埼臨技会誌 Vol.68
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◎福島 葉子1)、加藤 智美1)、戸澤 直登1)、鈴木 展行1)、菅野 恵士1)、細沼 佑介1)、扇田 智彦1)◎福島 葉子1)、加藤 智美1)、戸澤 直登1)、鈴木 展行1)、菅野 恵士1)、細沼 佑介1)、扇田 智彦1)埼玉医科大学 国際医療センター1)埼玉医科大学 国際医療センター1)◎鈴木 みち代1)、成川 千賀子1)、渡邉 俊宏1)、土井 尚1)◎鈴木 みち代1)、成川 千賀子1)、渡邉 俊宏1)、土井 尚1)株式会社アムル 上尾中央臨床検査研究所1)株式会社アムル 上尾中央臨床検査研究所1)104目的:胃癌の腹腔洗浄細胞診もしくは貯留腹水が陽性の場合,遠隔転移(M1)として扱われ,pStageⅣとなる.術中迅速細胞診においては限られた時間で的確な判定をしなければならないが,細胞量や異型の程度によっては,真の陰性あるいは陽性が疑陽性と判定される.細胞診断において疑陽性の領域を狭くすることは大切である.そこで我々はLiquid based cytology(以下LBC)法で細胞を収集し,疑陽性の減少につながる可能性を検討する.対象:胃癌の手術中に施行された約5カ月(2020.11~2021.4)の術中迅速細胞診52件について再検討を行った.材料および方法:(1)術中迅速細胞診時:引きガラス法で湿固定,乾燥標本作製し,迅速Pap染色,迅速ギムザ染色,迅速PAS反応を染色し,判定した.(2)翌日:ルーチンで染色しているプロトコールでPap染色,メイギムザ染色,PAS反応染色をそれぞれ行い,残検体でLBC(ロシュ社:Cell prep)も作製した.(3)上記(1)と(2)の標本合わ【はじめに】近年,口腔癌の早期発見の重要性が認知されつつあり,一般歯科医院での細胞診採取も行われるようになってきた.当施設でも,歯科医より細胞診提出の要望があり,一般歯科医院でも安価で簡便に細胞診標本作製が可能な方法を検討したので報告する.【対象と方法】滴下式コーティング固定液と95%アルコール固定液を比較検討した.歯間ブラシで頬粘膜を擦過,塗抹後,塗抹から固定までの時間を変え,乾燥変性の分布を評価した. 固定液の浸透方法は,滴下式コーティング固定液は3滴滴下後スライドガラス全面にひろげ,95%アルコール固定液はスライドガラス全体を固定液にいれた.染色はパパニコロウ染色を行った.【結果】滴下式コーティング固定液と95%アルコール固定液の違いはみとめなかった.塗抹から固定するまでの時間は10秒まで乾燥変性はみとめず,20秒以上から塗抹面の外側に乾燥変性をみとめた.【考察】滴下式コーティング固定液をスライドガラス全面に素早く広がるよう3滴滴下した.そのため95%アルコーせて判定を行い,相違がないか再検討を行った.結果:(1)術中迅速細胞診時の判定は,陰性35件,疑陽性8件,陽性9件であった.(2)再検討したところ陰性は35件から39件に,疑陽性は9件から4件に,陽性9件には変動はなかった.また,術中迅速細胞診の際に陰性と報告したが,陽性と追加報告した症例が1件あった.考察:標本作製によって細胞数に差が生じ,判定に影響がある.今回,LBC法で細胞収集し腫瘍細胞を確認することができた.そのため術中迅速細胞診時にも細胞収集する方法(オートスメアやLBC法など)で標本作製ができれば疑陽性の数を減少できると考える.福島 葉子 042-984-0609ル固定液と同等の速さで固定液が浸透できたと考えられる.乾燥状態においては歯間ブラシを用いて検体採取を行ったため,細胞と唾液成分の粘液も同時に塗抹され,細胞の保護に役立ったと考えられる.【まとめ】滴下式コーティング固定液は固定作用を持つアルコールと保湿成分(ポリエチレングリコール)を主成分としており,固定と同時に保湿効果を与えることが可能である.輸送にも適しており,一般歯科医院で細胞診採取を行った際は,細胞診検査の可能な検査機関への輸送が可能となる.仮に95%アルコールで固定した場合,その後,コーティング固定液での保護が必要となる.細胞診検査設備の整っていない一般歯科医院においては,塗抹直後に滴下式コーティング固定液を使用するほうが,安価で簡便に細胞診標本作製が行える.さらに,一般歯科医院で身近な歯間ブラシを採取器具として使用することで,一般歯科医院での細胞診検査導入のハードルがより低くなるものと考えられる.今後も一般歯科医院での細胞診検査導入に協力していきたい.            連絡先:048-997-7988(直通)胃癌の術中迅速細胞診の精度管理一般歯科医院からの検体提出を想定した簡便な処理方法の検討細-1細-2一般歯科医院からの検体提出を想定した簡便な処理方法の検討細胞EntryNo. 77細胞EntryNo. 82胃癌の術中迅速細胞診の精度管理

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