アドバンスセミナー4血清・生理・病理・細胞テーマ「分野の壁をこえて~甲状腺疾患を紐解く~」1. 甲状腺におけるホルモン動態について座長:岡村 卓哉(獨協医科大学埼玉医療センター)講師:《血清》山本 晃司(埼玉医科大学 保健医療学部)渡辺 剛(埼玉医科大学総合医療センター)橋本病は自己免疫により自身の甲状腺を免疫細胞が攻撃することで、慢性的に炎症が起こる疾患である。その原因は自身の甲状腺を異物として認識することで産生される「自己抗体」が関与することで知られる。また、橋本病の25~30%では甲状腺機能低下症へと移行する。橋本病の診断は血液検査、超音波検査などで行われ、悪性リンパ腫などの腫瘍を併発する場合には穿刺吸引細胞診検査で評価することもある。ここでは、血液検査による甲状腺機能検査について述べる。血液検査では、抗甲状腺抗体(TgAb, TPOAb)や甲状腺ホルモン(FT4, FT3)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)により評価する。甲状腺機能低下症では代謝が落ちることで血中のFT4,FT3が減少し、ネガティブフィードバックによりTSHが上昇する。その他の原因との鑑別には、抗甲状腺抗体(TgAb, TPOAb)の検出が重要で、病因検査として有用である。今回はBasedow病から橋本病に移行し、背景に心疾患がある症例を基に、血液検査による甲状腺ホルモン値の変動と治療評価や経過観察の際に注視すべく一般生化学検査項目等も交えて紹介する。58甲状腺乳頭がんは甲状腺癌の分類で最も頻度の高い癌(80~90%)であり、細胞学的に濾胞細胞が乳頭様になっていることに由来する。病状はゆっくり発育し、予後は比較的良好であるが、放置すると予後不良の未分化癌へ変異することがある。甲状腺乳頭がんの評価で頻度の高い血液検査はサイログロブリンが挙げられる。サイログロブリンは甲状腺濾胞血中に分泌されるサイロキシンの直前の物質であり、甲状腺乳頭がんでは腫瘍がサイログロブリンを産生する時に高値を示す。甲状腺バセドウ病、慢性甲状腺炎などでも高値を示すが、乳頭がんは甲状腺ホルモン値(TSH, FT3, FT4)が正常値であることが多い。血液検査のみで甲状腺乳頭がんの特定はやや困難である。むしろ、術前検査・術後経過観察などに血液検査は有用ではないだろうか。今回は症例も交えながら、他疾患との鑑別や術前・術後経過観察で有用であるだろう検査項目を紹介できればと思う。10:15~11:45講演会場:第1会場A(401号室) 視聴会場:第1会場B(402号室)「橋本病について」「甲状腺乳頭がんについて」~橋本病と甲状腺乳頭がん~
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