埼臨技会誌 Vol.68
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生 理術中モニタリングにより脳血流機能不全を回避できた1症例胎児性癌を主成分とする精巣原発混合型胚細胞腫瘍の一例◎林 達矢1)、今井 友美1)、平山 真人1)、油座 記子1)、横田 進1)◎林 達矢1)、今井 友美1)、平山 真人1)、油座 記子1)、横田 進1)地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立循環器・呼吸器病センター1)地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立循環器・呼吸器病センター1)◎石丸 直1)、九谷 恵子1)、武内 希巳江1)、石澤 圭介2)、森吉 美穂1)◎石丸 直1)、九谷 恵子1)、武内 希巳江1)、石澤 圭介2)、森吉 美穂1)埼玉医科大学病院 中央検査部1)、埼玉医科大学病院 病理診断部2)埼玉医科大学病院 中央検査部1)、埼玉医科大学病院 病理診断部2)69【はじめに】術中モニタリングは,術後の機能不全を防ぐ上で必要不可欠な検査となっている.当センターでは,脳神経外科・血管外科の領域において,体性感覚誘発電位(SEP),経頭蓋刺激運動誘発電位(Tc-MEP),脳表直接刺激運動誘発電位(D-MEP),聴性脳幹反応(ABR),視覚誘発電位(VEP)を行っている.今回,脳神経外科での術中モニタリングにて脳血流機能不全を回避できた1症例を報告する.【症例】患者は70歳男性,左頸動脈狭窄疑いにより当センターの脳神経外科を紹介された.頸動脈エコーを施行し左頸動脈狭窄率70%・右頸動脈狭窄率0%により手術適応となった.【モニタリング方法】上肢・下肢のTc-MEPと上肢のSEPを行った.使用機器は日本光電社製MEE-1232を使用.刺激強度はTc-MEPは500Ⅴ,SEPは30mAで刺激した.コントロール波形は頸動脈遮断直前のTc-MEP・SEPとした.SEP,Tc-MEP共に振幅がコントロール波形の振幅が70%以上の低下を認めると麻痺が残る可能性が高くなるという報告があるため,警告ポイントは50%以上の低下とした.【経過】術式は左頸動脈血栓内剥【はじめに】精巣の悪性腫瘍はセミノーマと非セミノーマに分類され、両者で治療方針が異なる。今回、胎児性癌を主成分とする混合型の非セミノーマを経験し、その超音波所見を病理組織所見と対比検討したので報告する。【症例】患者:20代男性。主訴:右陰嚢腫大。現病歴:サドルに会陰部をぶつけ、主訴に気づいた。痛みなし。他院にて血腫疑いでCT施行したが、新鮮出血はなく経過から腫瘍の可能性も考えられ当院に紹介された。生化学検査:LD(IFCC):357U/L、HCG:2419.0mIU/mL、AFP:1497.2ng/mL といずれも高値を示した。超音波検査:右精巣は腫大しほぼ全体を占める58×48×38mmの腫瘤性病変を認めた。境界不明瞭、内部は微細~5mm程度の嚢胞変化が多数混在し不均一であった。石灰化を疑う高エコーはみられず、血流信号は境界部に少量認めた。辺縁には内部性状が主病変とは異なる低エコー域が観察された。皮膚の肥厚等の変化はみられなかった。CT検査:右精巣は最大径55mmと腫大。内部はやや不均一な造影効果を示し、精巣腫瘍が疑われた。病理組織学的検査:中心部の高エコー領離術を施行.左の外頸動脈,総頸動脈,内頸動脈を順にクリップにて遮断した.遮断5分後にSEPが低下し始め,遮断7分後にTc-MEP・SEP共にコントロール波形の50%以上の低下を認められたため術者に報告した.本症例では使用する予定がなかったシャントチューブを挿入しクリップにて固定.しかし,波形は回復せずTc-MEPは消失し再度術者に報告した.クリップが内頚動脈を噛んでしまい,血流を補えていなかったため,クリップを掛け直した.Tc-MEP・SEP共に徐々に回復し,シャント挿入後30分にはコントロール値まで回復した.術後の麻痺もなく独歩にて退院した.【まとめ】頸動脈遮断後,シャントチューブ使用後の2度にわたり術中モニタリングが低下した症例を経験した.低下した際の警告ポイントを定め,術者に迅速に報告することで機能不全を回避できたと考えられる.今後も術者,麻酔科医とコミュニケーションを交わしより有用な術中モニタリングにしていきたい.連絡先:048-536-9900域は異型上皮細胞の乳頭状・腺管状増生を示し、背景に高度な出血・壊死を伴っていた。この部分の細胞はCD30陽性で胎児性癌であり、これが最も優勢な成分であった。これに卵黄嚢腫瘍(AFP陽性)、未熟奇形腫が混在していた。以上の成分に混在してsyncytiotrophoblast(βHCG陽性)が散在していた。また、GCNISを広範囲に認め、一部セミノーマ成分を認めた。【考察】非セミノーマには胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、奇形種などの組織型があり、これらは混在していることが多い。今回の症例は胎児性癌が大部分を占めていた。胎児性癌は、広汎に出血、壊死を伴うことが多いとされる。内部に血流信号がほとんど認められず虫食い様の嚢胞変化を伴う不均一な超音波所見は組織の壊死や出血を反映している像として矛盾しないと考えられた。腫瘤辺縁に認められた性状の異なる低エコー域は、成分が異なる組織型が認められた。今回経験した胎児性癌の超音波所見を、今後の精巣腫瘍の診断に生かしていきたい。連絡先:049-276-1549生理EntryNo. 13生理EntryNo. 61生-3生-4術中モニタリングにより脳血流機能不全を回避できた1症例胎児性癌を主成分とする精巣原発混合型胚細胞腫瘍の一例

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