臨床化学輸 血◎廣田 渉1)、豊田 将平1)、山岸 均1)、吉田 翔平1)、佐久間 信之1)、牧 俊一1)、長岡 勇吾1)、岡本 直子1)◎廣田 渉1)、豊田 将平1)、山岸 均1)、吉田 翔平1)、佐久間 信之1)、牧 俊一1)、長岡 勇吾1)、岡本 直子1)さいたま赤十字病院1)さいたま赤十字病院1)◎稲葉 拓郎1)、石川 純也1)、佐久間 仁美1)、土井 尚1)◎稲葉 拓郎1)、石川 純也1)、佐久間 仁美1)、土井 尚1)株式会社アムル 上尾中央臨床検査研究所1)株式会社アムル 上尾中央臨床検査研究所1)87母児間輸血症候群(FMT)により血液型判定に苦慮した一例血中エラスターゼ1測定試薬の基礎的検討と関連項目の比較検討【はじめに】ABO血液型検査のオモテ検査において部分凝集をきたす原因として,異型輸血,亜型,キメラ・モザイクなどが知られている.今回,母児間輸血症候群(FMT)により胎児の血液が母体へ流入し,オモテ検査にて部分凝集を示した症例を経験したので報告する.【症例】妊娠33週5日の30歳代女性.胎動が感じられないため,周産期管理を目的に当院へ搬送となった.胎児高度貧血が疑われたため,帝王切開にて出産となった.【結果および考察】入院時,全自動輸血検査装置ORTHO VISION(Ortho Clinical Diagnostics社,以下VISION)にて血液型検査を実施したところ,オモテ検査で抗A試薬に対して部分凝集が認められ,ウラ検査ではA1血球3+,B血球3+となり判定保留となった.用手法では,オモテ検査とウラ検査ともにO型の判定となり,結果に乖離が生じた.主治医に患者情報を確認したところ,前医の結果でO型との情報を得た.また,新生児のHb:3g/dL台と判明し,胎児血液が母体に流入していた可能性を考えた.母体のHbFの測定を行うと,HbF:2.0%であったため,FMTが疑われた.【はじめに】血中エラスターゼ1(以下IRE1)はエラスチンを水解する唯一のセリンプロテアーゼで,膵臓に多く存在する.血中のIRE1は膵障害時に上昇し,各種の膵疾患の診断に利用されている.今回我々は,イアトロIRE1Ⅱ(株式会社LSIメディエンス)において基礎的検討と関連項目との比較検討を行う機会を得たので報告する.【方法】(1)併行精度(2)室内再現精度(3)希釈直線性(4)共存物質の影響 (5)検出限界(6)定量限界(7)再委託先との相関性(8) IRE1と各項目の相関性 (9) IRE1と各項目の比較検討を行った.項目はAMY,CEA,CA19-9の3項目を測定した.【結果】(1)2濃度の専用コントロールとプール血清を用い20回測定を行った結果,CV%値は全て5%以内であった.(2)2濃度の専用コントロールを用い25日間測定した結果,総合変動係数は全て5%以内であった.(3)専用試料を10段階希釈し測定を行い4140ng/dLまで直線性を認めた.(4)干渉チェックAプラスを用いた結果,影響は見られなかった.(5)専用試料を10段階希釈し,10回測定を行った結果,±2.6SD法による検出限界は24ng/dLであった.(6)専用試料を20段新生児の血液型はA型,母体のA型転移酵素活性は陰性であったことから,母体の血液型をO型と仮定すると抗A試薬にみられた部分凝集は胎児の赤血球による反応として矛盾しない.HbFを含む胎児の赤血球は比重が高く,検査前処理の遠心分離により下部へ沈む.VISIONでは血球のサンプリングを検体最下部より行うため,胎児の血球が多くサンプリングされ部分凝集となったが,用手法では胎児の血球が含まれない血球沈渣上部を用いて検査したため,結果に乖離が生じた.検体遠心後,血球沈渣上部と下部を分離し,それぞれで抗A吸着解離試験を行うと下部のみ陽性であったことからも,胎児のA型血球が血球沈渣下部に集まっていたことの裏付けとなった.以上より部分凝集の原因は胎児血液であり,母体の血液型はO型と確定した.【まとめ】FMTによる胎児血液の流入に加え,VISIONの装置特性も考慮した上で検査を進めることで血液型を確定することができた.血液型検査で予期せぬ反応が出た場合,患者情報や分析装置の特性も重要な判断材料となり得る.連絡先048-852-1111(内線:20353)階希釈した定量限界は33ng/dLであった.(7)再委託先との相関性を血清100件実施した結果,r=0.9951,y=0.9740x-13.9087であった.(8)IRE1と各項目の相関性を血清50件実施した結果,AMY:r=0.8425,y=0.1105x+70.3512,CEA:r=0.0315,y=0.0076x+0.5827,CA19-9:r=0.5395,y=0.2823x-14.0423,であった.(9)(8)で測定した血清50件でIRE1,CA19-9,CEA,AMYの何れかが異常値の14件の内IRE1高値は9件であった.IRE1高値9件の内,AMY高値は5件,CEA高値は1件,CA19-9高値は6件と,異常値の項目に乖離があった.【考察】比較検討結果において,CA19-9とIRE1は膵癌の上昇時期の違いであり,まずIRE1の上昇がありその後CA19-9が上昇し,AMYとIRE1は血中半減期が関係し,IRE1はAMYより長い事が乖離の原因と思われる.【結語】イアトロIRE1Ⅱは,今回の検討において良好な結果が得られた.再委託先の相関性も良好であった為,日常の臨床検査試薬として有用であることが分かった.また,IRE1は膵癌の早期発見,膵炎の見逃しリスク軽減が期待できる事が分かった. 連絡先:042-912-3112(直通)輸-7化-1血中エラスターゼ1測定試薬の基礎的検討と関連項目の比較検討輸血EntryNo. 51臨床化学母児間輸血症候群(FMT)により血液型判定に苦慮した一例EntryNo. 1
元のページ ../index.html#89