埼臨技会誌 Vol67
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【はじめに】インスリン治療中の糖尿病患者はインスリン皮下注射を繰り返し行うと,合併症として皮下組織にしこりができることがある.この皮下組織に生じる変化にはインスリンボール(インスリン由来のアミロイドが沈着した硬い腫瘤)と,インスリンリポハイパートロフィー(インスリンによる脂肪変性)がある.特にこのインスリンボールは,インスリン吸収障害をきたす事が報告されており,インスリン皮下注射の際,注意する必要がある.当センターでは超音波画像によるインスリンボール等の評価を行っており,その検討結果を報告する.【対象】2017年7月~2020年6月,長期インスリン皮下注射の合併症として皮下腫瘤が疑われた糖尿病患者45名.【方法】使用機器:GEヘルスケア・ジャパン社製LOGIQ 【初めに】当院は年間8,000台の救急車を受け入れる2次救急病院の施設である。その救急外来(以下、ER)で2名の臨床検査技師の常駐を2017年11月よりスタートし、医師や多職種と連携する。今回、2年半を振り返り、ERで活躍する臨床検査技師の在り方について、検査推移の振り返りと救急現場で経験した症例について報告する。【検査スキルの活用】ジェネラルスキルとして心電図、採血、検体採取、POCTなどの汎用業務に加え、プロフェッショナルスキルとして超音波検査・心臓、腹部、血管エコーについて依頼件数を調査した。また、医師の傍らでおこなう超音波検査では、即時に医師とディスカッションして治療方針、手術適応の判断につなげた3症例、1)急性大動脈解離、2)急性肺動脈塞栓症、3)心筋梗塞心室中隔穿孔合併症について報告する。【結果】件数推移:ERでの業務は、2018年度/2019年度の心電図が2506/2807(112%)、超音波検査は1509/1772(117%)であった。他ジェネラルスキル業務も増加していることが確認できた。超音波検査では、特に心E9.リニアプローブ9L-D(中心周波数:8.4MHz)被検者にインスリン皮下注射歴,しこりが触れないか等を問診し,その皮下組織を中心にBモードで観察した.さらに,Shear Wave Elastography(SWE)を用いてせん断波の伝搬速度(m/s)を計測し,比較検討した.【結果】≪Bモード所見とせん断波伝搬速度≫①異常所見なし:12症例、1.2±0.31m/s②高低混合エコー像:25症例、1.8±0.73m/s  明らかな腫瘤像は呈さず,高エコーと低エコーが混在したエコー像を示すもので,局所的な脂肪変性が示唆される.③紡錘状低エコー腫瘤:8症例、3.1±1.57m/s境界明瞭,紡錘状の低エコー腫瘤として観察されるもので,インスリンボールに相当する. 【考察】長期インスリン皮下注後の合併症をBモード画像で確認することができ,さらにSWEによりそれらの硬さの評価も可能であった.この結果よりインスリン注射頻度の高い部位の皮下脂肪は器質的変化をきたしていることが推察される.これらを早期に発見し,評価することで,事前に適切なインスリン注射部位を提示することが可能になると考えられ,臨床の場で有効な活用が期待できる.連絡先:048-648-5368(超音波検査室直通)臓及び血管系の件数の増加がみられ、ジェネラルスキルよりもプロフェッショナルスキルの依頼数の伸びが大きかった。また、提示した症例では、手術から回復まで検査を通してかかわりを持つことができて医療への貢献を実感した。【考察】件数の増加より、救急医療において臨床検査技師が活躍できると考えられる。採血や心電図も件数の増加より期待度はあるが、提示した症例から超音波検査では医師と対等な立場で診療に頼られることができると考えられた。これは、状況に応じた検査の進め方を提案することや、「常に交代する救急当番医や、経験の浅い研修医に対し、リアルタイムに超音波結果を説明し診断につなげられたスキルが重宝されたと考える。【まとめ】救急医療を中核とする当施設におけるERでの臨床検査技師の役割は、ジェネラルとプロフェッショナルスキルの両方のスキルを有し、患者状況に応じつつ診療へとつなげる業務を行うこと、かつ、超音波検査では医師よりも質の高い検査が提供できることが、多職種から期待されている業務であると、2年を振り返った。診療につなげるERでの臨床検査ERでの臨床検査技師の業務の在り方について振り返る長期インスリン皮下注後に発生したインスリンボール等の超音波検査による評価74◎関森 なつみ1)、大森 美侑1)、関口 由衣1)、早川 勇樹1)、小野口 晃1)、渡野 達朗1)、尾本 きよか1)◎関森 なつみ1)、大森 美侑1)、関口 由衣1)、早川 勇樹1)、小野口 晃1)、渡野 達朗1)、尾本 きよか1)自治医科大学附属さいたま医療センター1)自治医科大学附属さいたま医療センター1)◎吉田 貴典1)、安藤 恭代2)◎吉田 貴典1)、安藤 恭代2)埼玉石心会病院検査部1)、社会医療法人財団石心会 埼玉石心会病院2)埼玉石心会病院検査部1)、社会医療法人財団石心会 埼玉石心会病院2)長期インスリン皮下注射後に発生したインスリンボール等のERでの臨床検査技師の業務の在り方について振り返る超音波検査による評価診療につなげるERでの臨床検査生理EntryNo. 41生理EntryNo. 64生-17(10:30~11:00)生-18(10:30~11:00)

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