埼臨技会誌 Vol.70 補冊 2023_電子ブック
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○増川 陽大(ベックマン・コールター株式会社 学術クリニカルアプリケーションズ部)99 PSAは、1979年Wangらによって発見された分子量34,000の糖蛋白質であり、237アミノ酸配列により構成されている。またPSAは、前立腺の腺上皮細胞にて分泌され、前立腺疾患において血中に漏れ出てくることから、最も優れた血中前立腺疾患マーカーである。 血中マーカーとしてのPSA測定の歴史は、Tandem-R PSAキット(Hybritech社、現 ベックマン・コールター社)が1986年に世界初のPSA測定キットとしてFDA(米国食品医薬品局)承認されたことから始まった。臨床使用としては、1994年Dr.Catalonaらがベックマン・コールター社製PSA測定(Tandem-R PSA)による前立腺癌カットオフ値4.0ng/mLを発表した。このカットオフ値4.0ng/mLは、臨床判断において現在も全く揺らぐことのない前立腺癌の判断指標となっている。前立腺から血中に漏れ出たPSAの存在形態は、①単独で遊離している遊離型PSA(以下フリーPSA)② α1-アンチキモトリプシンと結合し複合体を形成するPSA-ACT③ α2-マクログロブリンと結合し複合体を形成するPSA-A2Mの3種である。この3種の形態のうち、抗体を用いて測定することが可能な形態は①および②であり、③は全形態中1〜2%であるため、測定が不可能でも問題がないとされている。すなわち総PSA(以下トータルPSA)は、①および②を測定することである。 血中前立腺疾患マーカーとして非常に有用性の高い総PSA(以下 トータルPSA)は、検診/診療(スクリーニング)や治療指標(モニタリング)として用いられているが、役割として完全とはいえない。それは、前立腺癌鑑別において明確な指標になりえない点である。トータルPSA 4.0〜10.0ng/mLのグレーゾーンにおいて癌の可能性は平均25%であり、前立腺生検を実施した場合は4人中3人が無駄な生検を実施したことになる。 そこで前立腺癌診断効率を上昇させるため、トータルPSAを上回る新規マーカーが待ち望まれている。その中で現在、臨床検査に用いられている検査は、フリーPSAをトータルPSAで割った遊離型PSA比(F/T比)等があるが、臨床診断の要求を満たすには至っていない。 このような状況において、我々は前立腺癌でより多く分泌されるPSA前駆体であるproPSAに着目した。proPSAは数種存在するが、その中でPSAよりもアミノ酸配列が2個多い[-2]proPSAの測定キット(以下p2PSA)の開発に着手し、完成した。 p2PSAの評価はトータルPSAのように測定値で行うのではなく、p2PSAを含めた所定の計算式より算出されるプロステートヘルスインデックス(以下 phi)として評価を行う。 phiは国内外において各種研究や医師主導型多施設共同研究が実施されおり、それらの結果は、前立腺癌診断において現在利用されている臨床検査項目よりも優れた癌診断性能を示している。2020年に体外診断用医薬品としての承認を取得し、2021年11月には新規保険適用が認められたこともあり、今後、臨床医がさらに的確な判断をする上で重要な情報になることを期待している。 当日は、PSA測定によって得られた成果と問題点、及び新規バイオマーカー[-2]proPSAを用いたphiの有用性について発表を行う。資料請求先:0120(826)777CM演題-2免疫血清CM-2(第4会場 601号室 9:50~10:05)新規バイオマーカーproPSAを用いたプロステートヘルスインデックス(phi)の有用性

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