埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
63/116

臨床化学◎宮内 楓1)、北川 裕太朗1)、高田 友仁1)、内田 早耶1)、庄司 朋子1)、三志奈 賢司1)、武内 信一1)、前田 卓哉1)◎宮内 楓1)、北川 裕太朗1)、高田 友仁1)、内田 早耶1)、庄司 朋子1)、三志奈 賢司1)、武内 信一1)、前田 卓哉1)埼玉医科大学病院1)埼玉医科大学病院1)患者検体を用いた薬物吸着の影響◎小松 瑞貴1)、稲葉 拓郎1)、甲田 磨椰1)、石川 純也1)、小林 竜一1)◎小松 瑞貴1)、稲葉 拓郎1)、甲田 磨椰1)、石川 純也1)、小林 竜一1)株式会社アムル 上尾中央臨床検査研究所1)株式会社アムル 上尾中央臨床検査研究所1)【はじめに】血中薬物濃度測定では分離剤入り採血管を使うと分離剤への薬物吸着により偽低値を示すことがある.今回我々は,ナノピアTDM試薬(積水メディカル株式会社,以下積水)の基礎的検討と,分離剤入り採血管における薬物吸着の影響について検討を行う機会を得たので報告する.【方法】項目はバンコマイシン(以下VCM)とジゴキシン(以下Dig)の2項目を測定し,(1)併行精度(2)室内再現精度(3)希釈直線性(4)正確性(5)共存物質の影響(6)検出限界(7)定量限界(8)相関性(9)保存期間の検討(10)薬物吸着の影響(VCM:9件,Dig:6件)を行った.採血管はインセパックⅡ-D SMD750CG(積水,以下A),同SMD750CQ(積水,以下B),対照としてベノジェクトⅡ真空採血管VP-P075K(テルモ株式会社,以下対照)を使用した. 【結果】(1)管理試料を用いて20回測定した結果,CV%値は全て5%以内であった.(2)管理試料を用いて7日間測定した結果,総変動係数は全て5%以内であった.(3)STDの高濃度試料を10段階希釈した結果,VCMは95.0µg/mL,Digは5.0ng/mLまで直線性を認めた.(4)全て標準物質の表示値±5%【はじめに】偽性高カリウム (K) 血症は,血清K値が血漿K値より0.4 mEq/L以上高値を示す場合と定義される.その要因の一つとして血小板数増加症が挙げられ,血液の凝固過程で多数の血小板が崩壊し細胞内からKが大量に放出されることに起因する.偽性高K血症は不適切な治療につながる恐れがあり,対策が必要である.我々は,臨床への正確なK値の報告を目的とした運用方法の見直し,および検査方法の検証を行ったので報告する.【対象・方法】2022年12月よりヘパリン採血管にてK値(以下Kヘパリン) を測定できる依頼方法を構築し,運用を開始した.2022年12月から2023年7月までにKヘパリンの依頼があった8名34件を対象とし,血清K値,血漿K値,血小板数の測定値を比較した.新しい運用方法として,日勤帯のみ血小板数が1,000×10³/μL以上で血清K値が高値の場合は,担当医に偽性高K血症の可能性を説明し,Kヘパリンの追加採血を依頼し,その対応を記録した.【結果】血清K値の中央値は5.3 mEq/L (Interquartile Range[IQR]:4.9 - 5.8),血漿K値の中央値は4.5 mEq/L (IQR: 以内であった.(5)ビリルビンF・C,溶血ヘモグロビン,乳び,RFの影響は認められなかった.(6)±2.6SD法による検出限界はVCMは0.4µg/mL,Digは0.2ng/mLであった.(7)専用試料を10段階希釈した結果,VCMは0.9µg/mL,Digは0.2ng/mLであった.(8)従来法との相関性はVCMでN=50,r=0.9963,y=0.9250x+0.1953,DigはN=43,r=0.9961,y=1.2507x+0.0754であった.(9) 4℃で14日間保存し経時的変動を調査した結果,すべて試薬正確性の範囲内であった. (10) Digにおいて1件,採血管Bとの組み合わせで試薬正確性15%を越えた.実測値はB:0.44ng/mL,対照:0.62ng/mLであった.【考察】薬物吸着の影響において試薬正確性を越えたものについては,値が小さいことによる相対的な変動と考えられる.しかし他の検体においても対照と比較し減少傾向であったため分離剤への吸着の可能性も示唆された.【結語】ナノピアTDM試薬の基礎的検討は良好な結果であった.薬物吸着の影響では一部分離剤への吸着の可能性を認めた為,分離剤入り採血管の使用をする際は測定対象の薬剤に注意が必要である. 連絡先:048-912-3112(直通)614.0 - 4.7), ΔK値 (血清K-血漿K) の中央値は0.7 mEq/L (IQR:0.5 - 1.1),血小板数中央値は568.5×10³/µL (IQR:484.8 - 850.0×10³) であった.高K血症とされる血清K値5.5 mEq/L以上では,すべてΔK値0.4 mEq/L以上となり偽性高カリウム血症と診断された. ΔK値と血小板数の相関は y= 0.001x + 0.162 (r = 0.872) となった.血小板数が1,000×10³/μL以上で血清K値が高値であった報告25例中4例で,Kヘパリンの追加採血が行われた.【考察】血小板500×10³/µL程度でも偽性高K血症となることが示唆された.臨床症状と合わない血清K値の上昇がみられた場合は注意が必要である.特に,高K血症の鑑別には血漿K値の測定は不必要な治療が行われないためにも有意義である.【結語】今回の運用変更及び検証結果は検査部から臨床へのサービス向上につながる.しかしながら,再採血が困難な患者や依頼科によっては連絡が不要な場合もあり,今後さらなる対応方法の改善と検証を行っていく必要があると考える. 連絡先:049-276-1434血中薬物濃度測定試薬の基礎的検討と血清分離剤入り採血管の検討血小板数増多による偽性高カリウム血症の対策と検証臨床化学臨床化学患者検体を用いた薬物吸着の影響血小板数増多による偽性高カリウム血症の対策と検証化-3(9:30~10:55)血中薬物濃度測定試薬の基礎的検討と血清分離剤入り採血管の検討化-4(9:30~10:55)EntryNo. 21EntryNo. 23

元のページ  ../index.html#63

このブックを見る