埼臨技会誌 Vol67
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生 理当院における大動脈弁狭窄症に対する右側臥位計測の検討心エコー所見が診断の契機となったレフレル心内膜炎の一例連絡先:04-2900-2700(内線3142)【はじめに】大動脈弁狭窄症(以下、AS)において、大動脈弁通過血流速度の計測はドプラビームを血流の方向と一致させる必要があり、多断面からの計測が推奨されている。しかし、限られた時間で検査をしなければならず、当院では心尖部アプローチのみで評価を行っていた。そこで今回、AS症例に対し右側臥位計測を行い、心尖部アプローチでの計測と比較して大動脈弁通過血流速度に違いがでるかを検討した。【対象と方法】2020年1月~2020年6月に当院にて心臓超音波検査をうけたAS症例97件を対象とした。心尖部アプローチと右側臥位で大動脈弁通過血流速度を計測し、ASの重症度評価を行った。【結果】AS症例97件のうち、右側臥位計測ができたのは59件、そのうち心尖部アプローチよりも大動脈弁通過血流速度の上昇がみられたのは25件、さらに手術となったのが1件であった。右側臥位計測が出来なかったのは38件であった。右【はじめに】好酸球増加症候群(Hypereosinophilic syndrome;HES)は全身臓器に好酸球浸潤を伴う疾患である.心病変の合併を認めた例はレフレル心内膜炎と呼ばれ,急速に進行する心不全の増悪により死に至る例も少なくない.今回,我々は心エコー所見がHES診断の契機となったレフレル心内膜炎の一例を経験したので文献的考察を含めて報告する.【症例】70代女性.4年前にくも膜下出血の既往あり.高血圧で近医投薬管理中.1週間ほど前から続く呼吸苦増悪のため救急要請を行い,当院に緊急搬送となった.【入院時現症】血液検査データはWBC:10.3×10^9/Lと軽度増加し,CRP:4.75mg/dlより炎症が示唆された.またHb:9.3g/dl,Cr:1.44mg/dlと貧血および腎機能の低下を認めた.CK:88U/L,CKMB:<4.0 U/Lは正常範囲で心筋逸脱酵素の上昇はなかった.胸部レントゲンにてCTR52%と軽度拡大し,著明な両側肺うっ血を認めた.心電図は心拍数90bpm,洞調律でⅡ,Ⅲ,aVF,V4-6にて軽度のST低下を認めた.【心エコー所見】入院翌日に心不全を疑い心エコー検査が施行された.左室は基部の中隔~下壁を除く広範側臥位計測が出来なかった理由としては、体位変換困難・技師の経験不足による描出不良があげられる。【考察】今回、右側臥位計測が行えたAS症例の42%で心尖部アプローチ計測よりも大動脈弁通過血流速度が上昇した。また、右側臥位計測により大動脈弁通過血流速度が亢進し、手術となった症例も経験した。これより、ASにおける大動脈弁通過血流速度の計測は、心尖部アプローチのみならず右側臥位でも行い、重症度が過小評価とならないよう多断面から評価する必要がある。しかし、右側臥位の描出に時間がかかってしまったり、描出不良な症例もあったため、技師の技術向上が今後の課題である。【結語】ASの重症度評価においては、検査時間にとらわれず、多断面からの評価をすることが重要である。今回の症例をふまえ、今後当院では中等度ASに対しては、右側臥位計測を必須とすることとした。囲の心内膜面に付着する心筋性状とは異なる淡く柔らかい層を認め,本来の心筋との二重構造が観察された.また異常構造物は心周期に合わせて変形していた.左室の収縮は良好に保たれていたが,左室流入血流速度波形は拘束型を呈していた.弁装置に明らかな変化はなかったが軽度僧帽弁逆流を認めた.【経過】心エコー所見はレフレル心内膜炎に近似し,血液検査による白血球分画が追加された.その結果,好酸球の増加(1000/μl,15%)を認めHESに伴うレフレル心内膜炎が強く疑われ治療介入が行われた.【考察および結語】HESは末梢血中の好酸球増加(1500/μl以上)が6ヶ月以上持続し,心臓,神経,皮膚や肺などに臓器障害を認め,アレルギーなどの好酸球増加の原因疾患が除外された場合に診断される.一方で心病変を認めるレフレル心内膜炎は重篤な経過をたどる例も多く,今回の症例のように確定診断を待たずに治療介入できることは救命につながる.心エコー所見からレフレル心内膜炎を疑った場合には積極的に好酸球数を確認し,診断の一助となることが大切である.連絡先 048-965-1111(内線3222)71◎瀧澤 美佳1)、大野 勇人1)、古川 絵理1)、仲座 春菜1)、櫻井 友加里1)、佐竹 夏美1)◎瀧澤 美佳1)、大野 勇人1)、古川 絵理1)、仲座 春菜1)、櫻井 友加里1)、佐竹 夏美1)石心会 さやま総合クリニック1)石心会 さやま総合クリニック1)◎黒田 智子1)、戸出 浩之1)、木村 紀子1)、内山 健二1)、中島 あつ子1)、小林 さゆき1)、春木 宏介1)◎黒田 智子1)、戸出 浩之1)、木村 紀子1)、内山 健二1)、中島 あつ子1)、小林 さゆき1)、春木 宏介1)獨協医科大学埼玉医療センター1)獨協医科大学埼玉医療センター1)当院における大動脈弁狭窄症に対する右側臥位計測の検討心エコー所見が診断の契機となったレフレル心内膜炎の一例生理EntryNo. 36生理EntryNo. 31生-11(10:30~11:00)生-12(10:30~11:00)

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