埼臨技会誌 Vol.68
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◎酒井 陽菜1)、柳 弘子1)、大内 輝1)、佐藤 真吾1)、岩田 敏弘1)◎酒井 陽菜1)、柳 弘子1)、大内 輝1)、佐藤 真吾1)、岩田 敏弘1)地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立がんセンター1)地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立がんセンター1)◎内田 結菜1)、相田 裕人1)、塚原 晃1)◎内田 結菜1)、相田 裕人1)、塚原 晃1)戸田中央医科グループ 戸田中央総合病院1)戸田中央医科グループ 戸田中央総合病院1)68ABI検査を契機に発見された左鎖骨下動脈閉塞の一例当院の分子標的薬治療におけるQT延長について連絡先:048-722-1111 内線(4180)【背景】QT延長を起こす薬剤には、抗不整脈薬、中枢神経系用薬、抗菌薬、抗ヒスタミン薬等、様々なものが知られている。近年、分子標的薬によるQT延長の報告がされており、致命的となりうるtorsade de pointeの発症リスクが高くなるとされている。当院では分子標的薬を用いた治療が増えており、治療前後に心電図での心機能評価が必要になっている。今回、その現状を知るために調査した。【対象と方法】過去1年間(2020/07/01~2021/06/30)に、①依頼された心電図検査件数、②当院のQT延長の異常値(QTc≧480msec)症例について調査した。そのうちの2021/05/01~2021/06/21間のQTc延長症例27件について診療科、年齢、性別、治療歴などを調査した。(心電計FCP‐8800フクダ電子)【結果】①心電図総件数は8064件、QTc延長総件数は215件であった。②調査した27件(19例)の内訳は、男性10名、女性9名で、平均年齢は69歳であった。この内、分子標的薬を使用していた4例(10件)について更なる調査を行った。4例で投与していたのは、血液内科2例で三酸【はじめに】足首(足関節)・上腕動脈血圧比(以下ABI)は足関節部で測定した血圧を上腕の収縮期血圧で除した値であり、動脈の閉塞や狭窄の程度を示す指標となる。ABI0.91~1.40までが正常値とされており0.90以下の場合は末梢動脈疾患(以下PAD)が疑われる。ABIは主に下肢のPAD評価の指標であり、上肢に症状が見られない場合、ABI検査時の上腕血圧左右差や脈波波形に関して看過されがちである。そのため当院では上腕血圧左右差や明らかな異常脈波波形を認めた際に再検査を必須とし、備考コメントに再検済の記載をしている。今回、ABI検査時に上腕血圧左右差を認め、左鎖骨下動脈閉塞が発見された1症例を報告する。【症例】50歳代男性、高血圧の既往あり。1年前から下肢痛および下肢冷感出現。指先冷感はなし。足背動脈触知減弱。血液検査及び下肢動脈精査の為、ABI、下肢動脈超音波検査が依頼された。【血液検査】LDL-Cho:160mg/dl、HDL-Cho:41mg/dl、TG :242mg/dl、CRE:0.91mg/dL、Glu:140mg/dL化ヒ素と抗CD20抗体、乳腺外科1例で抗HER2抗体、婦人科1例で抗VEGF抗体であり、投与前後の心電図を確認した所、4例全てで投与後のQTcの延長を認めた。特に、継続してQTc延長を認めた三酸化ヒ素投与の症例では、治療前QTc457msecが、治療開始後1週間で494msecに延長した。一旦休薬し6日後453msecまで回復したため、再投薬が可能になった。その後、QTcの変化に沿って休薬と再投与を繰り返し、最終的にQTcの回復を待ってから他の薬剤への変更となった。【まとめ】患者が安全に分子標的薬治療を受けられる様に、投薬に添った心血管リスク因子の評価が求められている。今回調査した中ではQT延長の重症化を認めなかったが、投薬によるtorsade de pointeのリスクを理解した上で心電図検査を行い、異常値を迅速に臨床に報告していく必要があると考えられた。【下肢動脈超音波所見】左総腸骨動脈狭窄あり(最大血流速度5.3m/s)。その他有意狭窄なし。【ABI】ABI:右1.07、左0.84(CAVI:右9.6、左14.6)上腕血圧:右217/119、左177/118、左上腕左足首において波形異常あり。上腕血圧左右差を認め再検査実施後、備考コメントに記載し医師へ報告。上肢動脈精査の為、造影CTが追加で施行された。【胸腹部造影CT】左鎖骨下動脈閉塞あり。椎骨動脈が側副血行路となり、末梢側の血流は保たれている。【経過】上肢に症状はなく下肢症状も軽度な為、経過観察となった。【結語】今回、上肢に症状はなかったが、ABI検査を契機に左鎖骨下動脈閉塞が発見された症例を経験した。上腕血圧左右差と脈波波形を確認する事は、上肢PAD発見にも有用であると考えられる。今後、再検済の備考コメントだけでなく画像診断検査を勧めるコメント等を追加し、上肢PADの更なる早期発見につなげていきたい。 連絡先 048-442-1111 (2530)生-1生-2生理EntryNo. 80生理EntryNo. 75ABI検査を契機に発見された左鎖骨下動脈閉塞の一例当院の分子標的薬治療におけるQT延長について

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