埼臨技会誌 Vol.68
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血 液◎渋谷 佳穂1)、小澤 史佳1)、小牧 美佑季1)、坂中 須美子1)、伊村 浩良1)◎渋谷 佳穂1)、小澤 史佳1)、小牧 美佑季1)、坂中 須美子1)、伊村 浩良1)地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立小児医療センター1)地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立小児医療センター1)◎吉野 亜美1)、河野 有佑1)、水谷 美菜子1)、森田 淑子1)、橋爪 英文1)、関戸 定彦1)、長岡 勇吾1)、岡本 直子1)◎吉野 亜美1)、河野 有佑1)、水谷 美菜子1)、森田 淑子1)、橋爪 英文1)、関戸 定彦1)、長岡 勇吾1)、岡本 直子1)さいたま赤十字病院1)さいたま赤十字病院1)81【はじめに】ゴーシェ病は,グルコセレブロシダーゼ(GBA)の遺伝子変異により,GBA活性が低下あるいは欠損するライソゾーム病の一種である.骨髄検査の有核細胞数カウントの際に,ゴーシェ細胞の存在が疑われた症例を経験したので報告する.【症例】1才10か月女児.20XX年2月に他院での臍ヘルニアの術前検査にて血小板減少を指摘された.同年7月頃から紫斑が出現し,8月頃に肝脾腫,血小板減少,貧血が見られ,精査目的で当院に紹介となった.【入院時検査所見】LD(JSCC)282U/L,フェリチン187.6ng/mL,*ACE121U/L,WBC6.29×109/L(Seg29.1%,Band2.7%,Lym60.9%,Mono7.0%,Eo1.8%,AT-Ly1.8%),RBC3.26×1012/L,Hb8.0g/dL,Ht26.3%,MCV80.7fL,PLT43×109/L,Ret59.7%.*入院1か月後〈骨髄検査〉左側腸骨はdry tapであったため,右側腸骨で検査を行った.チュルク液による有核細胞数カウントで,巨核球との判別に悩む多数の空胞を有する細胞が見られた.【はじめに】末梢血液標本の観察は,疾病の診断・病態の経過観察のために行われる検査法のひとつであり,ごく少量の血液により非常に多くの情報が得られる.当院では末梢血液像検査において,芽球や異常細胞の見逃し防止を目的とし,目視と自動血球分類装置(シスメックス株式会社:DI-60)を併用して検査を実施している.DI-60で分類した標本については,必要に応じて技師の目視鏡検を行っている.今回我々は,血球測定およびIPメッセージにおいて大きな問題がなかったが,好酸球0カウントに起因する血液標本において,DI-60でAtyp.Lyに分類された細胞確認を目視鏡検で行い,Other分類として報告した患者が,その後の骨髄検査にてB-ALLと診断された症例を経験したので報告する.【症例】19歳男性,左股関節痛のため前医受診.骨系統疾患もしくは腸骨骨髄炎疑いにて当院整形外科紹介となった.【検査所見及び経過】初診時採血結果はWBC2920/μL, RBC329×104/μL,Hb10.3g/dL,PLT25.2×104/μL,CRP8.42mg/dL,LDH127U/L.DI-60による血球分類により〈骨髄像所見〉 3系統ともに各成熟段階の細胞を認めた.塗抹の引き終わりに,有核細胞数カウント時に見られた多数の空胞を有する細胞が観察された.特殊染色では非特異的Est染色陰性,Acp染色強陽性であったことから,形態的特徴と合わせてゴーシェ細胞と判断された. 【経過】確定診断のためのGBA酵素活性検査が追加実施された.リンパ球GBA酵素活性は26.9%であった.ゴーシェ病では,GBA酵素活性が10%以下に低下していることが多いが,本症例は活性値が10%以上のため,さらに遺伝子検査が追加実施され,GBA遺伝子のL444P/F213I変異を認めた.発症時期や神経症状の有無からゴーシェ病Ⅰ型と診断され,診断確定時から酵素補充療法を開始している.現在は外来フォロー中で,症状は改善傾向となっている.【結語】本症例は,血液疾患を疑い骨髄検査を施行したが,骨髄穿刺直後の有核細胞数カウントで異常細胞を認めたことにより,代謝異常症の診断にいち早く結びついた症例である.今回,技師からの情報提供が,迅速かつ正確な診断に寄与することを再確認した.  連絡先 048-601-2200を疑っていなかった患者の疾患を発見し,早期治療を開始することができた.血球測定結果にかかわらず,塗抹標本の異常細胞を見逃すことのないよう目視・観察することの重要性を改めて認識した.DI-60で発見されたB-ALLの一症例連絡先:048-852-1111Atyp.Ly 2カウントを認めたため目視鏡検の対象となった.目視においてBlast様の細胞を8カウント認めたことからOther8%として結果送信.検査依頼医師に電話連絡を行い血液内科コンサルとなった.末梢血FCMでCD10-,CD19+,CD20-,CD22+,CD13+,CD33+,MPO-,TdT+の細胞集団を11.5%認め,急性白血病が疑われたため骨髄検査を施行した.骨髄検査はdry tapであったため,生検検体にてスタンプ標本を作製した.Blast93.2%(MPO染色陰性,エステラーゼ染色陰性)を認め,B-ALLの診断となった.【まとめ】今回DI-60でAtyp.Lyに分類された異常細胞を見逃すことなく技師の目視鏡検へ繋げたことで,血液疾患骨髄検査からゴーシェ病が疑われた一例血-3血-4骨髄検査からゴーシェ病が疑われた一例DI-60で発見されたB-ALLの一症例血液EntryNo. 38血液EntryNo. 53

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