411)OECD, OECD Health Data 2015, Nov 2015.2)厚生労働省「全国がん罹患数 2016年速報」3)https://www.n-nose.com/抄 録 がんは1981年から本邦の死因第1位であり、日本人の3人に1人は、がんが原因で死亡しています。一方で、近年は治療技術や薬剤が大きく進歩し、早期発見さえできれば、がんの治癒率は格段に向上します。それにもかかわらず、日本人のがん検診の受診率は、先進国の中では高いとは言えません。例えば、50~69歳の乳がん検診受診率は、米国80.8%、英国75.9%に対して日本は41.0%、20~69歳の子宮頸がん検診受診率は、米国84.5%、英国78.1%に対して日本は42.1%です1)。 現在、厚生労働省が推奨しているがん検診は、肺がん、子宮頸がん、乳がん、大腸がん、胃がんに対する五つのみで、これらは五大がん検査と呼ばれています。これらの検査は、受けることでがんによる死亡率を低下させることが科学的に証明されています。しかし、簡便に受けられるものとは言えず、一定の痛みを伴う検査もあります。また、それぞれの検査が1種類のがんにしか対応しておらず、全てを受けようとすれば相応の手間がかかります。さらに、たとえこれら全てを受けられたとしても、五大がんの患者数はがん患者全体の半数以下2)ですので、他のがんを発見することはできません。つまり、現状のがん検査は、受けるのに時間がかかる上に、心身の負担が大きく、見つけられるがんの種類も不充分であったため、なかなか重い腰を上げる気になれなかったのです。 「N-NOSE」は、それらの原因を克服した、全く新しい、気軽に受けていただけるがん検査です。開発者の広津が、線虫の鼻(nematode nose)から命名したこの検査は、大きさ 1 mmの線虫という生き物の鋭敏な嗅覚を活用したがん検査で、解析に必要なのは尿1滴です。簡便、安価、高精度、早期発見可能、全身網羅的、そして苦痛がないという特長があります3)。がんの早期発見のためには、自覚症状の有無にかかわらず、がんのリスクの高い人を見つけ出す“がん一次スクリーニング検査”が重要であると考えられていますが、残念ながら、これまで、それに相当する検査は存在していませんでした。N-NOSEの特長は、“がん一次スクリーニング検査”に望まれる要件全てを満たしています。N-NOSEが普及することで、がん検診の受診率向上に貢献し、がんの早期発見・早期治療へと繋がることが期待されます。 講演では、N-NOSEの1)開発秘話、2)特長と性能、3)“がん一次スクリーニング”に求められるもの、4)受検方法、5)将来展望、をご紹介する予定です。
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