埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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臨床化学免疫血清~溶血コメント付加開始点決定の検討~◎野﨑 朱里1)、木村 真依子1)、松本 さゆり1)、鈴木 朋子1)◎野﨑 朱里1)、木村 真依子1)、松本 さゆり1)、鈴木 朋子1)医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院1)医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院1)◎廣田 怜衣1)、中村 優希1)、杉田 勝樹1)、佐久間 仁美1)、高橋 智也1)、小林 竜一1)◎廣田 怜衣1)、中村 優希1)、杉田 勝樹1)、佐久間 仁美1)、高橋 智也1)、小林 竜一1)株式会社アムル 上尾中央臨床検査研究所1)株式会社アムル 上尾中央臨床検査研究所1)生化学・免疫学検査用手法における希釈精度の技師間差縮小への取り組み溶血による免疫学的検査への影響63【はじめに】当科は100名を超える大規模検査室であり,日常業務とは異なる当直業務を行う技師も多い.異常高値など用手法による希釈を行う際は手技等の原因で技師間差が生じる可能性がある.精度を統一することは臨床に正確な結果を報告するために重要である.今回,2022年度の科内品質目標に検査精度の維持を掲げ,生化学・免疫学検査の用手法における希釈精度を指標として取り組みを行ったので報告する.【方法】試料:AST実測値が177 U/Lとなるプール検体を作成し,分注,凍結したものを使用した.対象:生化学・免疫学担当8名,担当者以外の日当直業務に携わる技師31名,計39名.測定方法:測定前30分室温にて融解し,生理食塩水で試料を2倍,6倍,11倍希釈し測定した.評価:生化学技術管理者の測定結果を目標値とし,目標値からの誤差±5%以内を指標とした.【結果】生化学・免疫学担当(8名)では2倍,6倍希釈で全員が±5%以内となり精度が保たれていた.11倍希釈では4名が±5%を超えた.担当を除く日当直業務(31名)に携【はじめに】当施設では溶血検体の測定時,溶血の影響を受ける項目についてはコメントを付記し,結果報告を行っているが,コメント付加開始点の明確な基準は設けていなかった.今回,溶血による測定値の変動の把握と,溶血コメント付加開始点の決定を目的に,インスリン,BNP,葉酸,NSEの4項目について,溶血の影響を検討したため報告する.【方法】(1)溶血原液の作成:EDTA-2K加血液の血球を生理食塩液で3回洗浄後,-30 ℃で凍結し完全に溶血させた.これを精製水で1.5 g/dLに調整し,溶血原液とした.(2)希釈系列の作成:溶血原液とプール検体を1:9の割合で混合した溶液(溶血試料)と,精製水とプール検体を1:9の割合で混合した溶液(ブランク試料)を使用し,Hb濃度0~150 mg/dLの11段階の希釈系列を作成した.(3)溶血強度の判定:生化学自動分析装置BM6070(日本電子社)を使用して試料を測定し,溶血強度(-,1+,2+,3+)の判定を行った.(4)試料の測定:インスリンはAlinity i(アボット社),BNP,葉酸はAtellica IM(シーメンス社),NSEはCobas e801(ロシュ社)を使用し,測定を行った.(5)溶血コメント付加開始点の決定:各試薬における同時再現性(CV%)わる技師では2倍希釈で4名,6倍希釈で10名,11倍希釈で25名が±5%を超え,そのうち12名は±10%を超えたため,指導が必要であると判断し手技を確認した. 【考察】指導を必要とした技師の手技を確認したところ,不適切なピペットの使用方法,ピペッティングによる混和不足などの手技が見られ,今回の測定値の差につながっていると思われた.特に希釈倍率が高くなるほど手技の煩雑さにより結果の誤差が生じやすいと思われる.指導後は±10%を超える誤差が認められなくなった.【結語】今回の取り組みを実施したことで,希釈の手技による技師間差の実態を確認し,把握することができた.また,指導を行うことで測定値の差を縮小させることができた.日常業務において用手法による希釈を行う際は11倍~99倍希釈の頻度が最も多いため,取り組み時の希釈倍率を上げることも検討しつつ今後も定期的に確認し,希釈精度の向上と,教育時の注意点として今後に活かしていきたい.連絡先:048-773-1111(内線2415)以上の変動を基準とした.【結果】溶血強度の判定は,1+がHb濃度30~45 mg/dL,2+が60~75 mg/dL,3+が90 mg/dL以上となった.ブランク試料(Hb濃度 0 mg/dL)の測定値に対する溶血試料(Hb濃度 150 mg/dL)の相対比は,インスリン: 88.1 %,BNP: 82.7 %,葉酸: 185.1 %,NSE: 183.0 %であった.溶血コメント付加開始点は,インスリン: 1+ (45 mg/dL),BNP: 2+ (60 mg/dL),葉酸: 1+ (45 mg/dL),NSE: 1+ (30 mg/dL)に決定した.【考察】葉酸,NSEと比較して,インスリン,BNPでは測定値の変動がゆるやかであった.インスリン,BNPが赤血球内の分解酵素に影響を受けることに対し,葉酸,NSEは赤血球/血漿比が高いことに影響を受けており,その機序の違いが測定値の変動率に関係していると考えられる.【結語】今回の検討で,溶血による測定値の変動を把握し,日常検査業務における溶血コメント付加開始点の基準を明確にすることができた.今後は他項目での検討も実施していきたい.連絡先: 048(912)3113(直通)臨床化学免疫血清化-7(9:30~10:55)免-1(9:30~11:15)EntryNo. 46EntryNo. 22生化学・免疫学検査用手法における希釈精度の技師間差縮小への取り組み溶血による免疫学的検査への影響~溶血コメント付加開始点決定の検討~

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