埼臨技会誌 Vol67
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血 液【はじめに】急性未分化白血病(以下AUL)は稀な急性白血病であり,リンパ球系・骨髄球系いずれもの特異的な細胞表現マーカーを発現せず,予後不良とされている.今回AULと診断された1例を経験したので報告する.【症例】40代女性,発熱・倦怠感を認め近医受診.CTにて肺炎像を認めず,発熱が2週間持続していた.その後前医に紹介受診され,採血よりWBC増加及び芽球著増,貧血,血小板減少で急性白血病を疑われるも前医満床の為,当センター血液内科に紹介受診された.【初診時データ】生化学:LDH592U/L,CRP8.51mg/dL,フェリチン183.6ng/mL,末梢血:WBC83.66×109/L,RBC1.14×1012/L,Hb3.7g/dL,Ht10.5%,MCV92.1fL,MCH32.5pg,MCHC35.2g/dL,Plt290×109/L,IPF3.1%,Ret0.1%,目視像:Blast99.4%,Lym0.4%,Seg0.2%.骨髄像:NCC11.70×104/μL,MgK0/μL,Blast97.4%,Band0.2%,Lym2.0%,多染性赤芽球0.4%,M/E比244,芽球:中~やや大型細胞,N/C比大,一部核小体や小空胞,核にくびれや切れ込み等の核形不整を認め,細胞質に顆粒【はじめに】骨髄異形成症候群(MDS)は臨床的に無効造血による血球減少と前白血病状態という特徴を併せ持つ疾患であり,免疫機構の異常も指摘されている.一方,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は赤血球膜上に対する自己抗体産生に起因し,直接Coombs試験の陽性が診断基準のひとつに挙げられるが1~10%の症例では陰性を示す.今回われわれはMDSに合併したCoombs陰性AIHAと考えられた症例を経験したので報告する.【症例】70歳代女性.健康診断で高度貧血を指摘され,精査加療目的で紹介入院.【検査所見】WBC:4340/µL,RBC:123万/µL,Hb:5.3g/dL,PLT:20.1万/µL,MCV:113.4FL,網状赤血球:7.1%,Bil:3.2mg/dL,D-Bil:1.1mg/dL,LD:269U/L,CRP:0.17 mg/dL,ハプトグロビン:5mg/dL,直接Coombs:陰性, 寒冷凝集反応:陰性,FCMによるPNH血球:陰性,ヘモグロビン尿:陰性.[骨髄像検査] 細胞密度:正形成骨髄,M/E比:0.23,芽球:0.4%,赤芽球系:異形成(+). 【経過】高度貧血のため赤血球輸血を行い原因精査を実施.CT・内視鏡検査では出血所見はなく貧血の原因となる病変骨髄異形成症候群に合併したCoombs陰性AIHA疑いの1例81急性未分化型白血病(Acute undifferentiated leukaemia:AUL)が疑われた1例は認められない.特殊染色:対象細胞芽球 Per染色(-),末梢血Per染色(-),末梢血Est染色(-)FCM所見:CD7+,CD33+,CD34+,CD117+,MPO-,HLA-DR-,TdT-,CD3-,cy CD3-,CD4-,CD5-,CD8-,CD10-,CD19-,CD20-,cyCD79a-,CD13-,CD14-,CD15-,CD41-,CD56-,CD64-,GP-A-白血病キメラスクリーニング:検出せず染色体:t(11;19)(q23.3;p13.1)を含む染色体異常を認めた.【経過】この症例は,W-G染色と特殊染色の所見ではALLやAML(FAB分類M0やM7)が疑われた.FCM所見では骨髄系マーカーはCD33,117以外が陰性,B細胞系マーカー陰性,T細胞系では一部陽性があったがCD3及びcy-CD3が陰性の為T細胞系とも判断できず,WHO分類上AULの診断となった.【結語】今回稀なAULの1例を経験した.この症例ではHLA-DR(-)であり,主なリンパ球系マーカーは陰性であった.また,t(11;19)(q23.3;p13.1)を検出し,KMT2Aが関与した転座の症例であった.     連絡先:048-648-5359を認めず.薬剤起因および寒冷暴露によるエピソード等ないことよりCoombs陰性AIHAを疑いプレドニゾロン投与開始.1週間後Bil正常化,Hb値は下げ止まるも改善せず経過不良のためMDS除外目的にて骨髄検査施行.赤芽球系に環状鉄芽球(13%)と巨赤芽球様変化・核融解像(16%)を併せ異形成は29%認めた.染色体検査は46,XX,del(20)(q11.2q13.3)[19]とクローン性を認め,単一血球系統に異形成を伴うMDS-SLDと診断された.現在はプレドニゾロンの継続投与にて貧血軽快,外来経過観察中である【考察】本例は赤血球結合IgG定量検査は行っておらず,Coombs陰性AIHAの確定には至っていない.しかしながら溶血関連検査所見および骨髄所見は赤芽球の著明な増加を認めMDSに伴う無効造血あるいは溶血性貧血の合併が疑われた.MDS患者では免疫機構の障害が指摘され,AIHA合併例は約3%と報告されている.更にCoombs陰性例は極めて稀である.本例を経験しAIHA症例は続発性を考慮しMDSまたはその他の造血器腫瘍も念頭におくことの重要性を改めて感じた.連絡先 048-433-3726◎野原 大1)、新井 里奈1)、高橋 彩香1)、澁川 絵美1)、古郡 めり子1)、松嵜 朋子1)、武関 雄二1)、渡野 達朗1)◎野原 大1)、新井 里奈1)、高橋 彩香1)、澁川 絵美1)、古郡 めり子1)、松嵜 朋子1)、武関 雄二1)、渡野 達朗1)自治医科大学附属さいたま医療センター1)自治医科大学附属さいたま医療センター1)◎山﨑 淳也1)、地田 信子1)、石井 里佳1)、杉浦 小春1)、本橋 侑子1)、圓田 和人1)、高山 好弘2)◎山﨑 淳也1)、地田 信子1)、石井 里佳1)、杉浦 小春1)、本橋 侑子1)、圓田 和人1)、高山 好弘2)戸田中央医科グループ 戸田中央臨床検査研究所1)、TMG本部 臨床検査部2)戸田中央医科グループ 戸田中央臨床検査研究所1)、TMG 本部 臨床検査部2)血液EntryNo. 5急性未分化型白血病(Acute undifferentiated leukaemia:AUL)血液EntryNo. 46骨髄異形成症候群に合併したCoombs陰性AIHA疑いの1例が疑われた1例血-7(11:30~12:00)血-8(11:30~12:00)

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