埼臨技会誌 Vol.68
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に24時間培養延長した集落をMALDI-TOF MSにより分析を行いA. defectivaと同定された.発育所見からNVSの可能性が推定されていたため同時に衛生現象を確認した結果,陽性となった.臨床症状と血液培養が陽性であることから本菌が原因による感染性心内膜炎と診断された.薬剤感受性試験は実施したが,発育不良のため判定不能となった.抗菌薬はCTRXとVCMを使用し,4日後に再度提出された血液培養2セットでは陰性化が確認された.抗菌薬は患者状態に合わせ変更しながら5週間継続し,経過良好となったため退院となった.【考察】糖尿病コントロールが不十分であったことから易感染状態で口腔内より血流へ本菌が侵入し,感染性心内膜炎に進展した可能性が推測される.グラム染色で連鎖球菌,培養で菌が発育不良であったことからNVSが考えられた.【まとめ】菌の同定にはMALDI-TOF MSでの測定が一助となった.感染性心内膜炎疑い患者の血液培養から発育不良の連鎖球菌が認められた場合,NVSの可能性を念頭に置くことが重要である.           連絡先049-228-3501質量分析器が同定に有用であったAbiotrophia defectivaの1例◎松村 敬依子1)、大塚 聖也1)、渡邉 裕樹1)、齋藤 裕子1)、江端 英祐1)、松尾 千賀子1)、室谷 孝志1)、◎松村 敬依子1)、大塚 聖也1)、渡邉 裕樹1)、齋藤 裕子1)、江端 英祐1)、松尾 千賀子1)、室谷 孝志1)、竹下 亨典1)竹下 亨典1)埼玉医科大学 総合医療センター1)埼玉医科大学 総合医療センター1)◎大塚 聖也1)、松村 敬依子1)、江端 英祐1)、渡邉 裕樹1)、齋藤 裕子1)、松尾 千賀子1)、室谷 孝志1)、◎大塚 聖也1)、松村 敬依子1)、江端 英祐1)、渡邉 裕樹1)、齋藤 裕子1)、松尾 千賀子1)、室谷 孝志1)、竹下 亨典1)竹下 亨典1)埼玉医科大学 総合医療センター1)埼玉医科大学 総合医療センター1)9824/min,血圧130/70mmHg,髄液初圧140mmH2O,項部硬直およびKernig徴候は明らかでなく頭部CTに明らかな頭蓋内出血はなかった.髄液検査は,細胞数743/μL,蛋白187mg/dL で増加傾向にあり,糖26mg/dLは著明に低下,β-Dグルカンは5.0pg/mL未満であった.髄液の培養検査が提出されたため,検体は遠心後,沈渣をBrain Heart Infusion Broth(以下BHIブロス)で増菌培養を行った.塗抹検査は陰性であった.48時間後のBHIブロスは,菌の発育を確認出来なかったが,真菌を目的としていたため1週間培養を延長した.その後,血中クリプトコッカス抗原検査が提出された.【はじめに】急性の経過により細菌性髄膜炎が疑われた患者より提出された髄液を1週間増菌培養することで検出しえたCryptococcus neoformansの1症例を経験したので報告する.【症例】57歳男性.慢性リンパ性白血病に対しイブルチニブで治療中であった.2021年6月10日の朝,体調変化なく平熱36℃であったが,13時頃,職場で意識朦朧となり当院に救急搬送された.救急搬送時の体温39.4℃,脈拍70bpm,呼吸【はじめに】Abiotrophia defectivaは主に口腔内に常在する栄養要求性連鎖球菌(Nutritionally Variant Streptococci : NVS)で感染性心内膜炎や敗血症の原因となりうる.今回, A. defectivaによる感染性心内膜炎を経験したので報告する.【症例】50歳代女性,腰痛の憎悪と発熱のため救急要請した.2ヶ月前に僧帽弁逸脱症の既往歴があり,1ヶ月前に急性腰痛症と診断されていた.糖尿病内服加療中だが腰痛の鎮痛剤内服のため経口血糖降下薬を2週間自己中断していた.重度の歯周病で歯科領域の衛生状態は良くなかった.WBC11,500/µL, CRP11.90mg/dLと上昇しており炎症所見を認めた.感染性心内膜炎が疑われたため超音波検査の実施と血液培養を3セット採取した.【結果】超音波検査にて疣贅は認められなかった.血液培養は翌日3セットからグラム陽性連鎖球菌が検出された.羊血液寒天培地とBTB乳糖加寒天培地で好気培養(炭酸ガス培養),ABHK寒天培地で嫌気培養を行った.48時間後,好気培養では未発育,嫌気培養では微小の集落が観察されたため臨床側には発育に時間を要する菌だと報告した.嫌気培養を更【結果】1週間延長培養のBHIブロスでわずかながら混濁を認めた.分離培養を行った結果,酵母様真菌のコロニーの発育が認められ,質量分析装置MALDI Biotyper (Bruker社) による検査でCryptococcus neoformansと同定された.また,血中クリプトコッカス抗原検査が陽性となりクリプトコッカス髄膜炎と診断された.【考察】今回の症例は,BHIブイヨンの増菌培養延長後に菌の発育が認められたことから菌量は微量であったと考えられた.質量分析の結果と抗原検査の結果は一致しており,髄液検体における培養の延長の必要性があることが示唆された.【結語】臨床症状から疑われる所見に合わせて培養条件を変更することは菌を検出する上で有用であると考えた.細菌性髄膜炎が疑われる場合は,真菌を目的菌として追加することの必要性があると再確認した症例であった.                連絡先:049-228-3501患者の髄液を1週間増菌培養することで検出しえたCryptococcus neoformansの1症例微-6微-7質量分析器が同定に有用であった Abiotrophia defectiva の1例微生物EntryNo. 55微生物EntryNo. 58患者の髄液を1週間増菌培養することで検出しえたCryptococcus neoformans の1症例

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