埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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50 その後、ABO式血液型に加え、識別能力を向上させるために新たな個人識別法としてDNA型鑑定が導入されました。本県科捜研において、DNA型鑑定が導入されたのは、1994年からです。導入当時のDNA型鑑定法は、検査に時間を要するため、一部の事件のみに活用され、ほとんどの事件についてはABO式血液型が行われていました。その後10年の間にDNA型鑑定法が改良され、個人識別能力の飛躍的な向上と鑑定時間短縮が実現したことから、個人識別法としては、DNA型鑑定が主流となりました。私も2008年から、DNA型鑑定業務に従事しています。科捜研の業務では、扱う鑑定資料が単一ではなく、それぞれ、質も量も異なるため、置かれた環境などを想像し、その鑑定資料に合わせて、最良の結果を得られるよう工夫することに面白さを感じています。3 おわりに 法医鑑定業務は、臨床検査のさまざまな検査技術を応用することができる仕事であり、私が学生時代に学んできた幅広い医学知識は業務に役立っています。科捜研は、臨床検査技師が活躍できる職場のひとつであることは間違いありません。 近年、裁判員裁判制度が始まったことで、裁判における科学的、客観的証拠の重要性が増し、証人出廷する機会が増えました。鑑定結果は、人の人生を左右する重大な責任が伴います。そのため、鑑定資料の取り違え防止や正確な鑑定が必須となります。このことは、検査結果が人の命を左右する臨床検査と非常に似ていると思います。皆さんも、日々検体の取り違えや正確な検査に取り組んでいるかと思います。お互い、ミスの許されない仕事ですが、緊張感を持って業務に取り組んでまいりましょう。どうかの検査を行い、血液であれば、ヒトの血液かどうかの検査を行います。この検査には、臨床検査において一般的に用いられている便潜血反応キットを使用して、ヒトの血液であることを証明しています。このキットは、臨床検査の実習でも使ったことがあり、勤務したばかりの自分にとって身近に感じたことを覚えています。 また、たばこの吸い殻やコップの飲み口などの唾液様のものは、唾液中に多く含まれている酵素「アミラーゼ」を指標とした検査のために、ブルースターチ入りのアガロース平板を作製したり(生化学や微生物学)、性犯罪現場の精液様のものは、塗抹標本を作製、鏡検して形態的に精子を検索したり、前立腺特異タンパク質であるPSAを指標とした検出キットを使用したり(病理学、生化学)など、臨床検査の知識や基本的な技術を活用することで各種検査に役立ちます。 鑑定資料が、ヒトに由来するものであれば、個人識別法である血液型鑑定やDNA型鑑定を行い、それが事件関係者のうち誰のものなのか異同識別します。私が、採用された1992年頃、科捜研での個人識別法としては、ABO式血液型検査が主流でした。ABO式血液型は、輸血や臓器移植など医療面で重要な役割を果たしていますが、当時は犯罪捜査にも活用されていました。ABO式血液型の型物質は、赤血球膜上に存在するほか、体液や組織などヒトの体ほぼ全部に存在するので、血液のほか、体液(唾液、精液)や組織(爪、毛髪)について、免疫学の抗原抗体反応の原理を応用した手法でABO式血液型検査を行います。血液のABO式血液型検査、いわゆるオモテ試験、ウラ試験しか知らなかったので、科捜研に勤務して、この血液型検査の手法を知ったときは、なるほどと納得し、「すごい!」と感動しました。学会企画講演3

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