埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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53入職してから生化学検査一筋だった.当施設は検査・検診部門を有する医師会共同利用施設の「診療所」であるが,外来や入院は行っていない.よって,患者さんは医療機関から紹介されたCTや内視鏡検査を受けに来るものだけであり,検査部の日々の仕事は医療機関から集められた検体の検査となる.測定する方は,今日は検体多かった!今日は少なかった!異常値があったから報告!考え方によっては,患者さんと接することが無いので極めて淡々とした毎日なのかもしれない.しかし,「検体の陰には病に苦しむ患者さんがいる」私を雇ってくれた技師長がいつも言っていたことである.考えようによっては,一日数百名の検体を検査しているのだから,顔も解らない方々でも毎日数百名の出会いがあるわけだ.私は,生化学検査で沢山の方の潜在的な異常を見つけて報告してきた.大学病院で検査入院しても解らなかったようなことも見つけて,多くの主治医(提出医)から感謝された.しかし,患者さんから直接感謝されたことは一度もない.あ…一回だけ,「主治医に御礼したら,これは検査してくれた神山って人が見つけてくれたんだよ」と医師が言ってくれて,入院前に直接電話くださった方がいた.とても嬉しかったけど,高Ca血症で,LDを追加したら高く,血算検体で像を引いてみたら,私でも解るATLだったので,とても複雑な思いがしたことを覚えている.依頼書と共に提出されるたった一本の検体でも,それはヒトから採られたものであり,患者さんの分身である.検体の数が出会いの数!今もそう考えて仕事をしている.【さいごに】 皆は,これからもっともっと勉強して臨床検査技師になるはずだ.国家試験の合格は学生としてのゴールであるが,臨床検査技師としてはスタートである.今は,お金を払って勉強しているが,就職したらお金を貰いながら勉強するのである.私たちの仕事に「ゴール」はない.もしあるとするなら,それは人生の幕を閉じる時だと考える. 患者さんは病院や医師を選ぶことはできても,臨床検査技師を選ぶことはできない.できることなら,患者さんから選ばれる臨床検査技師になってほしい.いや,なろう!そのためには人との出会いを大切にしながら生涯勉強!【おまけ】 人との出会い…一人くらい名前出さないとまずいかな? 平成15年に埼玉県が担当で第52回日本医学検査学会(全国学会)が開催された.その時の実行委員(広報部)に,背が高くてとても礼儀正しいお兄ちゃんが居た.とにかく動きが良く,やるべきことを的確にこなし,信頼が厚い男だった.できれば一緒に理事として働きたいなと思っていたら,その数年後に理事を引き受けてくれた.期待通りに面倒くさい理事業を的確にこなし,特に組織論を語らせれば右に出るものはいない位しっかりした考えを持っていた.理事会後の飲み会やその他の飲み会も必ず参加して,先ずは大ジョッキを一気飲みして,延々とビールを飲み続ける豪傑だった.ある時,千葉で会議があり,二日酔いの朝にちょっと飲んでこうかとなって朝から昼過ぎまで二人で飲んで,もう飲めん!と思ったら帰りの駅でストロングの500を買ってきて〆ですって一気飲み…とてもかなわないと思った.彼は,部長,事務局長,副会長まで勤め,次は会長かと思っていたら,あっさり辞任してしまった.しかし,きちんと男のけじめとして,本誌の扉に学会長としてのあいさつ文を書いている.矢作強志さん!君と出会えたことも私の大きな財産だよ!連絡先:048-824-3701(直通)

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