埼臨技会誌 Vol.68
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微生物◎高村 さをり1)、千葉 明日香1)、神成 千晴1)、松内 萌1)、稲垣 理絵1)、前田 友子1)、石井 直美1)、◎高村 さをり1)、千葉 明日香1)、神成 千晴1)、松内 萌1)、稲垣 理絵1)、前田 友子1)、石井 直美1)、渋谷 賢一1)渋谷 賢一1)越谷市立病院1)越谷市立病院1)◎米谷 美月1)、橋本 亜美1)、斉藤 はるか1)、本橋 涼1)、松井 菜摘1)、奥住 捷子2)、菊池 裕子1)◎米谷 美月1)、橋本 亜美1)、斉藤 はるか1)、本橋 涼1)、松井 菜摘1)、奥住 捷子2)、菊池 裕子1)医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院1)、北里大学北里生命科学研究所2)医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院1)、北里大学北里生命科学研究所2)97influenzaeは,5歳以下の小児に化無莢膜型Haemophilus influenzaeによる髄膜炎の1症例ABPC/SBTからCTX+CLDMへ抗菌薬が変更となった.その後,残る嫌気ボトル1本,入院時提出の咽頭培養からH.influenzaeが検出された.またPCR検査の結果,無莢膜型のH.influenzaeであることが判明した.【まとめ】本症例は5類感染症であるH.influenzaeによる侵襲性感染症であった. 2013年から Hibワクチンの定期接種が開始されたことにより,近年ではH.influenzae莢膜b型株による侵襲性感染症は激減している.しかし今回は無莢膜型による感染症であり,急速な重症化の可能性もあった.そのため迅速な治療が求められるが,血液培養陽性時及び菌名同定時に医師への連絡や電子カルテへの記事入力を行うことで迅速に追加検査や抗菌薬の変更が可能となった.また,患者背景を把握することで鏡検の段階でHaemophilus属を疑って検査を進めることができ,より早い診断に繋がった.患者背景を把握し,臨床側と連携しながら検査を進めていくことの重要性を再認識した.【はじめに】Haemophilus influenzaeはa~fの6種類の抗原型をもつ莢膜型と莢膜を持たない無莢膜型(NTHi)に分類される.莢膜型の中でもb型(Hib)は病原性が強く,乳幼児の髄膜炎の原因菌であるが,NTHiの病原性はそれほど強くないとされている.今回NTHiによる副鼻腔炎から髄膜炎,敗血症,DICに至った症例を経験したので報告する.【症例】3歳女児.Hibワクチン接種済.主訴40℃発熱.受診直後は意識清明であったが,徐々に項部硬直及び意識レベル低下を認め緊急入院した.【入院時検査】WBC 46.5×10³ /µL,CRP 36.98 mg/dL,血糖32mg/dL,FDP 283.3 µg/dL,D-D 82.4 µg/dL,髄液細胞数85,050 /µL(多形核球78,363 /µL),髄液蛋白160 mg/dL,髄液糖5 mg/dL,CTにて副鼻腔炎を疑う所見を認めた.【細菌学的検査】髄液塗抹検査でグラム陰性短桿菌を認めたため,髄膜炎起炎菌莢膜多糖抗原検査を実施した.結果はHibを含めすべて陰性であったが,染色形態よりH.influenzaeが疑わしいことを臨床に報告,CTX+VCMからCTX+MEPMに変更された.翌日チョコレート寒天培地【はじめに】Haemophilus 膿性髄膜炎を起こし,そのほか喉頭蓋炎,肺炎,菌血症など種々の化膿性疾患を起こすことが知られている.今回,歯ブラシ外傷によってH.influenzaeによる菌血症を引き起こした1例を経験したので報告する.【症例】3歳男児.歯ブラシにて口腔内を受傷.翌日39.1℃の発熱を認めたため近医を受診し,上気道炎と診断された.さらに翌日,近医耳鼻科を受診.歯ブラシ外傷疑いで当院紹介され,精査加療目的で入院となった.入院時体温は36.8℃であり,口腔内に明らかな傷や感染所見は認めなかった.Hibワクチンは接種済みであった.【結果】第4病日に入院時提出の血液培養で好気ボトル1本からグラム陰性桿菌が検出された.鏡検時に菌の形状が短桿菌であったこと,また患者が小児であり口腔内からの感染が疑われたことからHaemophilus属を疑い,同定・感受性検査を行った.同日,頸部造影CTにて左扁桃下極から舌根部にかけての膿瘍形成が確認された.翌日,血液培養からBLNARが同定され,入院時より投与されていたのみにツヤのある透明なコロニーが発育した.X・V因子要求性,溶血性の検査及びライサスS4での薬剤感受性検査を行った.また,血液培養2セットが陽転し,Multiplex PCRの血液培養パネル(FilmArray)にてH.influenzaeを検出.翌々日,髄液由来株はH.influenzae(BLNAS)と判明し,CTX単剤に変更された.後日,外部委託にて髄液由来株の莢膜型別検査を実施し,NT(non-typable)となった.【まとめ】当検査室日当直マニュアルでは,細菌性髄膜炎を疑うような所見があった場合,細菌検査室スタッフが対応する規定にしており,今回はそのマニュアルが活かされた休日の症例であった.迅速な髄液塗抹検査の結果報告により,適切な治療薬への変更を促すことができ,患児は入院22日後に軽快退院した.近年,Hibワクチンの普及に伴い,Hibによる侵襲性感染症は激減しているため,Hib以外のH.influenzaeも念頭におき,検査・報告する必要がある.       連絡先048-965-2221(内線2255)連絡先:048-773-1111(内線:2417)微-4微-5微生物EntryNo. 92微生物EntryNo. 54無莢膜型 Haemophilus influenzae による髄膜炎の1症例小児の歯ブラシ外傷により Haemophilus influenzae小児の歯ブラシ外傷によりHaemophilus influenzae菌血症を引き起こした一例菌血症を引き起こした一例

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