埼臨技会誌 Vol.68
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~COVID-19感染後の感染性関節炎症例を含む~超音波検査が亜急性甲状腺炎の診断・経過観察に有用であった1例上尾中央第二病院 検査科 048-781-1101◎井上 晃代1)、野本 隆之1)、石原 綾子1)◎井上 晃代1)、野本 隆之1)、石原 綾子1)上尾中央医科グループ 上尾中央第二病院1)上尾中央医科グループ 上尾中央第二病院1)◎田沼 裕恵1)、石黒 千鶴1)、本多 恵理佳1)、松﨑 幸恵1)、関根 由加利1)、中田 正人1)、高木 賢治2)◎田沼 裕恵1)、石黒 千鶴1)、本多 恵理佳1)、松﨑 幸恵1)、関根 由加利1)、中田 正人1)、高木 賢治2)上尾中央医科グループ 医療法人社団協友会 彩の国東大宮メディカルセンター1)、上尾中央医科グループ 医上尾中央医科グループ 医療法人社団協友会 彩の国東大宮メディカルセンター1)、上尾中央医科グループ 医療法人社団協友会 療法人社団協友会 彩の国東大宮メディカルセンター 診療部 リウマチ・膠原病科2)彩の国東大宮メディカルセンター 診療部 リウマチ・膠原病科2)70【はじめに】亜急性甲状腺炎は,甲状腺濾胞の崩壊により甲状腺ホルモンが過剰放出される破壊性甲状腺炎とも呼ばれる疾患である.自然治癒するため,対処療法が中心となり,正常化まで3~5カ月を要する.今回我々は,亜急性甲状腺炎の診断・経過観察の中で,増悪・治療効果を判断する上で有用であった超音波検査画像を経験したので報告する.【症例】年齢46歳,女性.来院時体温36.3℃,頚部の違和感・自発痛および圧痛が出現したため当院を受診した.【来院時検査結果】CRP軽度高値,甲状腺ホルモンの上昇無し,TSH軽度低値.超音波検査にて,甲状腺腫大と疼痛部に一致した低エコー域を認めた.以上から亜急性甲状腺炎と診断され鎮痛剤を処方された.【経過観察約30病日目】自発痛および圧痛が強くなり疼痛部の移動を自覚.CRP軽度高値,甲状腺ホルモン高値,TSH低値,サイログロブリン高値となる.超音波検査にて,甲状腺腫大の著明化と疼痛部に一致した低エコー域の移動(クリーピング現象)および拡大を認め,甲状腺炎の増悪【はじめに】当院はリウマチ科の依頼で,関節エコーを実施している.関節炎の原因は様々で,エコーで関節滑膜の肥厚と血流シグナル,滑液貯留等を評価している.今回,関節痛で関節リウマチを疑われ紹介となった患者が自己抗体検査陰性により関節リウマチが否定され,関節エコー実施後に感染性関節炎の診断に至った3症例を呈示する.【症例1】50歳代,男性.他院にて前立腺生検後,前立腺炎で入院加療し,2週間後に多関節痛が出現.1か月後に当院に紹介受診となった.血液検査で自己抗体検査陰性であったが痛みが継続するため,関節エコーを実施し両膝関節に滑液貯留を認めた.【症例2】40歳代,女性.多関節痛にて鎮痛剤を内服するが症状軽減せずリウマチ性疾患を疑われ紹介受診となった.血液検査で血沈の亢進を認めたが自己抗体検査陰性であった.関節エコーを実施し両足と左膝関節の滑液貯留を認めた.問診にて子供の伝染性紅斑の罹患が判明したため,家庭内感染を疑い追加検査の結果,パルボウイルスB19抗体IgMが陽性であった.【症例3】50歳代,男性.COVID-19に罹患し当院にて入院加療後,PCRの陰性化により退院した.2週を示唆した.副腎皮質ステロイド剤(プレドニン)の処方を開始した.【経過観察約60病日目】自発痛は軽快.甲状腺ホルモンおよびTSHは基準値内,サイログロブリン高値持続となった.超音波検査では,甲状腺腫大の軽快と低エコー域の縮小が見られた.プレドニンは42日間かけて漸減していった.【経過観察約150病日目】自覚症状消失,甲状腺ホルモン,TSH,サイログロブリンは全て基準値内となった.【考察・結語】亜急性甲状腺炎の発症初期から治癒に至るまでを観察できた症例を経験した.超音波検査では,病変部の圧痛を直接確認できるsonographic tendernessを駆使することで診断に至り,経過観察中の腫大の程度や低エコー域の範囲から,増悪の有無や治癒の判定が可能であると思われた.間後に微熱とともに多関節痛が出現し,就業不能のためリウマチ科紹介となった.血液検査で血沈の亢進を認めたが自己抗体検査陰性であった.関節エコーを実施し両膝関節の軽度な滑膜肥厚と滑液貯留,足趾(MTP)関節の著明な滑膜肥厚と滑液貯留を認めたが肥厚した滑膜に血流シグナルを認めなかった.【考察】関節痛を主訴に関節リウマチを疑ったが血液検査で否定され,関節エコーを行い滑液貯留や滑膜肥厚像を認めた.症例1は細菌,症例2はパルボウイルスB19,症例3はCOVID-19による感染性関節炎が考えられた.特に症例3は感染し約2週間後,熱や呼吸症状が治まってから荷重関節に発症し,肥厚した滑膜には血流シグナルを伴わないという海外の症例報告と一致していた.【結語】関節エコーは関節リウマチの診断以外にも関節炎の状態を評価できる検査である.今回,関節エコーによる炎症評価と既往や家族歴の重要性を再認識した.更に,COVID-19による感染性関節炎を関節エコーで評価する,という貴重な症例を経験した.      連絡先:048(665)6114関節リウマチを疑い関節エコー実施後に感染性関節炎の診断に至った3症例生理EntryNo. 67生理EntryNo. 74関節リウマチを疑い関節エコー実施後に感染性関節炎の診断に至った3症例~COVID-19感染後の感染性関節炎症例を含む~生-5超音波検査が亜急性甲状腺炎の診断・経過観察に有用であった1例生-6

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