埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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1234567免疫血清微生物・その他【はじめに】血液中でのインターロイキン-6(IL-6)は,自己免疫疾患や感染症などで上昇することが報告されている.脳脊髄液中のIL-6(以下,髄液IL-6)についても診断における有用性が報告されている.我々の研究で,髄液IL-6の上昇は細菌性髄膜炎・急性脳症等を示唆することを別学会にて報告した.今回経時的な髄液IL-6測定が,臨床的に有用であった症例について報告する.【検査方法】IL-6は電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)を測定原理とするcobas pro(Roche社)を用いて測定した.髄液検体は500g,5minで遠心処理したものを対象とし,本検討は当センター臨床研究倫理委員会承認を受け実施した.【症例】83歳男性:頭蓋咽頭腫摘出術後に細菌性髄膜炎発症頭蓋咽頭腫摘出術の2週間後に髄液漏を疑い(第0病日),翌日ドレーンチューブが挿入され髄液検査が施行し,結果の詳細は下表に示す.初回髄液検査施行から7日目にドレーンチューブを抜去し,3回目の髄液検査を実施したが,翌日意識障害をきたし,4回目の髄液検査施行となった.【はじめに】全自動遺伝子解析装置FilmArray(FA)呼吸器パネル2.1はSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)を含む22種のウイルス,および細菌を約1時間で同時に検出可能である.当院では,2023年4月にFAを導入した.その検出状況について後方視的に検討した.【対象】本年4月から6月に依頼があった0歳から92歳までの鼻咽頭ぬぐい液222検体を対象とした.【方法】FA呼吸器パネル2.1を用いて,各病原微生物の検出状況や同時検出について検討した.【結果】222検体のうち,130検体(58.6%)から病原微生物が検出された. 病原微生物の検出状況としては,ヒトライノ/エンテロウイルス66検体(50.8%),RSウイルス34検体(26.2%),パラインフルエンザウイルス3型21検体(16.2%),アデノウイルス15検体(11.5%),コロナウイルスOC43型11検体(8.5%),パラインフルエンザウイルス4型11検体(8.5%),コロナウイルスNL63型6検体(4.6%),SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)6検体(4.6%),インフルエンザウイルスA/H3型2検体(1.5%),ヒトメタニューモウイルス2検体結果は髄液細胞数,髄液IL-6共に著増し,髄液細菌培養ではEnterobacter cloacae が検出された.同時に,腰椎穿刺部からも同菌が検出され,細菌性髄膜炎と診断された.その後第30病日目までバンコマイシン,第36病日目までメロペネムが投与され,髄液細胞数,髄液IL-6共に減少した.【考察】本症例から,細菌検出される前日より髄液IL-6の上昇が確認でき,また治療経過ともに髄液細胞数および髄液IL-6は減少傾向を示したことから,髄液IL-6が髄膜炎の早期発見や治療効果判定のバイオマーカーとしての有用性が示唆された.連絡先 080-9299-3074領域に対してのスクリーニング検査等として有用であると示唆された.今後も更なる検体の蓄積を行い,引き続き有用性を検討する.連絡先:048-965-1111(内線3217)◎森藤 あかり1)、志村 拓也1)、柿沼 智史1)、植原 明日香1)、堀内 雄太1)、高野 通彰1)、西岡 正人1)◎森藤 あかり1)、志村 拓也1)、柿沼 智史1)、植原 明日香1)、堀内 雄太1)、高野 通彰1)、西岡正人1)川口市立医療センター1)川口市立医療センター1)◎後藤 駿斗1)、春木 宏介1)、中島 あつ子1)、矢澤 淳子1)、飯草 正実1)、杉山 梓実1)、齊藤 理央1)、菅野 夏帆1)◎後藤 駿斗1)、春木宏介1)、中島 あつ子1)、矢澤 淳子1)、飯草 正実1)、杉山 梓実1)、齊藤 理央1)、菅野 夏帆1)獨協医科大学埼玉医療センター1)獨協医科大学埼玉医療センター1)66髄液IL-6(pg/mL)髄液細胞数(個/μL)髄液細胞数髄液細胞数単核多核(個/μL)(個/μL)82.8532745000075712717217921792401095771<1<1<1524020<1152801295772髄液蛋白(mg/dL)髄液糖(mg/dL)血清IL-6(pg/mL)14653.5311122544.5368243485859<546425269.661病日目4病日目8病日目9病日目18病日目24病日目30病日目(1.5%),B.parapertussis2検体(1.5%)が検出された.同時検出については,130検体のうち39検体(30.0%)で認められた.小児領域では,総数152検体のうち116検体(76.3%)から病原微生物が検出された.【考察】FA呼吸器パネル2.1は,SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)を含むウイルスの鑑別に有用であると考えられる.特に,小児領域において流行の影響受けやすいRSウイルスやヒトメタニューモウイルスなどの鑑別に有用であると考えられる.従来のイムノクロマト法や核酸増幅検査法では,それぞれの検査のために複数回の検体採取を行うため,患者への負担が大きく,時間や医療資源の無駄も多い.FA呼吸器パネル2.1は,単回の検体採取で侵襲性も少なく,短時間で網羅的に病原微生物を同時検出できるため,鑑別に有用であると考えられる.【結語】病原微生物不明の呼吸器症状を呈する検体や小児免疫血清微生物・その他EntryNo. 4免-6(9:30~11:15)微-1(9:30~10:10)当院におけるFilmArray呼吸器パネル2.1を用いた当院におけるFilmArray呼吸器パネル2.1を用いた病原微生物の検出状況についてEntryNo. 62脳脊髄液を材料としたインターロイキン-6測定の脳脊髄液を材料としたインターロイキン-6測定の経時的変化を追えた1症例経時的変化を追えた1症例病原微生物の検出状況について

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