43<抄録>はじめに理化学研究所で始まった本格的な腸内常在菌研究培養を介さない手法による腸内常在菌解析の進展腸内常在菌データベース構築による健康管理・疾病予防 21世紀は腸内常在菌の構造と機能が全面的に解明され、それを人類は自らの健康管理に応用する時代と言えます。そして、国民の中に「健康長寿は腸を制すること」との認識も拡がってきています。さらに、腸内常在菌の構成解析に留まらず、生活習慣、食生活などとの関連についても究明され、本分野の進展について述べてみたいと思います。 ヒト腸内常在菌研究のスタートした1960年代、理化学研究所主任研究員であった光岡知足博士(東大名誉教授)が独学で考案した非選択・選択培地(10種類)や生育に高い嫌気環境を要求する腸内常在菌を網羅的に培養可能にした“プレートインボトル法”を開発し、培養による検索法(光岡の法)確立により、腸内常在菌と宿主の関係解明が飛躍的に進展したのです。 1980年代になると、新規の腸内常在菌種同定システムを独自に考案・開発し、腸内常在菌を菌群(属)レベルから菌種レベルでの検索を展開させました。その結果(2)は腸内常在菌の大部分が偏性嫌気性菌であり、ヒト腸内に常在する培養可能な細菌種は約400種近いことを明らかにしたのです。これらの研究成果により菌群レベルでしか解明しえなかった腸内常在菌の生体がより詳細に把握されるようになりました。 1990年代以降,16S rRNA遺伝子の塩基配列を基にした菌種レベルでの系統分類法が確立し、様々な細菌種の遺伝子配列データが蓄積され、だれもが容易に微生物研究に用いることが可能となってきました。そして、それらを用いて培養を介さない手法による腸内常在菌の多様性解析が競いあうように進展される中(3,4)で、我々(5-7)はどのような腸内常在菌が培養可能で、培養困難かを検索することにより、より正確な腸内常在菌の生態に迫る必要があるため、高度な嫌気培養法と並行させながら、解析する事が肝要であると指摘してまいりました。このように、遺伝子を介した手法の発展により,多様な微生物叢を数値として把握する分子生物学的手法(8, 9)を用いて、大便から直接得られた腸内常在菌由来の遺伝子の解析が可能としたのです。さらに、近年では次世代型シークエンサーの普及により、腸内常在菌研究が飛躍的拡大されています。 2009年より、理化学研究所と産業界からの強力なバックアップにより「個人別生理・代謝機能を計測・評価する技術システムの開発」に基づいて腸内常在菌データベース構築を開始しました。腸内常在菌解析と生活特性を調査し、完
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