埼臨技会誌 Vol.68
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細 胞病 理◎古卿 綾香1)、立澤 美咲1)、渡邉 俊宏1)、土井 尚1)◎古卿 綾香1)、立澤 美咲1)、渡邉 俊宏1)、土井 尚1)株式会社アムル 上尾中央臨床検査研究所1)株式会社アムル 上尾中央臨床検査研究所1)◎本木 美穂1)、和田 亜佳音1)、柴田 真里1)、渡部 有依1)、岡田 萌1)、蔵光 優理香1)、小林 高祥1)、小林 要1)◎本木 美穂1)、和田 亜佳音1)、柴田 真里1)、渡部 有依1)、岡田 萌1)、蔵光 優理香1)、小林 高祥1)、小林 要1)医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院 検査技術科1)医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院 検査技術科1)105【はじめに】病理検査室で取り扱うキシレンは1999年に公布されたPRTR法の第一種指定化学物質となっている.当施設ではキシレンの廃棄量が多く,年間約1トン以上の廃棄物が出ていた.そこで廃棄物を減少させるため有機溶剤再生装置を導入した.現在までに二種類の装置を利用し,廃棄量が効果的に削減できたので報告する.【調査方法】以下の方法の8か月を対象期間とし,月の平均廃棄量(L)を算出する.方法①装置A:純度の高いキシレンに自動的に再生される.方法②装置B:有機溶剤の成分を変えずにすべて再生される.比較対象として装置を導入していない期間の平均を算出した.【結果】方法①装置Aは廃棄量月平均87.5Lであった.方法②装置Bは廃棄量月平均45.0Lであった.比較対象の装置使用なしは廃棄量月平均157.5Lであった.【考察】有機溶剤再生装置は原理として分留の方法を用いている.分留とは2種以上の液体の混合物を沸点の差を利用し蒸留することである.キシレンの沸点は139℃で,アルコールの沸点は78℃である.有機溶剤再生装置は温度を徐々に上【はじめに】非小細胞肺癌患者の治療には分子標的薬が選択され,ドライバー遺伝子の異常を検出することが重要である.細胞診検体を用いたセルブロックは免疫組織学的検索だけでなく遺伝子変異解析にも用いることができる.今回当院では6例の胸水セルブロックによるがん遺伝子パネル検査を経験したので若干の知見を加え報告する.【対象】2019年9月から2021年5月までにがん遺伝子パネル検査を行った62例の内,胸水細胞診検体からセルブロックを作製した6症例.がん遺伝子パネル検査にはオンコマインDx Target Test マルチ CDxシステム(FFPE)検査(以下オンコマイン検査)を用いた.この6症例は全てPD-L1免疫染色を実施している.【セルブロック標本の作製方法】細胞診標本(パパニコロウ染色2枚,メイギムザ染色1枚,PAS反応1枚)を作製.残りの沈査をすべて回収し2,500rpmで5分間遠心し,10%中性緩衝ホルマリンを用いた重層法にて1日固定する.翌日に100%エタノールで脱水操作後,パラフィン包埋する.オンコマイン検査は切片厚5μmで10~15枚の未染色スラ胸水細胞診検体を用いたセルブロック作製が遺伝子変異解析に有用であった6症例キシレン廃棄量の効果的な削減についてげて沸騰させる.装置Aは純度の高いキシレンを得るために139℃より低い温度で蒸留された溶剤はすべて破棄される.そのため廃棄量が多くなると考えられる.一方,装置Bでは混合物から再び混合物として再生する為,78℃の段階からすべての有機溶剤を回収する.そのため回収したキシレンは高純度ではないが,廃液は装置Aより装置Bの方が減少すると考えられる.【まとめ】二種類の有機溶剤再生装置を利用し,廃棄量の削減を調査した.装置A,Bともに廃液の有機溶剤を再生することによって廃棄量が減少した.装置Bの方がより効果的に削減することができた.廃棄量の削減を目的とするならば,装置Bの方が効果的であった.装置Bは混合液を再び混合液として回収する構造であるため,純度の高いキシレンを回収したい場合は装置Aが適している.再生したキシレンの使用目的に応じた有機溶剤再生装置の選択が重要と考える.今後も廃棄量の削減に努めていきたい.イドを作製し,外部検査センターへ委託した.【結果】6症例全て量的,質的にも不適無くオンコマイン検査が可能であった.現在コンパニオン診断薬として承認されているEGFR,ALK,ROS-1,BRAFについては1例でEGFR遺伝子変異が陽性,5例が陰性であった.陰性症例5例の内4例はPD-L1免疫染色の結果がTPS1%または<1%であった.4例で分子標的薬の投与が開始された.2例はオンコマイン検査の解析結果が出る前に永眠された.【考察】標本作製の前処理として検体の保存方法,ホルマリン濃度,固定時間の管理等が核酸の品質に大きく影響するとされているが,当院で胸水細胞診検体から作製したセルブロックはがん遺伝子パネル検査に耐えうる品質が保たれていたと考える.また,組織検体の採取が困難な症例でもセルブロック検体は有用であると考えられた.今後もがんゲノム医療に寄与する,より確実な検体処理と迅速な標本作製に努めたい.連絡先:048-997-7988(直通)連絡先 048-773-1111(内線1331)病-1病-2胸水細胞診検体を用いたセルブロック作製が遺伝子変異解析にキシレン廃棄量の効果的な削減について有用であった6症例病理EntryNo. 57病理EntryNo. 68

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