埼臨技会誌 Vol.68
61/138

59アドバンスセミナー4血清・生理・病理・細胞テーマ「分野の壁をこえて~甲状腺疾患を紐解く~」2. 甲状腺検査における超音波検査のポイント座長:岡村 卓哉(獨協医科大学埼玉医療センター)講師:《生理》田名見 里恵(医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院)甲状腺疾患における超音波検査は、他のモダリティに比べ低侵襲で簡便でありながらその有用性は高く、甲状腺画像診断の第一選択となっている。びまん性病変の場合は腫大の程度、結節性病変の有無、血流状態による病態の把握、実質の性状評価が求められる。結節性病変では嚢胞性か充実性か、最大腫瘤径、悪性所見の有無により、穿刺吸引細胞診(FNAC)の必要度が決まるため、「甲状腺結節超音波診断基準」(日本超音波医学会用語・診断基準委員会)に基づいた評価が望ましい。また頸動脈エコーなど、他の検査時に偶然発見される甲状腺病変も多く、精査が必要とされるものを選別して報告することも求められる。リンパ球浸潤、濾胞構造の破壊、間質の線維化など病理学的変化を反映し、超音波像の典型例では内部エコーレベルの低下、不均質化・粗雑化、表面の凹凸による分葉化などが見られる。びまん性腫大として観察されることが多いが、病期によっては変性や破壊が進み甲状腺は萎縮像を呈する。びまん性疾患の診断では機能検査や自己抗体検査が重要な位置を占めているが、超音波検査では組織学的な変化を反映した所見を得られるため、甲状腺機能異常の鑑別診断において有用となることもある。腫瘍性病変の合併頻度は年齢とともに増加するため、経過観察時には特に悪性リンパ腫の高リスク疾患として低エコー域の出現・増大に注意したい。乳頭癌は組織学的分類として、95%の通常型と、それ以外の特殊型に分けられる。濾胞癌や髄様癌と比べ超音波検査での正診率が高いとされるため、乳頭癌で見られる典型的な超音波所見は十分理解しておく必要がある。通常型乳頭癌では形状不整、境界不明瞭・粗造、内部低エコーで不均質な像を呈することが多い。病変の位置によっては、気管や反回神経など周囲組織への浸潤評価も必要であり、転移による頸部リンパ節の腫大を伴う場合は病巣の広がりに注意を払う。超音波ガイド下FNACでは、診断に必要な細胞が安全で確実に採取できるよう、穿刺部位の適切な選択が求められる。生命予後は良好とされるが、急速増大する病変は悪性度の高い未分化転化の可能性も念頭に置く必要がある。当日の症例提示では典型例を見落とさないことを目標に、注視点やFNACでの採取部位選択ポイントなどお伝えしたい。10:15~11:45講演会場:第1会場A(401号室) 視聴会場:第1会場B(402号室)【はじめに】【橋本病】【甲状腺乳頭癌】

元のページ  ../index.html#61

このブックを見る