埼臨技会誌 Vol.68
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47抄 録 「医師の働き方改革に関する検討会」の調査により医師の長時間労働の実態が示され、病院勤務医の約40%で時間外労働時間が年間960時間(月80時間)を超え、1900時間から2000時間程度の医師が10%程度存在すると報告された。診療科別では、産婦人科、外科、救急科、臨床研修の医師が多く、年代別では20代から30代で全体の33.4%を占めている。医師の勤務環境の改善及び地域医療の確保の観点から、医師の時間外労働時間の上限規制(年間960時間)が2024年4月から施行される。医師の労働時間短縮を進めるためには、医師の業務について医師以外の医療専門職種が現行制度下で、「実施可能な業務」と「明確に示されていない業務」、「実施できない業務のうち、十分実施可能で法改正等を行えば実施可能となる業務」に分けてタスクシフト/シェアの検討が進められた。厚生労働省医政局による医師会、医師の専門学会、看護協会をはじめとする医療関係職種30団体からのタスクシフト/シェア可能と考える業務についてのヒアリングが行われた。提案された業務について「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」で審議され、「現行制度の下で実施可能な業務」「明確に示されていない業務」については、内容を整理した上で、通知等で明確化し、タスクシフト/シェアを推進する。「現行制度では実施できない業務」は、下記の3要件を満たす行為について省令や政令、法律を改正することで検討された。要件①:原則として各資格法の資格の定義とそれに付随する行為の範囲であること。要件②:その職種が担っていた従来業務の技術的基盤の上にある隣接業務であること。要件③:教育カリキュラムや卒後研修などによって安全性を担保できること。 検討会の結果を踏まえ法令改正が承認され、臨床検査技師には新たに「静脈路の確保」「検査のための採痰(吸引カニューレ)」「肛門機能検査」など10行為が認められた。教育カリキュラムの見直しの適応は2022年4月入学の学生、既卒者は日本臨床衛生検査技師会が実施する「タスクシフト/シェアに関する厚生労働大臣指定講習会」の受講が義務付けられた。 今回の法令改正の目的は、地域医療の確保を踏まえた上での医師の労働環境の改善であり、各医療機関の管理者を中心に、病院全体の取組みとしてタスクシフト/シェアの推進及び業務全体の見直しを行うこととなる。臨床検査技師もメディカルスタッフの一員として、病院全体の業務改革の一翼を担い、病院内の取組みに積極的に参画していただきたい。従来の検査部内で業務が完結するのではなく、我々の根幹である品質保証された検査データを迅速に提供することを担保した上で、専門性を生かした多職種連携医療にかかわり、検査部以外で臨床検査技師が活躍することにより、「新たな価値観の創出」に努めていただきたい。

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