菌であると考えられた.       連絡先 048-287-2525(内線 2059)染状況は明らかではない。そのため、国内症例での正確な病原体同定は食品衛生上にも極めて重要であるが、とりわけ形態的鑑別が困難であることから、簡易的なDNA解析法の確立が求められている。本症例では、LAMP法による体節の種同定は簡易的かつ迅速に行うことが可能であった。【結語】条虫の片節もしくは虫卵が検出された際には、感染経路を把握するため、アジア条虫も含めた正確な同定検査の実施は重要である。DNA解析による条虫同定検査連絡先:049(276)1440asiatica, T. saginata および有鉤条虫 (Taenia solium) の各cox 1 遺伝子に特異的な塩基配列をもつプライマーを用い、LAMP法を実施した。【結果】T. saginataに対するLAMP法のみ増幅が確認できたことから、最終的に本虫体を無鉤条虫と同定した。【考察】2010年以降、埼玉県を含む関東地方を中心にアジア条虫の感染事例が報告されるものの、国産豚の詳細な感微-6(12:50~13:40)微-7(12:50~13:40)尿からStreptococcus pneumoniaeが分離された一症例DNA解析による条虫同定検査微生物・その他EntryNo. 39微生物・その他EntryNo. 40

元のページ  ../index.html#71

このブックを見る