埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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臨床化学◎茂木 賢一郎1)、大崎 啓多1)、米花 巳由1)、田村 直樹1)、廣澤 恵子1)、齊藤 絢香1)、高平 治子1)、石井 秀松1)◎茂木 賢一郎1)、大崎 啓多1)、米花 巳由1)、田村 直樹1)、廣澤 恵子1)、齊藤 絢香1)、高平 治子1)、石井 秀松1)医療法人 クレモナ会 ティーエムクリニック1)医療法人 クレモナ会 ティーエムクリニック1)◎落合 仁美1)、佐藤 祥子1)、下元 怜美1)、加藤 鉄平1)、畠山 結那1)、小室 汰樹1)、太田 恵1)、猪浦 一人1)◎落合 仁美1)、佐藤 祥子1)、下元 怜美1)、加藤 鉄平1)、畠山 結那1)、小室 汰樹1)、太田 恵1)、猪浦 一人1)埼玉県済生会加須病院1)埼玉県済生会加須病院1)62HbA1c 検査における迅速報告への取り組み連絡先:048(533)8836【はじめに】近年,当院では異常ヘモグロビンを有する方が多く受診されている.その方々のHbA1c検査を行う際,既存の機器では測定不可能で迅速な結果報告ができなかった.その都度,機器メーカーに分析を依頼していた為,結果報告は最大で1週間程遅くなり後日報告となっていた.今回,その対策として異常ヘモグロビンHbE,HbS,HbC,HbDの場合,HbA1c測定可能となるロングモードを備えた最新の自動グリコヘモグロビン分析計を導入し,その有用性について検討したので報告する.【対象・方法】2023年 3月 の新機器導入時より,既存の機器 自動グリコヘモグロビン分析計 HLC-723 G11 (東ソー株式会社) でエラー表示となり測定不可能であった検体を新規導入機器HLC-723 GR01(東ソー株式会社)で再測定し,さらに以前と同様に東ソーに分析を依頼し検討した.同時に,異常ヘモグロビンの出現状況や種類も調べた.【結果】【はじめに】ビリルビンは,ヘモグロビンが網内系で処理されて生成する色素であり,血清総ビリルビン(T-Bil)と間接および直接(D-Bil)ビリルビン測定は,肝・胆道疾患の診断,黄疸,貧血の鑑別に用いられている.今回,T-Bilの測定値が身体所見と合わず異常高値を示した症例を経験したので報告する.【症例】80代女性.高血圧にて他院通院中,腰痛のため体動困難となる.定期採血で高蛋白血症,IgG高値,M蛋白を認めたため,当院紹介となった.  検査所見:TP12.7g/dL,ALB2.5g/dL,T-Bil9.20mg/dL,D-Bil 0.07mg/dL,AST17U/L,ALT7U/L,LDH145U/L,ALP53U/L,γGTP11U/L,WBC4.04×103/µL,RBC3.41×106/µL,Hb11.1g/dL,PLT 150×103/µL.【機器・試薬】機器:BioMajesty 6070G(日本電子株式会社),試薬:シカリキッドT-Bil・シカリキッドD-Bil (関東化学株式会社)【検討方法および結果】①血清情報の確認:T-Bil9.20mg/dL,分析器の黄疸判定は(-)と乖離がみられた.②生食を用いた希釈再測定:T-Bil 2倍希釈9.68mg/dL,入院後2回目採血:T-Bil原液8.64mg/dL,2倍希釈12.6mg/dL,5倍希釈6.78mg/dL既存のG11では測定不可能であった異常ヘモグロビンを有する検体でも直ちに測定できるので,検査当日に迅速に結果報告することが可能となった.しかし,ヘモグロビンを構成するグロビン鎖に通常とは異なるアミノ酸配列を持つ異常ヘモグロビンは種類が多く,新規のGR01 でも測定不可能な症例も存在した.【考察・結語】糖尿病人口が年々増加傾向にあるなかで,その診断及び長期の血糖コントロール指標としてHbA1cの測定は重要である.グローバル化が進み異常ヘモグロビンを有する割合が高い外国の方が増えてきた現状を考えると,既存の機器で測定不可能であった症例でも測定可能なHLC-723 GR01は,有用性の高い機器であると考えられる.異常ヘモグロビンを有する受診者すべてを測定するということはできなかったが,少しでも測定可能となったことは受診者一人一人へのサービスの向上を目指すうえで重要なことであると思われた.と測定値にばらつきがみられた.③反応タイムコースの確認:第1試薬と検体の混合直後に吸光度が上昇し,その後急激に低下する現象がみられた.濁りによる吸光度の変動が測定値へ誤差を与えているものと推測された.④免疫グロブリンの測定:IgG9415 mg/dL, IgA345 mg/dL, IgM48mg/dL.免疫電気泳動:IgG-λ型M蛋白が認められた. 【まとめ】今回,T-Bilが異常高値となった原因は,検体中にM蛋白が存在したことによる非特異反応と考えられる.M蛋白は,生化学検査の測定結果に影響を及ぼすことが知られており,異常反応を捉えるためには反応タイムコースの確認が有用である.また,黄疸判定は血清の色調を確認することで測定値との乖離にも気付くことができ,目視判定や分析器からの血清情報は結果を判断する材料の一助となる.日常的な反応タイムコースの確認と反応過程を理解することに加え,血清情報にも着目することで,正確なデータを臨床に報告することができると思われる.         総ビリルビンの測定値が異常高値を呈したIgG-λ型M蛋白血症の1症例連絡先:0480(53)3930臨床化学臨床化学化-5(9:30~10:55)化-6(9:30~10:55)EntryNo. 27EntryNo. 44HbA1c検査における迅速報告への取り組み総ビリルビンの測定値が異常高値を呈したIgG-λ型M蛋白血症の1症例

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