埼臨技会誌 Vol.68
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1件は詳細不明であった.②静置後30分から時間経過に伴って乳酸値は上昇,pH値は低下したが,48時間経過してもpH値は至適範囲内であった.【考察】製剤を室温静置保存すると,時間の経過とともにpH値が低下した.これは,製剤内外のガス交換が有効に働かず,嫌気性解糖系の作動により乳酸が産生されたことが原因と考える.pH値の低下は血小板寿命の短縮や輸血効果の低下,細菌増殖などのリスクをもたらすとの報告がある.pH値は静置後30分から低下したため,製剤は出庫後速やかに投与開始すべきであり,当院では平均約9分と円滑に開始されていた.また約92%の製剤が3時間以内に輸血され,至適pH値内で輸血実施ができていると確認できた.【結語】検討結果より,平均約9分で投与が開始され, 3時間以内に完了していることで,出庫からの時間経過による製剤へもたらす影響は少ないと思われる.また当院では,製剤出庫後にタイマーを設置し,30分以内に投与開始されているか確認を実施しており,製剤の品質確保に努めている.            ◎上手 沙織1)、菅原 慎也1)、東 直希1)、西川 朋美1)、長谷川 卓也1)◎上手 沙織1)、菅原 慎也1)、東 直希1)、西川 朋美1)、長谷川 卓也1)医療法人社団協友会 八潮中央総合病院1)医療法人社団協友会 八潮中央総合病院1)◎佐藤 由佳1)、本多 恵理佳1)、高須賀 聖子1)、中田 正人1)◎佐藤 由佳1)、本多 恵理佳1)、高須賀 聖子1)、中田 正人1)上尾中央医科グループ 医療法人社団協友会 彩の国東大宮メディカルセンター1)上尾中央医科グループ 医療法人社団協友会 彩の国東大宮メディカルセンター1)86当院における赤血球不規則抗体保有カードの現状出庫からの時間経過が、血小板製剤にもたらす影響合は,担当看護師と事前打ち合わせを行った.【結果】導入から現在までの発行件数は17件.抗体の内訳は,抗Eが最も多く9件であり,その他抗c 2件,抗Lea 2件,抗Fyb 2件,抗M 1件,抗Dia 1件であった.17件中,臨床検査技師が検査説明を行ったのは14件,医師から説明を行ったのは2件,看護師から説明を行ったのは1件だった.発行から検査説明のほとんどを同じ輸血担当技師が行っていた.15件は術前検査で発見されたため,不規則抗体カードの説明は術後から退院までの期間に行った.【考察】患者が退院するまでに不規則抗体カードを渡し,説明を行うためには,他の部署や職種との連携が不可欠である.説明の多くを臨床検査技師が担った背景には,以前より検査結果の解釈について,医師や看護師から質問が多くみられ,検査の説明を臨床検査技師が行うことが受け入れられたと考えられる.【結語】今後は1名の検査技師に委ねるのではなく,検査科職員全体にこの活動を広めていきたい.連絡先:048-996-1131内線(190)【はじめに】厚生労働省から出されている「輸血療法の実施に関する指針」では,「37℃で反応する臨床的に意義(副作用を起こす可能性)のある不規則抗体が検出された場合には,患者にその旨を記載したカードを常時携帯させることが望ましい.」とされており,不規則抗体カードを多くの施設で活用することで,遅発性溶血性副作用の防止に役立てていくことを目的としている.埼玉県では,埼玉県合同輸血委員会および日本赤十字社で監修した「埼玉県内共用の赤血球不規則抗体保有カード」(以下,不規則抗体カード)が作成され,2021年6月現在,県内42の施設で運用されている.当院では2018年に導入を行い,不規則抗体カード発行の現状について報告する.【対象および方法】2018年6月から2021年6月までの期間に行った不規則抗体同定検査数2,592件中(同一患者の検査を含む),臨床的意義のある抗体を同定した患者17名に対し,不規則抗体カードを発行した.検査結果を医師に連絡し,患者への結果説明の際に検査技師より説明を行わせていただけるよう願い出た.患者本人ではなく家族に説明を行う場【はじめに】血小板製剤(以下,製剤)のpH値は,製剤の品質管理の指標の1つである.製剤保存中は振盪を行い,pH値を6.5〜7.5に維持する必要がある.製剤の使用は,『血液製剤の使用指針』に「血小板濃厚液はできるだけ速やかに輸血する」,「血液バッグ開封後は6時間以内に輸血を完了する」とある.今回,当院で使用した製剤について,出庫からの時間経過がもたらす影響をpH値を指標に検討した.【方法】①出庫から投与完了までの時間経過の分析:2020年1月~6月に当院で輸血した製剤218本を対象に,投与開始~投与完了までの時間を電子カルテより分析.②製剤の乳酸値とpH値を経時的に測定:有効期限内の製剤のセグメントチューブを使用.振盪保存直後の静置0分と,静置後30分,3,6,12,24,48時間について,血液ガス分析装置を用いて測定した.対照は振盪保存下での測定値とした.【結果】①製剤の時間経過は出庫から投与開始までが約9分,投与完了までが約2時間18分.また約92%の製剤が3時間以内に投与完了していた.指針の6時間以上を超えた製剤は3件認め(最長22時間21分),2件は輸血記録への不備,連絡先:048-665-6114輸-5輸-6出庫からの時間経過が、血小板製剤にもたらす影響当院における赤血球不規則抗体保有カードの現状輸血EntryNo. 70輸血EntryNo. 73

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