埼臨技会誌 Vol.68
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後Aplio-i600(キャノンメディカルシステムズ株式会社)にてWall Motion Tracking(4腔,2腔,3腔)を行い,GLS%を算出した.健常成人のGLS絶対値は20%以上と報告されているため当院ではGLSのカットオフ値を20%とし,検討を行った.【結果】 条件に該当したデータ78件中GLS20%未満は42件となった.42件中,高血圧患者は30件,残り12件の正常血圧患者の病状や既往歴を確認すると糖尿病,高脂血症,喫煙など高血圧や心不全発症リスクが高い患者であった.【考察】 今回の検討では,EF%正常患者GLSの低下は高血圧患者や心不全発症リスクが高い患者の心機能を定量評価する指標の1つになりうることが考えられた.しかし対象件数が少ないため今後継続してデータ収集を行い,検討を進めていきたい.◎田中 晴香1)、帆苅 由真1)、相馬 悠1)、村椿 恵理子1)、石野 久美子1)◎田中 晴香1)、帆苅 由真1)、相馬 悠1)、村椿 恵理子1)、石野 久美子1)医療法人社団協友会 東川口病院1)医療法人社団協友会 東川口病院1)◎奥冨 莉花1)、釜津田 洋子1)、山本 啓二2)◎奥冨 莉花1)、釜津田 洋子1)、山本 啓二2)埼玉医科大学病院 中央検査部1)、埼玉医科大学病院 心臓内科2)埼玉医科大学病院 中央検査部1)、埼玉医科大学病院 心臓内科2)723.2 mm, 4.9 × 3.3 mmの腫瘤を認めた.左室後方心嚢内には, 傍胸骨左縁左室短軸像にて径28.0 × 11.0 mm, 大動脈壁に径3.1 mm × 2.3 mmの腫瘤を認めた.〈生後3ヵ月でのエコー所見〉心室中隔内(左室流出路側)と左室内中隔側の腫瘤は消失しており,後壁内部のエコー輝度は均一であった.左室側壁側ならびに右室の腫瘤には変化は見られなかった.左室後方心嚢内の腫瘤は傍胸骨左縁左室短軸像にて径18.0 × 6.6 mmと縮小しており,大動脈壁の腫瘤は消失していた.【まとめ】文献では,薬剤投与なしで半年から1年程度,薬剤投与ありでは更に早期に退縮することが報告されている. 本例は薬剤投与なしで生後3ヵ月と早い時期に,生後4日目で目立っていた腫瘤の退縮がみられた.特に左室流出路側の腫瘤が,流出路狭窄が生じることなく自然に消失したことは臨床的意義がある.今後も成長に伴い,さらに退縮していくことが期待されるため定期的な経過観察が望まれる. 高血圧患者へのGLSを用いた心機能評価の有用性出生早期に心臓内腫瘤の自然退縮がみられた結節性硬化症の一例【はじめに】 心筋障害は内膜側から出現することが多いと言われている.これは心内膜側の心筋酸素消費量が多いこと,心内膜は冠動脈から最も遠く虚血にさらされやすいことなどが原因としてあげられる.内膜面の心筋繊維は左室長軸方向に走っており,この性質から潜在的心筋障害に最も鋭敏に反応する指標がGlobal Longitudinal strain(GLS)である.GLSは縦方向のストレイン,左室16セグメント全体の平均を示した値であり,心機能定量化の指標として用いられている.GLSが有用な疾患としてHFpEF,高血圧,肥大型心筋症,抗がん剤による心毒性の早期評価,二次性心筋症,大動脈弁狭窄症などがあげられる.当院での心臓超音波検査は高血圧患者へのスクリーニング検査として用いられることも多く,今後高血圧患者への心機能評価の新しい指標として採用できるか検討を行ったため報告する.【方法】 2021年3月から6月までの心臓超音波検査実施患者(10代~90代)を対象としEF50%未満,弁膜疾患,E/e’>15(中隔側)および描出不良患者を省きデータを集めた.さらに抽出された患者を正常血圧,高血圧に分類し,その【はじめに】結節性硬化症(Tuberous Sclerosis Complex:以下TSC)は染色体優性遺伝性疾患であり,神経皮膚症候群に含まれる全身性疾患である.過誤腫を特徴とし,皮膚の種々の母斑以外に,脳,肺,心,腎,骨など全身の臓器に多様な症状が認められる.今回,出生直後(生後4日目)から経過を追えたTSCの一例を経験したので報告する.【症例】在胎週数38週6日,正常分娩にて出生.出生時体重3488 g. Apgar scoreは1分値8点, 5分値9点であった.母体のTSC,橋本病および糖尿病の精査目的に入院された.【検査所見】頭部MRI:上衣下結節. 頭部CT:石灰化病変あり. 心電図:HR 105/minと新生児にしては徐脈傾向. ホルター心電図:上室性期外収縮を約3%で認めた.【心エコー検査経過】〈生後4日でのエコー所見〉傍胸骨左縁左室長軸像にて,左室内には側壁側および中隔側にそれぞれ径6.1 × 5.7 mm, 4.1 × 4.0 mmの腫瘤を認めた.さらに心室中隔(左室流出路側)に腫瘤を認めたほか,後壁内部に周囲の心筋とエコー輝度の異なる部分を認めた.右室心尖部側, 中隔側そして自由壁側に,それぞれ径11.0 × 10.0 mm, 4.1 × 連絡先 048(295)1000(内線133)        連絡先:049-276-1805(内線2059)生-9生-10出生早期に心臓内腫瘤の自然退縮がみられた結節性硬化症の一例生理EntryNo. 32生理EntryNo. 52高血圧患者へのGLSを用いた心機能評価の有用性

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