埼臨技会誌 Vol67
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微生物ので,念のためZiehl-Neelsen染色を行ったところ陽性に染まった.培養開始翌日にコロニー形成が認められたので増菌後,質量分析に提出しM. mageritenseと同定された.薬剤感受性試験はブロスミックRGMを用いて行った.【考察】 M. mageritenseは環境中に存在するが,稀に皮膚軟部組織感染の起炎菌となる.また非結核性抗酸菌の治療に通常用いられる抗結核薬やマクロライド系抗菌薬に対し耐性を示すため,正確な菌種同定が必要となる. PD特有の合併症であるPD腹膜炎やPDカテーテル出口部・皮下トンネル感染は M. mageritense を含むRapidly growing mycobacteria (RGM) が起炎菌となることも念頭に培養検査を進める必要があると考えられる.【結語】今回の症例はPD導入後,高齢のため手技習得に時間がかかっていた矢先のトンネル感染であった.高齢者が透析導入を検討する際は慎重にするべきであると感じた.った.抗菌薬の先行投与があった症例はⅠ期7例(6.2%),Ⅱ期12例(8.1%)であった.また,Ⅰ期では7例中3例(42.9%)がnon-ESBL,4例(57.1%)はESBLであった.Ⅱ期では12例中8例(66.7%)がnon-ESBL,4例(33.3%)はESBLであった.先行投与抗菌薬に対して薬剤感受性結果が感性だった例はⅠ期で7例中1例(14.3%),Ⅱ期で12例中5例(41.7%)であった.陽性化時間が20時間以内であったのはⅠ期7例17本中15本(88.2%),Ⅱ期12例24本中22本(91.7%)だった.【考察】Ⅰ期ではnon-ESBLに比べてESBLの割合が高かったが,Ⅱ期ではnon-ESBLの方が割合が高くなった.また,陽性化時間はⅡ期の方が20時間以内に発育する割合が高かった.Ⅱ期では抗菌薬吸着ビーズにより抗菌薬の影響が中和され抗菌薬の先行投与例でも菌が発育できたことが考えられた.【まとめ】抗菌薬吸着ビーズ含有ボトルの有効性が臨床検体で評価できたと考えられた.今後対象を増やして検討する.      連絡先:048-253-1551(内線1929)【はじめに】Mycobacterium mageritenseは,迅速発育抗酸菌の一種で,土壌や水中などの環境中に存在する菌で局所的な皮膚軟部組織感染症を引き起こすことが知られている.今回我々はM. mageritenseによる腹膜透析カテーテル感染の一例を経験したので報告する.【症例】81歳男性.IgA腎症に腎硬化症を併発し腎機能の悪化を認めたため,腎臓病教室にて透析導入の提案に対し,ご本人とご家族の希望から腹膜透析(PD)導入の方針となり腹膜透析カテーテル留置術が行われた.手術後20日目に腹部を圧迫すると疼痛が出現したためCAPD排液を培養したところM. mageritenseが同定された.抗酸菌染色陽性報告後,カテーテル出口部の膿培養からも同菌が検出されたため,抗酸菌による腹膜透析カテーテル感染と診断された.患者本人が血液透析への移行を強く希望されたためカテーテル抜去術を行い,その後抗菌薬治療を継続中である.【微生物学的検査】CAPD排液が血液培養ボトルに入れて提出され,培養開始から53時間後陽性となりグラム染色でまだらに染まる桿菌を認めた.染色性がはっきりしなかった【はじめに】敗血症の診断において血液培養は非常に重要である.我々は昨年本学会にて,抗菌薬吸着ビーズ含有ボトルについて模擬検体を用いて評価した.その中で特にEscherichia coliに関して抗菌薬吸着ビーズの有効性を報告した.今回入院時に実施した血液培養検体でE. coliが検出された症例について抗菌薬吸着ビーズ含有ボトルの性能を臨床的に評価したので報告する.【対象と方法】2016年5月から2018年4月までをⅠ期(抗菌薬吸着ビーズ非含有ボトル),2018年6月から2020年5月までをⅡ期(抗菌薬吸着ビーズ含有ボトル)とし,当院で入院時実施した血液培養検体Ⅰ期1371例,Ⅱ期1529例のうち,E.coliが検出された症例を対象とした.血液培養検査装置はBacT/ALERT 3D(ビオメリュー・ジャパン(株))を使用した.培養ボトルはⅠ期ではSA,SN,Ⅱ期ではFA plus,FN plusを使用した.また,①抗菌薬が先行投与されている割合,②E.coliの薬剤感受性結果,③陽性化時間について検討した.【結果】E. coliが検出されたのはⅠ期113例,Ⅱ期149例だ連絡先 048-648-5362 (内線2684)93抗菌薬先行投与における抗菌薬吸着ビーズ含有血液培養ボトルの臨床的検討◎志野 真錦1)、舘野 智美1)、神山 友香莉1)、中山 愛美1)、酒井 利育1)、武関 雄二1)、渡野 達朗1)◎志野 真錦1)、舘野 智美1)、神山 友香莉1)、中山 愛美1)、酒井 利育1)、武関 雄二1)、渡野 達朗1)自治医科大学附属さいたま医療センター1)自治医科大学附属さいたま医療センター1)◎泉田 桃1)、吉田 雅基1)、西窪 杏奈1)、荻野 毅史1)、関谷 晃一1)◎泉田 桃1)、吉田 雅基1)、西窪 杏奈1)、荻野 毅史1)、関谷 晃一1)埼玉県 済生会川口総合病院1)埼玉県 済生会川口総合病院1)Mycobacterium mageritenseによるMycobacterium mageritenseによる腹膜透析カテーテル感染の1症例微生物EntryNo. 11微生物EntryNo. 58腹膜透析カテーテル感染の1症例臨床的検討微-3(14:00~14:30)微-4(14:00~14:30)抗菌薬先行投与における抗菌薬吸着ビーズ含有血液培養ボトルの

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