埼臨技会誌 Vol67
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輸 血臨床化学当院における生化学検査自動登録導入の取り組み薬剤の影響によりClが測定不能となった2症例容範囲を設定.③警告値チェック:ヒストグラムから項目ごとに許容範囲を設定.また,登録は検体ごとの一括登録とし,検査依頼項目すべてが上記の基準を満たした場合に自動登録されるよう設定した.【結果】今回の設定で,生化学検査において約70%の検体が自動登録となり,登録業務の軽減につながった.そのため自動登録されなかった異常検体の精査に時間を割くことができるようになった.さらにTATも短縮され,自動登録開始前の1ヵ月と開始後の1ヵ月では測定終了時刻から登録までの時間が平均で1分30秒短縮された.【まとめ】自動登録導入により,検査品質の統一化は推進され,作業効率は向上した.今後は,より高い登録精度を目指し,今回の設定では考慮していない年齢変動や性差,入院・外来などについても検討を進め,定期的な登録基準の見直しを行いたい.考えられた.Cl測定においては臭素やヨウ素などのハロゲンイオンの影響を受けやすいとされており,薬剤の影響を強く疑った.臨床側にその旨を伝え,希釈測定したCl値を参考値として報告し,使用薬剤の確認をしたところ,症例1では臭素を含む市販薬を常用していたことがわかった.症例2では,多くの市販薬の服用は認められたものの,原因となり得る薬剤の推定には至らなかった.原因追及のためメーカーに精査を依頼した結果,臭素濃度は症例1で501.9mg/L,症例2で554.3mg/Lと高濃度であり,Cl測定に影響を及ぼしていると考えられた.【まとめ】生化学分析では,共存物質の影響による異常データに遭遇することがしばしばある.現在,鎮痛剤などの一般市販薬は容易に入手可能で,患者が服用することも多いが,その情報を直接得られる機会はほとんどない.分析装置,試薬の特性を十分理解した上で検査を行うとともに,薬剤が検査値に与える影響も考慮し,臨床側と患者情報を共有することが重要であると思われた.87【はじめに】生化学検査の品質は,日々の精度管理により高水準に保たれている.しかしながら,予期せぬエラーの発生を完全に除外することは困難であり,検査技師による検査結果の登録作業が検査品質を管理する要となる.当院では,パニック値と再検基準値は設定していたが,項目間チェックや前回値チェックには明確な基準がなく,登録業務は知識や経験に基づいて行われていた.そのため,新人とベテランでは登録基準に違いが生じ,検査品質や作業効率に大きな差が生まれていた.今回,検査品質の統一化および作業効率の向上を目的とし,登録基準を明確にするとともに自動登録を開始したので報告する.【方法】2019年11月の検査部門システム更新を機会に,登録基準を見直し,自動登録を開始した.見直した内容は,従来から設定している項目ごとのパニック値,基準値に加え,以下のチェック項目を設定した.①前回値チェック:項目ごとに差と比を用いて許容範囲を設定.②項目間チェック:関連のある項目について比を用いて許【はじめに】当院では電解質の測定にイオン選択電極法(ISE法)を使用している.しかし,ISE法は共存する化学物質により検査値に影響を及ぼすことが知られている.今回,Cl値が測定不能となり薬剤の影響を疑った症例を経験したので報告する.【症例1】 60歳代女性.左背部痛,嘔吐の症状を訴え来院.検査所見:TP 6.4g/dL,ALB 3.5g/dL,BUN 16mg/dL,CRE 0.51mg/dL,LDH 187U/L,AST 19U/L,ALT 13U/L,ALP 216U/L,Na 143mEq/L,K 4.7mEq/L,Cl測定不能,希釈測定:Cl 106 mEq/L(参考値)【症例2】40歳代女性.呼吸苦,倦怠感を訴え来院.検査所見:TP 6.0g/dL,ALB 3.4g/dL,BUN 13mg/dL,CRE 0.79mg/dL,LDH 303U/L,AST 31U/L,ALT 26U/L,GGT 57U/L, Na 143mEq/L,K 3.4mEq/L,Cl測定不能,血液ガス測定:Na 142 mEq/L,K 3.2mEq/L,Cl 128mEq/L, HCO3 17.8 mmol/L,外注検査:Na 148 mEq/L,Cl 111 mEq/L【結果・考察】2症例とも生化学自動分析装置(TBA-c16000:Canon)のエラーメッセージより共存物質が影響していると連絡先048-965-2221(内線:2260)連絡先0480-52-3611(内線1809)◎大塚 幸成1)、桑原 千津香1)、福田 安子、渋谷 賢一1)◎大塚 幸成1)、桑原 千津香1)、福田 安子、渋谷 賢一1)越谷市立病院1)越谷市立病院1)◎長江 結乃1)、佐藤 祥子1)、落合 仁美1)、下元 怜美1)、加藤 鉄平1)、菊池 航介1)、猪浦 一人1)◎長江 結乃1)、佐藤 祥子1)、落合 仁美1)、下元 怜美1)、加藤 鉄平1)、菊池 航介1)、猪浦 一人1)埼玉県済生会栗橋病院1)埼玉県済生会栗橋病院1)当院における生化学検査自動登録導入の取り組み薬剤の影響によりClが測定不能となった2症例EntryNo. 21EntryNo. 28臨床化学臨床化学化-2(14:30~15:00)化-3(14:30~15:00)

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