埼臨技会誌 Vol67
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【はじめに】骨髄癌腫症を来しやすい上皮性腫瘍は胃癌,肺癌,乳癌などが多いとされているが,日常の業務の中で遭遇する機会は多くない.今回,我々は末梢血のleuko-Erythroblastosis(白赤芽球症)を契機に骨髄検査が施行され骨髄癌腫症と診断された症例を経験したので報告する.【症例】82才男性.2019年10月中旬頃から筋肉痛のような体の痛みを訴えていた.10月下旬には食欲低下,労作時呼吸困難が増悪.11月3日に近医救急外来受診.肝胆道系酵素の上昇,腎機能障害の進行あり,当院に紹介となった.【入院時検査所見】AST104U/L,ALT32U/L,LDH5415U/L,ALP672U/L,CRP10.82mg/dL,BUN66mg/dL,クレアチニン2.35mg/dL,WBC8.0×109/L,RBC3.53×1012/L,Hb10.6g/dL,血小板75×109/L.末梢血液像にて赤芽球,骨髄球の出現がみられたため,精査目的に血液内科紹介となった.【経過】心不全,胃潰瘍,CKD,大腸癌,皮膚癌などの既往歴を持つ患者で,入院時の全身状態が悪く原因の検索が急がれた.血液検査の結果から入院翌日に施行された骨髄【はじめに】近年慢性蕁麻疹は,血液凝固反応を引き起こし,その過程で生じた活性化血液凝固因子により血管透過性が高まることが知られている.また,トロンビンの産生亢進に伴いDダイマー等のマーカーが上昇し,その病勢に相関して上下することも知られている.今回我々は,過去5年間の慢性蕁麻疹患者におけるDダイマー値の考察,及び2017年3月より保険適用となったヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤(オマリズマブ)治療を中心に,病勢及び治療によるDダイマー値の変動について解析したので報告する.     【対象・方法】過去5年間,慢性蕁麻疹と診断された患者38例を抽出し,健常者群のDダイマー値と比較検討を行った.また病勢及び治療によるDダイマー値の推移を解析した.【測定試薬・機器】測定試薬:ナノピアDダイマー(積水メディカル株式会社)測定機器:コアプレスタ2000及びCP3000(積水メディカル株式会社)【結果】慢性蕁麻疹患者群34件と健常者群42件のDダイ検査で,血液細胞に比べるとかなり大型で,上皮性結合を有する小~やや大型の異型細胞集塊が多数認められ,骨髄癌腫症の可能性が示唆された.その結果が病理にも伝えられ,生検検体でも同様の所見があるようであれば免疫染色で確認するということになった.免疫染色の結果はCEA(-),EMA(+),p63(-),TTF1(-)で皮膚癌の転移で矛盾しないと診断された.【結語】当院ではライトギムザ染色を行っており,染色時間は約30分である.検査後数時間で主治医に報告出来たことは有用であった.骨髄への上皮性腫瘍の浸潤を見る機会は多くないが,血液細胞と異なる大きさであること,集塊での出現,引き終わりに細胞集塊が存在する傾向があるなど,注意して鏡検することで見つけることが可能と思われた. また,皮膚原発の悪性腫瘍は頻度が少なく,今回の症例はさらに比較的稀なエクリン汗孔癌の骨髄浸潤であった. 連絡先:048-647-2111(2485)マー値のMann-Whitney Utest(U検定)を行った結果,有意差が認められた(p<0.01). 治療前・治療後のDダイマー測定値のある9症例(オマリズマブ治療7例,ヒスタミンH1受容体拮抗薬治療2例)について解析した結果,治療により軽快が見られる症例に関してはDダイマー値が低下し、再燃及び蕁麻疹の憎悪が見られる症例においてはDダイマー値が上昇していることが確認できた.当日スライドにて数例提示する.【考察・結語】今回の解析から,慢性蕁麻疹患者群のDダイマー値は,健常者群と比較し上昇することが確認できた.また症例数は少ないが,Dダイマー値の変動は蕁麻疹の病勢を反映し,治療効果及び,蕁麻疹の再燃等の検査に有用であると推測された.今後,治療効果や病勢確認のために院内皮膚科医と共にDダイマー値を活用することにより患者の治療等に役立てていきたい.連絡先:048-253-1551(内線1902)迅速な報告が出来た骨髄癌腫症の一症例慢性蕁麻疹におけるDダイマー値の解析82◎松本 実華1)、黒﨑 緑1)、関根 美紀1)、武関 雄二1)、渡野 達朗1)◎松本 実華1)、黒﨑 緑1)、関根 美紀1)、武関 雄二1)、渡野 達朗1)自治医科大学附属さいたま医療センター1)自治医科大学附属さいたま医療センター1)◎軍司 雅代1)、星 このみ1)、尾股 恵美1)、佐藤 友紀1)、山口 純也1)◎軍司 雅代1)、星 このみ1)、尾股 恵美1)、佐藤 友紀1)、山口 純也1)埼玉県 済生会川口総合病院1)埼玉県 済生会川口総合病院1)迅速な報告が出来た骨髄癌腫症の一症例慢性蕁麻疹におけるDダイマー値の解析血液EntryNo. 14血液EntryNo. 63血-9(11:30~12:00)血-10(11:30~12:00)

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